歯科技工管理学研究

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歯科技工士・岩澤 毅

岩澤毅 消費税は「預り金」「預り金的」か?

2007年06月02日 | ごまめ・Dental Today
ごまめhttp://www.biwa.ne.jp/~yusei-e/
37号千秋楽号(2007年5月発行)

消費税は「預り金」「預り金的」か?

 はじめに
消費税の性格に付き、「預り金」或いは「預り金的」との言説があるが、その当否を探った。

 国税庁による宣伝資料等
「マナーだよ/全員納税。」
(映像省略)

オレらが払った、消費税!
マナーだよ
全員納税。
滞納しない、正しい納税
(映像内の活字抄)



http://www.nta.go.jp/category/press/press/66.htm
平成11年11月19日
国  税  庁
 
消費税滞納の防止策に係る会計検査院の意見表示と国税庁の対応
 
1 会計検査院の意見表示の概要
   (近年、消費税の新規発生滞納額が著しく増加しているのは、)9年4月からの税率引上げや景気低迷の影響により、事業者において、事業経営の悪化などにより資金繰りに問題が生じ、消費税相当分の資金を事業の運転資金に回すなどしていたことが主な原因と認められるが、消費税の滞納をできる限り防止するため現在当局が執っている滞納の防止策について、なお、次のような処置を講ずる要があると認められる。

  (ア)  消費税は消費者からの預り金的な性格を有する税であるという趣旨の認識が事業者に十分浸透するまでに至っていないので、当局による広報活動を更に徹底するなどして、事業者に期限内納付のより一層の周知徹底を図ること


[018/049]第156国会 - 参議院 - 財政金融委員会 – 議事録4号 平成15年03月25日

○池田幹幸君 どこかに消えちゃったんじゃないかという益税の問題の解消だと言われました。これは、そういう考え方があると大変なんですよ。
 これはひとつ今日の資料の三、四を見ていただきたいんですがね。これは東京国税局と税務署が、これは二〇〇〇年ですね、九九年から二〇〇〇年三月にかけて電車の中のつり革広告でこれやったやつなんです。これを見ますと、「私らさあ、給料から源泉で所得税ひかれて、ちゃんと消費税も払っているのにそれを預かる人のなかにきちんと税務署に納めない人がいるなんて、ぜったい許せないじゃん。」と、こう書いてあるんですが、これ、「滞納しない、正しい納税。」とあるんですけれどもね。
 正に今、小林さんおっしゃったように、滞納よりもね、脱税しているんじゃないか、消費税取りながら納めていないんじゃないか、そういうふうに消費者に思わせる効果抜群ですよね。業者に対して滞納しないで払ってくださいという広告ですよと言いながら、実際はそうじゃないんじゃないですか。
 まず伺いたいんですが、消費税「預かる人」ってあるんですが、これは消費税は預かり税ですか。いや、それはいいですよ、そんなもの。事務局、いいです。大臣、これはもう正に政治姿勢の問題です。さっきおっしゃった。これは預かり税じゃないでしょう。

○副大臣(小林興起君) 素人的にいいますと、預り金的な性格ということでそういうことになるんでしょうけれども、確かにこれ見ますと、ちょっと余りいい広告ではないなという気がいたします。これもう、今出ているんじゃなくて、もうやめて、やめちゃったんでしょう、やっぱり。やっぱりそうですね、これはちょっとねということになるじゃないですか。だから、そういういろいろな誤解も解いて国民の気持ちを一つにしていくために、今回はこれですっきりある程度していく部分もあると。
 ただ、重ねて申し上げますけれども、何か益税を良くないから解消するためにこういう制度を設けた、そういうことじゃないですよ。結果として益税があっても解消されるだろうというだけでありまして、これは結果論でありまして、目的はあくまでも皆さんにただ公平に払っていただくという理念でやっているだけでございますので、それは御承知おきいただきたいと思います。

○政府参考人(大武健一郎君) 正に三十条七項に明確に規定しているということでありますが、諸外国、EU等でも、あくまでもそうした前段階で課された税額を言わば保存する、あるいはその帳簿、あるいはEUの場合にはインボイスという形でございますけれども、そうした仕入れ税額を証明する書類を残して初めて言わば税額控除ができるということであります。いわゆる先生が言われました付加価値そのものを課税対象としているという構成ではありませんで、売上げに課税し、ただし、その売上げから既に掛かった税金は累積を排除するために差っ引くという仕組みでできているということであります。

