大きなずた袋一つを持って上野駅に降り立ちました
ずた袋の形状も完全に記憶しています
何のつてもなく
右も左もわからない東京で生きて行こうと決心しての事です
誰1人いない駅のホームに目をやりながら
発車までの時間を待っていると
営業を終えられた体(テイ)の
演歌歌手のぴんから兄弟のお二人が
ハンガーにつるしたままのむき出しの衣装を両手に持ち
慌てて乗り込んでこられました
どちらがお兄さんかわかりませんが
厳つい小柄のぴんからさんと目が合い
おやっとされた表情が忘れられません
他の車両に行かれましたが・・・
上野駅に降り立った時
風花が舞っていました
でも花吹雪だったのだろうか
その日から 東京の住人になりました
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