歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

岩澤毅 低歯科技工料の何故?-法律と構造問題-

2006年09月18日 | 日本歯科技工学会雑誌
      日本歯科技工学会第28回学術大会
      大 会 長 二 川 浩 樹 (広島大学 歯学部歯学科 教授)
      準備委員長 藤 田 一 郎 ((社)広島県歯科技工士会 会長)
       
日本歯科技工学会第28回学術大会は下記の要領で開催いたします.会員各位の発表と参加をお願い申し上げます.
       
1.会 期 平成18年 9月17日(日)
9月18日(月・祝) 10:00 ~ 18:00
9:00 ~ 16:00
   
2.会 場 広島国際会議場
  〒730-0811 広島県広島市中区中島町1番5号(平和記念公園内)
Tel 082-242-7777 Fax 082-242-8010 会場までの地図はこちらをご覧下さい
   
3.内 容 大会テーマ:歯科医療の近未来像 -歯科技工の役割-

事前抄録

2F-1000

低歯科技工料金脱却への科学的論証 
第一報 低歯科技工料の何故?-法律と構造問題-

Scientific proof to low cost getting rid of dental technology charges.
The first report. Why of low dental technology charges? - A law and the issue of structure-

○岩澤毅*,加藤雅司,中込敏男,大畠一成,大岡博英,牧野新
Iwasawa T, Kato M, Nkagomi T, Oohata K, Oooka H, Makino S

秋田県技* 東京都技 
Akita D.T.A* Tokyo D.T.A

《目的》

歯科技工料金が30年以上前と比較し現在の方が安価になっている現状は何故起きているのであろう?これを単なる過当競争と捉えたり,保険制度の問題と捉えて来たが,その認識は真実と言えるのであろうか?歯科医療が真に国民の歯科保健に貢献するために,技術・器材の進歩が進む中,ハンドメイドである歯科技工物の技術評価が30年以上前と比べて更に安くなっている正当性は説明出来ない.私達は法律論と経済構造の観点からこの問題に正面から取り組み社会からも承認される科学的論証を試みた.

《考察》

保険と自費と言う分類が私達歯科技工士には耳慣れた言葉として存在する.『保険の仕事だから安く,自費だから保険より高く取れる』このような日常の会話に潜む我々の思い込みは,健康保険制度にあたかも歯科技工士自身が組み込まれているとの認識の存在をしめすものである.昭和63年に出された大臣告示通則5のいわゆる「7:3」を分配拘束論として,保険点数の中で歯科技工士がおおむね7割の取り分があるという考え方がいまだに歯科技工業界では「定説」となっている感がある.運動論の経緯から我々に7割の権利があると言う恣意的解釈することにこれまで技工業界では大きな声で異を唱えることもなく来た.しかし健康保険法では明確に支払先の規定を同法76条「保険医療機関または保険薬局」と明記されている.一方歯科技工士法は補綴物に保険と自費という分類を一切していない.この法的な事実からも歯科技工所は歴史的制度的にも健康保険制度に存在せず,歯科技工物は保険も自費も区別無く自由経済として法的には区分される根拠がないことを知らねばならない.一方歯科技工物流通の経済力学から末端価格が保険制度により,あたかも決められているかの誤解を前提として歯科技工料が低相場を形成する実態があった.この前提こそ打破しなければならない我々の呪縛である.

《結論》

実はこの歯科技工物の製造原価から適正な売価設定できないからくりは経済学で既に論証されているエージェンシー問題に起因する.補綴物に係わる情報を歯科医師が窓口として一切を知る立場にあり,患者は素人として知るよしもない.実はこの情報格差が悪くても安いものを選択するアドバースセレクションを起こす.国民の信頼を歯科医療が得るためにも,歯科技工士は法律の正しい確認とエージェンシー問題から新たな対策が見えてくる.

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