内閣府 情報公開・個人情報保護審査会
答申日:平成15年9月17日 (平成15年度(行情)答申第283号)
事件名:国税庁が「消費税は預り金的性格を有する税」との見解の確立に至った検討過程に関する文書の不開示決定(不存在)に関する件
答申書 
http://www8.cao.go.jp/jyouhou/tousin/016-h15/283.pdf#search=%22%E6%B6%88%E8%B2%BB%E7%A8%8E%E3%80%80%E9%A0%90%E3%82%8A%E9%87%91%22

中間まとめ
「預り金」「預り金的」⇒一般的な表現
国税庁が発出した基本通達おいて、消費税を預り金的性格を有する税と記述したものはみられない

(映像省略)
全国商工団体新聞 2006年9月4日付け一面
http://www.zenshoren.or.jp/news/newstop_L.jpg

まとめ
日本型消費税は、その制度設計において「事業者」にとって「預り金」「預り金的」な性格を有するとするには、制度面の緻密さが不足していると考える。

参照WEBサイト
国税庁HP http://www.nta.go.jp/index.htm
内閣府HP http://www.cao.go.jp/
国会議事録検索システム http://kokkai.ndl.go.jp/
全国商工団体連合会 http://www.zenshoren.or.jp/
(上記WEBサイトアドレスは、2006.09.05に取得した。)
2006.09.05記

ごまめ掲載ここまで

(映像省略)
http://www.zenshoren.or.jp/

《今週号=12月18日付の紙面紹介》
1面 湖東京至(関東学院大学教授)さん、伊藤真理子(神奈川・横浜南部民商青年部)さんの対談 「消費税は預り金」はやっぱりウソだった



http://www.zenshoren.or.jp/zeikin/syouhi/061218/061218.htm

税務署の宣伝「消費税は預り金」はやっぱりウソだった
湖東京至(関東学院大学教授)さん、伊藤真理子(神奈川・横浜南部民商青年部)さんの対談
 今、税務署は「消費税は預り金だからなんとしても払いなさい」と、預り金論を前面に押し出し、消費税優先の納税を納税者に迫り、滞納処分を強めています。しかし、この間の交渉で「消費税は預り金でも預り金的でもない」(福岡国税局)、「根底は違う」と認め答弁不能(国税庁)など、預り金の根拠が崩れてきています。消費税は預り金なのか、預り金ではないのか。この問題がなぜ大切なのか‐神奈川・横浜南部民主商工会(民商)青年部員の伊藤麻里子さんが、湖東京至関東学院大学法科大学院教授に聞きました。


消費者と事業者の分断を狙った税務署のポスター
「消費税が預り金」がなぜ問題なんですか…
 伊藤 消費税が預り金かどうか、なぜ、問題なんですか。
 湖東 国税当局は、いわゆる「消費税は預り金」という論法を、消費者と中小業者の分断や、徴税強化をすすめる大きな手段、戦略として最大限に活用してきたのですが、この間の民商の運動が当局の論拠を崩しつつあるんです。大きな痛手でしょう。
 消費税のそもそも論から説明しましょう。実は消費税は預り金ではないのです。国税局や税務署のトップ自らがそう言い、国税庁の通達、確定した裁判の判決でも「あれは物価の一部ですよ」と言っています。消費税法のどこを探しても「事業者が消費税を預からなければならない」という主旨の条文はないのです。
 伊藤 えっ。そうなんですか。
 湖東 この税金はもともとは事業税なのです。戦後、アメリカから来たシャープ使節団が、事業税の代わりに「付加価値税」を考え、昭和25年に国会で決まったのですが、4年間実施されずに廃止された税金と同じ性質、つまり直接税と同じ性質を持っているのです。政府は、赤字でも取る方法がないかと考え、赤字でも売り上げに課税すれば取れるじゃないかということで、皆さんが大変苦労している税金・消費税になっちゃったわけ。
 伊藤 ひどいですね。
 湖東 消費税の納税の仕組みは、売り上げに5%かけるのではなくて、売り上げから仕入れとか消費税が入っている経費、例えば電気代とかを差し引いて、その残りに5%をかけます。しかし、人件費は引く対象になりません。中小業者は人件費率が高く大半が赤字ですが、消費税の計算では人件費が引けないため必ず税金が出ます。そういう恐ろしい仕組みなんです。
 さらに転嫁の問題があります。力の強い事業者、親会社なんかは消費税をちゃんと価格に転嫁した上に、仕入先、外注先に「5%分をまけろ」とか言ってきますが、下請けや小さな業者など力の弱い業者は転嫁できず、消費税をもらえません。
 伊藤 底辺の人たちがいじめられるのですね。感覚がぜんぜん変わりましたね。預り金だとばかり思っていました。
 湖東 もう一つ、税務署のポスターにもある消費税は「預り金的」税金だという説明ですが、「預り金っぽい」なんてことは法律の解釈からいってもあり得ません。

