あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

柔らかな香りと癒しの人(FF4セシゴル)

2020年03月25日 | スクエニ関連

 

 

 

本編SSはゴルベーザじゃなくセオドールで統一してます。

腐的で弟×兄の表現がありますので、閲覧には充分注意して下さい。凄く短いです。

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<柔らかな香りと癒しの人>


その日の夜、毎晩訪れる馴染みの重い扉を勢い良く開け、聖王セシルは言い放った。

「トリック オア トリート!お菓子くれないと、悪戯しちゃうぞ!」

今では目に入れても痛くないと真顔で言い切る程、
弟を溺愛している元魔人セオドールは、お茶を淹れるポッドを手にしたまま、
サイドテーブルの前で凍り付いた。
そしてショックを隠せないのか青褪め、震え出す。

「……聖王がそんなに腹を空かせる程、この国は困窮しているのか…」
「に、兄さん?」

酷い誤解である。
幼い頃からゼムスに付け狙われ、闘う事だけを強いられて来たセオドールは、
勿論ハロウィンの決め台詞など知らない。
ハロウィン自体は知識として知っているが、咄嗟の事で判断出来ないのだろう。
悪戯するぞと実兄を恐喝しなければならない程、聖王国バロンが困窮していると思い込んでしまったようだ。
極論もいい所である。
それ程までに弟であるセシルをいつも心配している証拠でもあるのだが、
本人は気付いていない。
セシルは心配気に青褪めているセオドールにハロウィンの説明をしようと口を開き掛けた。

「私に出来る事なら、何でもする。言ってみろ」
「…え?じゃ、じゃぁ、お言葉に甘えて、悪戯させて?」
「…いいだろう。……ん?何だ、悪戯とは何をするのだ。
それに、腹を空かしているのだろう。丁度茶を淹れた処だ。
ポロム殿の差し入れの菓子も一緒に食べていくがいい」

話が変な方向になって来ている。
セシルは間髪入れずに兄を押し倒す方向へ持っていくよう答えた自分に軽く自己嫌悪に陥った。
しかし、セオドールはそれを超越して天然だった。
母が子に餌を遣るように、兎に角セシルの腹を満たす事に集中しているようだ。
そう、セオドールには単刀直入に言わねば伝わらないのだ。

「う…うん。じゃあ、頂こうかな」
「今日の茶は私が幾つかの茶葉をブレンドしてみたのだぞ。疲労回復の効果があるのだ」

儘ならない脚でいそいそと弟の世話を焼こうとするセオドールに、
セシルは結局何も言えなくなってしまう。
セオドールが余りに嬉しそうにお茶を淹れているので、
茶々を入れるのが野暮のような気がしたのだ。

「お菓子は頂くけど、別に聖王国バロンが困窮している訳じゃないから、安心して兄さん。
ちょっと朝食が軽めだったのに、お昼を抜いたからお腹が空き過ぎただけだからさ」

弟と同じように、弟が治める聖王国バロンの事も心配していたセオドールは、
一言「そうか」と言っただけだったが、柔らかな目許から安堵した事が伝わって来た。
嘗て魔人、魔将軍ゴルベーザと恐れられた男は、繊細で脆く、
セシルが心配する程に優し過ぎる心の持ち主だった。
その体躯から豪快な性質かと思いきや、草花を愛し、屋内での読書を好んだ。
最近は、セシルに飲ませるお茶の研究も始めたらしい。
出されたお茶はすっきりとした味わいで、仄かに甘かった。
確かに疲れが取れるような気がしてくる。
セオドールは、セシルの表情を少し離れた席で見守っていた。
そんな兄に、セシルは今すぐにでも抱き締めたい衝動に駆られる。
お菓子なんて要らないから、悪戯させてと叫びたくなる。
セシルは落ち着く為に、小さく咳払いをした。

「美味しいよ、兄さん。確かに疲れが取れてく気がする」

嬉しそうに目許を綻ばせ、「そうか」と呟くセオドールに飛び着きたくなる衝動を何とか押さえ、
セシルは立ち上がった。
このままでは、純粋に自分を心配しているセオドールを更に泣かせてしまう危険性がある。
そんな弟の思惑も気付かず、セオドールは慌てて席を立った。
心無しかアメジストの瞳が潤んでいる。

「もう、帰ってしまうのか。来たばかりではないか」

セシルは聖王国バロンの国王にして、ローザと言う后もいる。
今から家族団欒の夕食が待っているのだ。
言ってから失言だったと言わんばかりに、しゅんと顔を曇らせるセオドールに、
セシルの限界は突破された。
徐に兄の手を掴むとその胸に引き寄せた。
セオドールは混乱してされるが儘だ。

「兄さん。じゃあ、さっきの約束通り、悪戯させてね」

幾ら鈍感なセオドールでも、抱き竦められたまま尻を弄られれば、嫌でも悪戯の意味に気付いた。
顔を真っ赤に染めて、不自由な身体で必死に弟の腕から逃れようと身を捩る。

「まっ…待て、悪戯など…子供のする事ではないか…このような意味では…」
「約束は約束だよ。ちゃんと守ってくれなきゃ、兄さん」

言葉に詰まり覚悟を決めたのか、セオドールは耳まで朱に染めて弟の背中に腕を廻した。
セシルは微笑む。
ホントに兄は自分に甘い。
勿論、自分も兄に甘いからお互い様なのだが、今日は更に特別のような気がする。
お茶の香りが漂ってくる。
疲労回復の効果は、兄に逢えるこの時間全てが当て嵌まる。
兄自体が癒しなのだ。

「兄さん、大好きだよ。ハッピーハロウィン」

小さく耳元で「私も」と囁かれるとセシルはこれ以上の幸せは無いという顔で微笑んだ。


<了>

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純情な大きな人が大好きなのです。蜻蛉ちゃんとか。

 

 

 

 

 


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