昔数本書いた「テイルズオブシンフォニア」のジーニアスとクラトスの話です。
カップリングではありません。所謂「&」な感じです。
興味のある方のみ自己責任で(笑)御覧下さい。読んでからの苦情は一切受け付けかねます。
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<天使語を習おう>
ジーニアスが天使語に興味を持ったので、コレットが眠る前に教え、簡単な質問をクラトスが行軍中に教える事になった。
段々それが日課になりつつある。
リフィルも興味深げに聞いている。
コレットは真面目なので丁寧に教えてくれるし、クラトスは要点を絞るなど教え方が慣れていて上手かった。
「クラトスさんって教え方上手だよね」
「…そうか?」
歩きながらきょとんとした顔で見返してくる赤毛の青年にジーニアスは驚き硬直する。
最近顰めっ面ばかりしていたクラトスだったが、天使語を教えてくれる際は自分を抑え、平静でいるように努力してくれているようだった。
大人は姉以外少し蔑視する事が多かったジーニアスだが、クラトスの事は尊敬しつつあった。
いつも平常心でいるように自分を制している。
親友の剣士とは大違いだと噴出してしまう。
「…どうかしたのか?集中していないようだが…」
「あ、ゴメンなさい。何かクラトスさんとロイドって、同じ剣士なのに全然違うなぁって思って」
クラトスはそう言われると何故か少し哀しそうな顔をした。
しかしすぐにいつもの無表情な顔に戻る。
ジーニアスはクラトスの顔を凝視した。「似てない」と言われ何故哀しそうな顔をしたのか気になった。
クラトスは少し考えると自嘲気味に笑った。
「ロイドは…私に似なくていい。私のような剣士になっては欲しくない。ただ…戦場での冷静さやリーダーとしての判断力はもっと学んで欲しいとは思うがな」
「…後、勉強もでしょ?」
「…違い無い」
2人はくすくすと笑うと勉強を再開する事にした。
ジーニアスはクラトスの最初の言葉が気になったが、触れて欲しくないという雰囲気だったので、敢えて聴こえなかった振りをした。
少し離れた前でロイドはコレットの体調を気にして、色々話し掛けている。
クラトスはロイドを見詰めている。
少し切なそうにそして哀しそうに。ジーニアスは何故か分からなかった。
ロイドは鈍感な処はあるが、間違いに正面から向かい反省し、前に進もうとする勇気と潔さがある。
それはジーニアスには無いものだった。
故郷の村を出る事になってしまったのも元はと言えば、自分が巻き込んでしまったのだ。
ロイドは村を護る為に闘ったのに、結局はその重荷をロイド独りに背負わせる羽目になってしまった。
自分を親友だろ?と時折言ってくれる優しい少年。
ジーニアスはいつか自分がロイドを助けてやれる日が来ると信じて、どんな時もコレットと共にロイドの傍にいるつもりだった。
ロイドを思い詰めた様子で凝視しているジーニアスにクラトスは気付いた。
「ロイドを…思っているのだな?」
急に真面目な話になって、ジーニアスは恥ずかしくなり慌てて否定した。
しかし真摯なクラトスの瞳に誤魔化せないと溜息を吐いた。
何故かこの目に見られると嘘がつけないと思ったのだ。
「うん。いつか僕がロイドを助けてあげるんだ。恩返しって訳じゃないんだけどね。傲慢かなぁ…」
照れて笑う少年にクラトスはゆっくりと頭を振った。
優しい目をしている。
ジーニアスは魅入られた。
「ロイドも神子もこれから過酷な試練に向き合う事になるだろう。そんな時、冷静に判断し、あの子達を支えてやれる存在が必要だろう。二人を頼む」
ジーニアスは呆気に取られて、そして瞬間不思議に思う。
一番冷静なのはクラトスさんなのに、姉さんだっているのに。
何故そんな事を自分に言うのかと口に出してしまう。
「それは…クラトスさんの方が相応しいと思うけど…」
またクラトスは哀しそうな目をすると、再度ゆっくりと頭を振る。
「私は…その資格が無い。それに二人を支えるのは、君の姉さんより親友の君の役割だ」
親友と言われジーニアスはその責任を再確認させられた。
過酷な試練とは何なのだろう。
この赤毛の青年は何を知っているのだろう。
そう言えば一介の傭兵が何故天使語などを知っているのだろう。
天使語に詳しい友人から教わったと彼は言ったが、精霊の事と言い、数多くの知識といい、20代後半の青年が知る情報にしては多過ぎる。
ジーニアスはクラトスを初めて逢った人のように見詰めた。
「さぁ、続けなさい。午後からは野営場所を見付け次第、野営に入る」
「……あ、はい」
視線を天使語の書かれた自作のノートに落としながら、ジーニアスはクラトスの様子を垣間見る。
綺麗な顔をしていると思う。
容姿端麗なエルフに匹敵する優美さも秘めている。
不思議な青年。
物言いは傭兵と言うが国に仕える騎士といった感じがする。
きっと滅びた国の騎士だったに違い無い。
茶色掛かった赤い髪と瑪瑙のような美しい茶色の目。
しかしその輝きは何処かで見た気がした。
その意志の強そうな眉が無ければ女性にさえ見える程に美しかった。
ジーニアスはクラトスに興味が湧いて来た。
「クラトスさん」
「…分からない処があったか?」
ジーニアスは首を振るとにっこりと子供らしく笑った。演技で無く可愛らしく笑う。
「ロイドの事は僕に任せて下さい」
一瞬クラトスは何を言われたのか分からなかったようだった。
しかしその意味を理解すると、ジーニアスの予想通り、それは優しそうに微笑んだ。
懐かしい、心が温かくなるような笑顔。
「約束を護った際には、クラトスさんにご褒美を貰いたいんだけど、いい?」
「……?私に?……いいだろう。考えておきなさい」
クラトスはまた嬉しそうに微笑む。
いつもの顰めっ面で無く、ずっとこの嬉しくなるような温かな笑顔で居て欲しいとジーニアスは思う。
はにかんだように照れたように可愛らしい。
ちょっと危ないかなと思うが、目の前の青年が笑ってくれるなら、どんな困難でも乗り越えられると思った。
<了>
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人称や呼び方がおかしかったらすみません。何せ積んでしまったゲームなので(´;ω;`)