愛のせい

愛のせい

無理だと時間が

2016-10-28 09:24:20 | Dream beauty pro ?毛


 人生で初めて履歴書を書き二人同時に面接を受けた。向こうからすれば友達同士の応募にはリスクを当然感じたのではと、容易に想像がつく。
 一緒に来るとい高麗蔘うのは仲が良いわけで、二人で遊びたいから休む(もちろん、はっきりと正直には言わないのが高校生の狡賢[ズルガシコ]さだ)だとか、まだそれはいいとしても『仲が悪くなったからアイツとは同じところにいたくないです』だったり、『顔を合わせたくないから辞めます』といったいささか身勝手な発言は如何にもありがちだ。偏見だが、女子学生の場合はなおさらその可能性が高いのではないかと思う。
 メリットもあると言えばある。学校帰りの短い時間が店側にとってはちょうどいいくらいだと募集をしても、長時間働きたい人間は敬遠する場合が多い。それはまあ二人連れ特有のメリットではないが、あえて言えば平日のシフトを一気に埋める人材を確保出来るという意味では都合がいい。
 もう一つ、二人で遊びたいから休むのではなく、どちらかがどうしても開けなければならない穴を友だちとして助けるために代わりに働く。といった、やや美しくもあるちょっとした青春シーン。そんなものを多少でも信じられる経営者であるならば、二人同時に雇うことも可能性としては排除しない、かもしれない。
 
 結局彼が平日の週三、残りの二日を僕が担当するシフトになった。面接の際には、休みの日には伝え漏らしがないように二度三度、半ば無遠慮なほどに伝えた。高校生には他にもやることがあるし、まあ仕方ないとでも経営者は思ってくれたのではないか。かかるところから休みに来てもらうまでしなくてもと、都内在住ではな高麗蔘い旨は強調してまでは口に出さなかったが、履歴書を一読して判断したのだろう。
 
 仕事の内容と言えば、注文を受け出来た料理を運び、食べ終わった器を流しに入れ、最後客が帰った後に冷水の入ったコップをレジの手前にある流しで洗う簡単な作業など。なにより忘れてならないメインの仕事はレジスターを担当することだ。
 テーブル三卓にカウンター六席くらいの狭い店だったので、慣れてしまえば別段大変でも難しい仕事でもない。夕食時の掻き入れ時に忙しくなる時間帯があるくらい、それが済めばもうあとは気楽なものだった。店長に聴こえない程度に、有線放送より潜めた音量で下手な鼻歌を奏でながら、適当なリズムを取ってテーブルを拭いたり割り箸の頭を揃えたり。中々上手くいってる。順調だしバイトも悪くないもんだ。

 電話からおかしなアナウンスがして使えない。母に相談してみたがやはりそうだったという。「デジタル電話は回線買取方式だから、旧い電話は使えなくなるとか」と父が落ち着いた口調で説明する。
 元総理K議員が電話をかけ、故障した際強制的に繋がる回線のオペレーターと話をしているが埒が明かないのだとか。さらに彼が近所に頼んで合計十数件の電話からかけたところ、ほとんど専用オペレーター以外には繋がらないようだ。いつの間にかその頭は随分と白髪が増えているように見えた。それでも何件かはまともに外線を使える電話があるとのこと。I議員も別の場所で同じことをしている。

 故人であるはずの某政治家が入院先で無事手術を終え、そこを後にする場面。正面玄高麗蔘関から出てきた彼は少し空を仰ぎ見て、一瞬目を細める。入口付近で立ち止まる姿をこちらは植え込みの隙間から覗き見ている視線だった。
 病院スタッフがずらっと並んで退院を見送るつもりか、全く大袈裟に見せないほど真摯に心からの一糸乱れぬ最敬礼をしている。


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