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さっきシャツにアイロンをかけた。アイロンがけというのは、技術がいるなとつくづく思う。
アツミはかしこまり系の服をほとんど持っていないため、週に一度くらいしかアイロンをかけない。なので、アイロンがけの腕はなかなか上達しない。
アツミ母は、アツミが物心ついた時すでに、毎晩毎朝アイロンをかけていた。父の背広のズボンに当て布をして、霧吹きをかけたり、ベンジンでしみを取りながら、Yシャツにもアイロンの糊を吹きかけ、ピシッと、それは綺麗にかけていた。そのアイロン特有の糊が固まる時の匂いなのか、思い出の匂いでもある。
さらに母はその昔、着物が仕立てられる前の、反物に刺繍をする仕事をしていた時があった。たくさんの色の糸を選びながら、花びらの模様一枚一枚に刺繍を施して行く。学校から帰ると、母が刺繍をしていて、布に針が通る「ぽつん、ぽつん」という音を聴きながら、それを見ているのが面白かった。
縫い終わると、その裏の面に糊を付け、アイロンをかけて仕上げる。その時のアイロンは、通常のアイロンよりも小さいサイズのアイロンで、糊も図画工作なんかで使う、白いヤマト糊。これがまたいつもと違う匂いがした。アイロンをかけた後の刺繍は、ピシッと引き締まって、その出来上がりは見事だった。
そんなアツミ母であるから、アイロンは達人だ。その娘だというのに、、、、どうも上手くない。アツミが今使っているアイロンは、母が「女の子なんだから、一人暮らしでもアイロンは持っていないと。」と、上京する時に買ってくれた物である。大事にしよう。
今日はアツミのちょっと良い話。うふっ。