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歯科技工士・岩澤 毅

時見高志 ◆歯科技工士の全国リレーエッセイ 保険制度と生きる(プラスワン) 第11回「環境改善にマインドセット」

2021年02月24日 | 基本・参考

日本歯科新聞  2021年2月23日付(2146号)

◆歯科技工士の全国リレーエッセイ 保険制度と生きる(時見高志・プラスワン)
第11回「環境改善にマインドセット」

昭和63年(1988年)、良質な歯科医療を確保するための標準的な委託技工料を示すという歯科技工士の期待を背負い、製作技工に要する費用がおおむね7割、製作管理に要する費用が3割とする通則、いわゆる"大臣告示"が発せられ30年余りが経過した。

診療報酬改定の前年には、歯科技工関連項目の点数を見直す際の基礎資料の一つとするため、無作為に抽出した委託する側の歯科医療機関1400ヶ所と、受託する側の歯科技工所1200ヶ所件に対し、厚生労働省による「歯科技工料調査」が行われている。調査結果は非公表であるため明らかではないものの、一般的に歯科技工所に補綴物の製作を委託する際の歯科技工料を委託・受託双方の側から調査し、診療報酬改定作業における参考資料の一つとして利用されている。

また、中医協における診療報酬改定の際において審議過程の透明性や客観的なエビデンスに基づいた改定を行うために、日本歯科技工学会による「タイムスタディ調査」や「難易度調査」、歯科技工に係る原価計算など各種の調査が行われ、個別項目に関する改定の参考となっている。算定根拠が示しにくい“管理に要する費用”に対し、製作点数の7割の部分に相当する“製作技工に要する費用”に関しては客観的に算出することが可能であり、「7」の部分が大きくなれば必然的に「3」の“管理に要する費用”も大きくなり、結果として製作点数の増大に繋がるという算段となる。

日本歯科技工士会からは、開設者会員に向け診療報酬改定毎に「点数分析表」が送付されるとともに、診療報酬改定の過程や改定のあった個別項目については生涯研修などを通じ詳細に説明を行われるなど、健全な歯科技工所運営に繋がるよう願い活動を続けているが、残念ながら多くの歯科技工所開設者にとっては実勢の歯科技工料とのギャップを埋めきれず、歯科技工所での労務環境の抜本的な改善には至っていない。
◆◇◆
良質な歯科医療を提供することを目的に、歯科医師の指示の下、歯科診療所に勤務する歯科技工士が診療室内におけるチェアーサイドにおいて、補綴物の色調、形態、排列等の確認を行うことは日常的に行われている。

また、訪問歯科診療における診療行為の内容は、歯周病治療ならびに口腔衛生指導と共に、義歯の製作、調整・修理が特に多く、訪問歯科診療に歯科技工士を伴うことで、診療の質を高め診療時間の短縮による効率化と良質な歯科医療を提供することで患者の満足度も高くなることが期待される。

これらの行為については歯科医師及び患者からの要望も多く、歯科技工士が持つ“職能”を活かすことにより職業人としての自信と誇りを更に強く持つこととなり、患者と直接接する機会を増やすことで歯科技工士としてのやりがいや社会的認知度の向上にも繋がると考える。

そのためには、公衆衛生学等の知識の習得やコミュニケーション能力の向上も図る必要があることから、他の医療職種団体に倣った教育・認定制度を実施するとともに、これらの行為について実効性を高めるためには、診療報酬内での加算点数を設けるなどの評価が不可欠であろう。
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歯科技工経済問題を解決することは容易ではない。これまでの運動を起点に法整備や制度の構築には、歯科技工士だけの主張では成り立たたず、歯科界全体のインセンティブを引き出し、歯科技工士としての充足感や社会的な評価に進むための知恵と努力が求められる。






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