事情があって預かっているもので、私のではない。
室町前後、刀工によってまさに鍛え上げられたものだ。
実戦では使われていないそうだが、現代の作刀とは根本的に異なり、実戦のため作られている。
手元から切先まで、絶妙なテーパーと反り。
持ち重り感がなく、軽くさえ感じる。
“バンブーなんて重くて使えないと思ったけど、意外といけますね”と、どこか似ている。
まさに氷の刃、見ていると吸い込まれそう。
ここまで仕上げるのにどれだけかかるのだろう。
“武士の魂”“日本が世界に誇る工芸品”いろんな見方があるが、やはり人を斬るための道具だ。
だが、その目的を極めた美しさは認めざるをえない。
所定期間内に本来の所持人のもとにもどします。
美術品としての価値はあるのでしょうが、このようなものがあると気持ちが落ち着きません。
美しいですね。
研ぎ澄まされた刃の鋭さは、氷のような冷たさを感じます。
しかし、一たび目釘を抜けば茎には刀工の鍛えた鎚後がはっきりと見て取れます。
その過程を想像してだけで気が遠くなります。
無名ながら、いいものとのこと。
それは素人でもなんとなく分かる。
大昔になるが、小さな大会で優勝したとき、“お祝いにこれをやろう”と、太刀一振りを渡され困ったことがある。
“抜いて構えてみろ、よし、お前にピッタリだ”
その刀は、度重なる戦を経験し、その疲れが見て分かるほどであった。
“これは、何人斬ったか分からんが、研ぎ直したら良い姿になる”
美しさの影にある危険な匂いが心をくすぐるのかも…
でも私にはせいぜい釣竿が似合ってる。