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差し伸べられる手(DQ5主フロ)

2017年04月23日 | スクエニ関連
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<差し伸べられる手>
 
 
人間界に攻め込もうと画策しているという、魔王ミルドラース討伐の為、ルークス達グランバニア王一向は魔界と人間界を頻繁に行き来していた。
既に何度目かの遠征になるだろうか、今日も一向は魔界の人里の前にルーラの呪文で降り立った。
魔界に来る度、ルークスは空を仰ぐ。
変わる事のない、生者が死に逝く世界。
永遠に晴れる事のない暗黒の雲が渦巻き、鉄錆色に閉じられた空を低く覆っている。
それは怒りに悶える魔獣のように、赤や紫の稲光を発し、魔界の大地さえ呑み込もうとしているかのように、常に蠢いていた。
 
 
 
天空の勇者サーヴァルの妹である王女シーベルは、父であるグランバニア王ルークスの紫暗のマントの裾を掴み、不安そうに周囲を見渡している。
父から譲り受けた邪悪を感知する能力が彼女を不安にさせるのだろう。
ルークスの妻である王妃フローラは、怯える娘の頭に手を置いて、聖母のような微笑を浮かべた。
 
「シーベル、大丈夫です。わたくし達には天空の勇者であるサーヴァルと、どんな困難でさえ打ち勝って来たルークスが居るわ。だから安心なさい。わたくし達に出来る事をしっかりと成し遂げましょう」
 
薄暗い魔界の中で、一際光り輝くような母の姿に、シーベルは一瞬言葉を失う。
ルークスの母であるマーサも充分に神々しい印象だが、古の天空の勇者の子孫である母フローラの聖なる気は、この魔界では異質だった。
フローラの周囲だけ白銀に光り輝いて見える。
フローラの紡ぎ出す言葉は、それ自体が祝福されているかのように力強く、怯えるシーベルの心を光で満たしていった。
青褪めた相貌から子供特有の薔薇色の頬に変わっていくのを、ルークスは魔法を見ているかのように見詰めた。
ボロンゴと追い駆けっこを始めた双子に安心すると愛する妻を気遣って、声を掛けた。
フローラはか細い身体から想像出来ない程のオーラを放ち、微笑んだ。
 
「平気です。大きなお城であなたや双子のことを心配しながら一人待つよりは、どんな場所であれ、家族共に居た方が、わたくしは幸せです。ですから、あなたはあなたの思うまま、突き進んで下さい。わたくしはその後に付いて参ります。もう二度とあなたと子供達と離れたくはないのです」
 
ルークスは何も言わず、深く頷いた。
それに応えるかのように、フローラが再び嬉しそうに微笑んだ。
其処から薄桃色の花弁が舞っているかのような聖なる微笑だった。
ルークスは胸が熱くなる。
やがて、ボロンゴが一通り双子達を遊ばせたと判断したのだろう、出発を促す為にルークスの足許に身体を摺り寄せて来た。
その体躯からルークスが支え切れる限界を超えているのだが、ボロンゴは未だ仔猫だった頃の感覚で凭れ掛かって来るのだから、堪ったものではない。
ルークスは大きくよろめき、その場に尻餅を付いてしまった。
後ろで三人とモンスター達の悲鳴が上がり、複数の手が差し伸べられる。
 
「お父さん僕に掴まって!大丈夫。僕、もうお父さんを支えられるくらい強くなったよ!」
「大丈夫?お父さん。痛くなかった?ボロンゴも反省してるから叱らないであげてね?」
「あなた、大丈夫ですの?あぁ…わたくしに回復呪文が使えたら良かったのに…」
 
モンスター達の脚、手、尻尾、獣の鳴き声、数え切れない程の労わりの言葉が、ルークスの頭上を飛び交う。
あぁ、魔王だろうと、どんな強敵だろうと、何を恐れる事があるのだろう。
ルークスは思う。
父が殺された時でも、ヘンリーと別れた時でも、石像にされてしまった時でも、自分は常に一人では無かったではないか。
今も、愛する妻と可愛い双子、自分を一身に信じてくれるモンスター達が、傍に居てくれるのだ。
これ以上の幸せは無い。
そしてその幸せは両親無くしては得る事が出来なかったのだ。
父の願い、母の願い、ルークスは手を伸ばす。
この世に全てが幸せな人生など無い。
人生は苦しみだけなのかもしれない。
でも、今、自分は幸せだと思う。
だからきっと助け出す。
ルークスは決意を新たにし、皆の手を借り立ち上がると、暗黒の空を睨み前へと歩み始めるのだった。
 
 
 
<了>
 
 
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個人的に公式のリュカという名前も気に入っていたのですが、当時はDQはルークス、BOFは「リュウカ」と決めてました。
大人しいけれど、胸には熱い想いを秘めた青年の気持ちで書いてました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


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