歯科技工管理学研究

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歯科技工士・岩澤 毅

総括/歯科技工士資格試験における技術評価等に関する研究

2003年03月31日 | 基本・参考
文献番号 200301061A
研究課題 歯科技工士資格試験における技術評価等に関する研究
研究年度 平成15(2003)年度
報告書区分 総括
主任研究者(所属機関) 末瀬一彦 大阪歯科大学歯科技工士専門学校校長
分担研究者(所属機関) 西田紘一 日本歯科大学歯学部,佐藤温重 明倫短期大学,田上順次 東京医科歯科大学大学院,鳥山佳則 茨城県保健福祉部
研究区分 厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 医療技術評価総合研究
開始年度 平成15(2003)年度
終了予定年度
研究費 4,000,000円

概要版 研究目的:
歯科技工士資格試験は、厚生労働大臣の委託によって歯科技工士養成施設の所在地の都道府県知事が毎年1回実施しているのが現状であり、平成13年度厚生労働科学研究「今後の歯科技工士の養成方策等に関する総合的研究」で行った調査によれば試験実施時期、受験料、出題数、出題形式などが異なり、さらには実地試験における判定基準の統一的見解がないのが実態である。日本全国いかなる場所、いかなる時においても国民に対して良質な歯科医療サービスを安定的かつ効率的に提供するためには歯科技工士資格試験の全国統一化は必須で、その実施方式が適切なものでなければならない。特に歯科技工士資格試験における実技試験は重要な技能評価法であり、他の医療関係職種における試験制度の改善などを鑑みた場合、情報公開に対する妥当性も考慮して、国家資格の試験としてふさわしい客観的評価基準が担保されたものでなければならない。さらに歯科技工士における実技試験を行うにあたっての具備条件として、歯科技工士として具備すべき固有の知識および技能としての「妥当性」、評価者間で評価基準の適用が異ならず評価の再現性、一致度が高い「信頼性」、試験内容に不公平さが生じない「公平性」、多くの受験生の作品が迅速に評価できる「効率性」、比較的大幅な設備費用などを導入しなくても評価の効果が大きい「経済性」などが挙げられる。

そこで本研究においては、歯科技工士資格試験における実技試験の技術評価基準の確立をめざして、現在実施されている資格試験出題内容を基盤にして策定した試験用モデルを用いて模擬的資格試験を実施し、その結果について所属施設の異なる評価者群によって採点評価を行い、異なる評価法の相関性や評価者群間ならびに評価者内の比較検討、試験成績と学内成績との関係、合格基準の設定と不合格率などについて統計学的に分析を行った。さらに、模擬的資格試験の受験者および評価者に対して、試験時間あるいは評価時間、試験内容、試験用模型についてアンケート調査を行った。

研究方法:
現在実施されている歯科技工士資格試験の出題内容は総義歯排列(歯肉形成含めて)、歯型彫刻および任意問題(支台築造、ブリッジの支台装置、架工歯の蝋型採得、鋳造鉤の蝋型採得、線鉤の屈曲、部分床義歯大連結子の蝋型採得のなかから出題)によって行われている。本研究に用いた模擬的試験用の模型は、これらの出題内容を基盤にして検討し、全国統一試験が実施された場合の実施時間を十分考慮し、さらに、試験のための準備が教員や受験生にとって負担過重にならないことを配慮した。また、平成14年度厚生労働科学研究「今後の歯科技工士養成方策等に関する総合的研究」において資格試験用模型の妥当性について歯科医師会、歯科技工士会ならびに歯科技工士養成施設に対して行ったアンケート調査においても概ね賛同を得た。すなわち本研究で用いた試験用模型の内容および実施時間は表1に示すように部分床義歯の人工歯排列および歯肉形成(90分)、全部鋳造冠蝋形成、鋳造鉤蝋形成ならびに線鉤屈曲(120分)の4課題で、作業模型を簡易型咬合器に装着した状態(図1)で受験生に配布し、出題は図2に示す歯科技工指示書に基づいて試験を実施した。本研究を実施するにあたって模擬的資格試験の協力校は、全国歯科技工士教育協議会加盟の東京医科歯科大学歯学部附属歯科技工士学校(20名)、日本歯科大学附属歯科専門学校歯科技工士学科(40名)、明倫短期大学歯科技工士学科(20名)および大阪歯科大学歯科技工士専門学校(40名)の4校で、歯科技工士学科(本科)2年生および歯科技工士専攻科(実習科)1年の学生合計120名である。任意に抽出された学生について平素の学内成績(A,B,Cランク表示)を付記し、性別、年齢を含めて受験者リストを作成した。模擬的資格試験はほぼ同一時期にそれぞれの学校において実施し、試験終了後直ちに大阪(大阪歯科大学歯科技工士専門学校)、ついで東京(日本歯科大学附属歯科専門学校)にすべての模型を集配し、評価者による採点評価を行った。採点評価者は所属の異なる4群、すなわち大学教員(補綴系教授・助教授・講師)、歯科技工士専門学校教員(校長・教務主任)、臨床歯科医師(開業歯科医師)および臨床歯科技工士(開設歯科技工士)の28名が行った(表2)。評価は概略的評価および細分化評価の順で2回行い、評価に要した時間を記載した。概略的評価はそれぞれの4課題について0(25点),1(50点),2(75点),3(100点)の4段階的評価とし、0:未完成、1:完成度が低い、2:普通、3:完成度が高いによって採点評価した(図3)。さらに、6名の評価者においては日を異にする2回の概略的評価を行った。細分化評価にあたってはそれぞれの4課題について5つの評価項目を設定し(図4)、それぞれの評価項目について採点前に着眼点を指示し(表3)、1課題5評価項目について先と同様の4段階的評価を行った。本研究で行った模擬的資格試験の採点評価の妥当性を検討するために以下の項目について分析を試みた。① 概略的評価総合計値の正規性② 概略的評価と細分化評価の相関③ 概略的評価と細分化評価の評価値における評価者群間の比較④ 概略的評価と細分化評価の構造解析⑤ 概略的評価における評価者個人内の分散度⑥ 概略的評価と細分化評価の所要時間の比較⑦ 概略的評価における総合計評価値と学内成績の比較⑧ 概略的評価における評価値分布と合格率さらに、今回実施した試験について、評価者および受験者に対して評価・採点時間または試験時間、試験問題の内容、試験用模型についてそれぞれアンケート調査を行った。(倫理面への配慮)本研究における倫理面での問題は少ないと考えるが、受験者および評価者に対しては研究の主旨および目的の説明を十分行い、プライバシーの保護には十分配慮した。また、試行のための「資格試験の実施および評価」についてその目的を十分理解させ、決して強制的ではなく、参加しなくても不利益がないことを十分説明し、承諾が得られたものに対してのみ実施した。

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