あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

貴方のための献立(辻賢)

2020年03月25日 | 図書室のネヴァジスタ関連

 

 

これは「図書室のネヴァジスタ」という同人サークルのゲームのSSです。

多数の登場人物が出て来ますので、詳細はwiki先生か、

ゲームの紹介https://booth.pm/ja/items/1258でご確認下さい。

少しでも興味を持って下さった方はプレイしてみて下さい。

下記のSSSはネタバレでもあるので、ご注意下さい。

大丈夫な方は下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<貴方のための献立>


辻村煉慈は頭を悩ませていた。
現在、清史郎の部屋に監禁していた兄、賢太郎は白峰の部屋に移されている。
白峰が学校から戻る前に訪れた部屋で、怯え、自虐に走る賢太郎に、
自分のした行為を思い知らされた。
その償いをしたいと思いつつも、逢えば賢太郎を苦しめるだけなのだ。
辻村は頭を抱えた。

「一体、どうやったら賢太郎は怯えなくなる…」

其処は聡い彼である。
暫く悩み、ある事を閃いて、賢太郎のいる部屋の主、白峰に協力して貰う事にした。
学校から帰り自室に戻る白峰を捕まえ、早速説得を試みるが、白峰は顔を曇らせた。

「確かに君に出来る事は料理だろうけど…。今の賢太郎は殆ど病人食位しか食べられないよ」

そうなのである。
幽霊棟の食事係である辻村は賢太郎の食事の用意もしている。
此処最近はお粥や果物がメインだったが、少しでも食べられるようになれば、
賢太郎の好きな物を作ってやれると思ったのだ。

「それに、余り多く食べられないからビタミン剤と併用して、体調を整えてる段階なんだ。
だから、好きな物を食べられるようになるのは、まだまだ先の話だと思うよ」

一人で立てない程に衰弱していた賢太郎を、白峰は本気で助けようと努力していた。
その誠意が伝わるのか、賢太郎は白峰を信頼し切っている。
自分に向ける目は怯えと侮蔑しかないのに、母に甘える幼子のように、
賢太郎は白峰に全面的に甘えている。
清史郎の部屋に監禁している時は閉じ込める事に夢中になって気付かなかったが、
痩せ細った賢太郎は少女のように儚く、保護欲を掻き立てられた。
清史郎の為に、賢太郎を護らなければならない。
そしていつか、自分を見て笑って欲しい。
辻村は苛立ちにも似た自分の感情に戸惑っていた。
そして困惑する白峰を他所に、辻村は厨房に入って行った。


「賢太郎。今日は全部食べられたんだね。美味しかったのかな」

それから数日経った頃、学校から帰った白峰が空になった食器に気付いた。
白峰の部屋に来た頃の賢太郎は一人で座位を保つのも精一杯で、
大きなクッションを背中に当ててお粥を啜る位しか出来なかったのだ。
美味しかったのと聴かれ、賢太郎は無言のまま子供のように頷く。
囁くような声を聞き逃したくなくて、白峰はベッドに腰掛けた。
今日の献立も確かお粥だった筈だ。お粥は余り好きじゃないと聴いていたのにと首を傾げる。

「……今日は…鶏がらの出汁の…お粥で、何か……ラーメンみたいだった」

だから食べれたと仄かに顔を綻ばせる賢太郎が可愛くて、白峰は少し嫉妬した。
辻村は賢太郎の趣味がラーメン屋巡りだと言っていた事を思い出したのだろう。
いきなりラーメンは胃が受付けないだろうと思い、食べられるようにお粥にアレンジしたのだ。
辻村は本気で賢太郎を餌付けするつもりなのかと気が焦る。

「…この調子で行けば散歩にもお風呂にも行けるね。ガンバロ。賢太郎」

幾ら料理を食べて貰っても、本人に知らせなければ状況は変わりはしない。
俺は其処まで親切じゃないし、賢太郎を譲るつもりは無いけどと思いながら、
白峰は食器を下げた。


「明日から普通のご飯とお粥を半々にしてみて。後、少しずつ温野菜やスープも混ぜて」
「お前……専属の栄養士みたいだな…」

おたまを持ったまま、大きな厨房で睨みを効かせて来る辻村に怯む事無く、
白峰はそう淡々と告げた。
賢太郎が喜ぶようなメニューを工夫しては、残飯の量で好みを確認する行為を、
辻村は健気に繰り返していた。
最近は賢太郎もベッドサイドの本棚に捕まって一人で立てる程に回復し、
ビタミン剤の補助が無くても経口摂取で充分栄養を賄える程になっていた。
それもこれも、全て辻村の涙ぐましい努力の成果だろう。

「最近は、賢太郎も食事が楽しみになって来たみたいだよ。良かったじゃない」

人の良い白峰は辻村のいじらしさに、心打たれ、賢太郎に真相を話そうとした。
しかし、辻村は断固として承諾しなかった。
折角食べられるようになったのだ。
料理を作ったのが、自分だと知れば、また断食するようになってしまうかもしれない。
辻村はそれを恐れた。卵を熱だけで柔らかく炒り呟く。

「俺はあいつが元気になって、また笑ってくれれば、それだけでいいんだ」

白峰は黙ってそれを聴いていた。
心の中で、それって純愛じゃないのと思いつつも、口を開く事は無かった。
無言で鍋を振り続ける辻村を、白峰は黙って見詰めていた。


夕飯を暫く見詰めていた賢太郎は、ふと顔を上げて白峰を見た。
背を向けて学校の課題を片付けていた白峰は視線に気付き、何かと質問を促す。
賢太郎は戸惑っている様子だった。
やがて観念したのか口を開く。

「……これ、春人が作ったんだ…よな……」

白峰の心臓が音を立てて跳ねた。
しかし、それは慣れたもの。
白峰は素知らぬ振りをして微笑む。

「どうしてそう思ったのかな。料理に愛情、感じられないの」
「ち……違っ……、そうじゃ無くて……、何か……」

賢太郎は其処まで言ってから、言葉に詰まるように言い淀んだ。
白峰に遠慮しているのか、顔を強張らせている。
蓮華を持ったまま、視線を彷徨わせている賢太郎に、
白峰も会話を終わらせるつもりは無かった。

「……賢太郎。最後まで話して」

口調は柔らかかったものの、先を促されて賢太郎はびくんと肩を揺らした。
怯えにも似た表情に、白峰は眉尻を下げた。
きっと言えば白峰を怒らせてしまう内容なのだろう。
白峰に嫌われると怯える賢太郎に満足し、そっと肩を抱いてやる。
恐る恐る白峰を伺いながら、賢太郎は口を開いた。緊張に声が掠れる。

「……味が……、春人の優しい感じと、…違う気がす…から……」

負けた気がした。
白峰は目を丸くする。
辻村、君の勝ちだ。
そう言ってやりたかった。
何も告げず、ひたすら謝罪の気持ちを込めて鍋を振り続けた君の優しさが、漸く伝わったんだよ。
白峰は困ったように微苦笑する。
白峰の反応が怖くて顔を背けていた賢太郎が、白峰の声に、喉を震わせる。

「……やっと、頼まれていた事が聴けそうだよ。ねぇ、賢太郎。…あのね……」

 


<了>

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賢太郎、「スペアリブ食べたい」と言って春人に「こら!」と言われてそう。
それを聴いて、煉慈は感涙するがいい。

私は茅の次に春人ルートが萌えました。賢太郎ルートは皆好きですけど。

 

 

 

 


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