中小業者は払ってないと思っている人も…
 伊藤 消費者のなかでも「預かった消費税を払っていないのはおかしい」と思っている人が多いのではないでしょうか。
 湖東 益税だとか言ってね。特に消費者の人たちは、税務署に直接消費税を納めませんから、自分が負担した消費税分は、中小業者が懐に入れちゃったんじゃないかと思っているのです。
 先ほども消費税の仕組みでも言ったように、消費税というのは事業者が5%を手付かずに納める税金じゃないのです。だから買い物をするときに自分が負担した消費税と、事業者が実際に税務署に納める税額とは無関係なのです。
 消費者は自分が5%負担していますから、その仕組みが理解できない。そこで、消費者と事業者が対立することになっちゃうのです。税務署もポスターで「私の払った消費税を、預かった人のなかにきちんと税務署に納めていない人がいる」などと、意図的に対立をあおっているのです。
 伊藤 そうですね、これぎょっとしちゃいますね。
 湖東 業者を敵にすることで、敵は税務署ではなくなっちゃうわけ。「消費税は悪い税金だ」というと、それは業者が懐に入れるから悪いんだと。本当に悪いのは、こんな悪い税金をつくった課税当局、国会じゃないですか。こういうのを分断作戦というのです。

差し押さえされてもやむをえないのでは…
 伊藤 私の周りの業者青年も消費税を滞納する人がずいぶん増えています。税務署に「消費税を使い込んでいるあんたが悪いんだ」と言われると、「差し押さえとかされても仕方がない」と思い込んでしまう仲間が多いのですが。
 湖東 滞納が起こる税金って、いい税金だと思いますか。平成15年度に発生した滞納税金でいうと、所得税とか法人税など、すべての滞納額のおよそ半分弱4735億円が消費税なのです。
 伊藤 そんなにあるんですか。
 湖東 あんまり滞納が多いので、国税当局はポスターを作ったりして「消費税は預り金なんだから」と納税者を押さえつけ、「他の税金はともかく、消費税はどうしても納めなさい」と、売掛金や不動産を差し押さえたり、生命保険を解約しろとか、徹底して徴収を強化しているのです。
 おそらく今後、政府は中小業者も、1年に1回の納税を毎月納税にしようとすると思います。
 伊藤 どうしても納められなかったら、どうしたらいいんでしょうか。
 湖東 税務署は「貯金をしろ」と言ってますが、それができるんだったら苦労はしません。滞納は罪ではありません。「滞納せざるを得ない税金なんだ」「資金繰りができたら納めます」と割り切って、民商がこの間とりくんでいるように、正々堂々と滞納処分の執行停止などの納税の緩和措置などを行使していくのが一番です。

預り金攻撃をはね返し増税反対の運動をぜひ
 伊藤 預り金問題の重要性はよく分かってきました。
 消費税の問題点を告発していく運動をもっとおう盛にすすめていく必要がありますね。
 湖東 消費税が預り金じゃないことは、はっきりしているわけです。このことを仲間に知らせ、税務当局にも明確に認めさせることが大切だと思います。
 消費税を納めるための資金繰りのつらさを思い出してください。この何倍も苦労するんだということになれば、税率引き上げに反対し、簡易課税を廃止することにも反対しなきゃいけません。
 結局、税金というのは本来、あるところからとるべきです。憲法の原則で言えば能力に応じて負担をするという「応能負担原則」が税の基本なんです。
 伊藤 きょうはすごく勉強になりました。ありがとうございました。

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