ところにより霊的解釈

映画の感想です。

群青の夜の羽毛布

2020-06-20 18:00:00 | 日記
小説をだいぶ以前から何度も
読んでいたので、
映画化していたのを知った時は、
小躍り。

主人公(さとる)のお家の照明が暗すぎる。
ふふふ…
好きな空気感。

小説では、もう少し鉄男さんと自然に距離が縮まるのだけど、
映画では微妙。

あんな、急な誘いをスーパーの店員さんから受けたら、
普通の女の人は引く。


しかも、介抱のお礼が手作りのお弁当って
他人の手作り。
食べられない人は
食べられんよ。
さとるから、鉄男へ渡すのだけど。

さとるは、料理上手。
鉄男は既に恋してる状態。

ここで、さとるの人との距離の取りかたが
ちょっと変だとわかる。
好意、善意なのだけど
押しつけがましく、必死。

実は、鉄男が入れ込んでるんじゃなく
さとるが、外の世界の他者に
助けを求めている。

家庭の破綻
教育の失敗

虐待、連鎖

精神の病

というものが、徐々に表れてくる。

このくらいの、闇って
わりと、その辺の家に自然に存在してる。

かなり酷めに見えるけど、
こうしたケースは多いと思う。

ただ、ギリギリで何とか日々を生きているだけ。みんなが。

一般的には、「メンヘラ」とされる女性に、まともな男は寄りつかない。
なんとなくヤバい、と感じたら
遊びはするけど、付き合わない。
結婚なんか、絶対にしない。

付き合う人は、すごく優しいか
自分自身の育った家庭に、何かがあった人。
また、その両方。

結婚するのなら、尚更。
よほど、その女性に惚れ込んでいるか、
お人好しの三乗くらいか、
自身の闇を、女性の闇で緩和させたいか、
どれかだ。

鉄男がそうだったように、
母親がベタ甘で依存的だったり、 

どこかに影を持つ女性へ惹かれる男性
って、確かにいる。すごく少ないけど。

俺が守らなきゃ!の意識が、
何だか強い人。
正義感やら、何やらが。

女性はそれ程、弱くもないのだけれど。

さとるは、自分の手で
家族と決着しようとした。
本当は、強い。
やりかたが間違ってるけど。

家族を殺して、家を焼いたら
解決するわけじゃない。
働いて、母と訣別すれば良かったの。
時間がかかっても。

どんなに、育った環境が酷くても
それを言い訳に、自立しなくて良いなんて
ことは、ない。

まして、男性に頼って生きるなんて
厚かましすぎる。
もし、その方法で生きたいのなら
その男性に何をされても、付き従う構えでないと。

依存ではなく、
お互いに、助け合って支え合って、
同じくらいの愛や働きを、分かち合う。
それが正しい姿。

好きなだけじゃ、駄目だと思う。
好きなだけじゃ、現実を生きてはいけない。








ドラッグ・ガーデン

2020-06-15 22:15:00 | 日記
広田レオナさんの作品。

病んでいる時期に、観た。

なんで病んでる時にわざわざ?
って思うけど、映像で目にすることで
自分の体験も大したことない、
このくらいでしかない、
と客観視したり、軽く片付けたり
したかったのかも。

…でも、それは、逆効果だったり。

内容はポップなんだけど、痛々しい。

抗精神薬と麻薬は似たようなもんだと、
かなり先駆けて伝えていたのだな
と思う。

この作品内で、妊娠したから
処方薬を止めなきゃならなくなった
彼女と、
同じような経験をすることになった。

本当に、ああなるんだなあ、というのが
感想。
でももっと、酷かったけれど。

現実と虚構の交錯、とパッケージに
コピーがあった。
実際は、かなり真実の内容だと思った。
特に、彼女の過去の追想。

性被害の描写は、つらくて
息が詰まる。息がしにくくなる。

過去に怖いことがあった女性は、
信頼できるパートナーが
一緒にいる状況でしか、
観ないほうが良いかも。
または、観ないようにその時は、
目や耳を隠したら良いかも。

または、安定剤を用意して観るか。

ドラッグガーデンに
ドラッグ(安定剤)を持って立ち入る。
…って感じ。





式日

2020-06-15 21:55:00 | 日記
考えるより、感じる映画。

自殺願望、自傷行為、
精神疾患、アダルトチルドレン…
などの用語に反応してしまう人は、
好きだと思う。

切ないし、もの哀しいし、寂しいし、
わけがわからない。
観た後にも、スッキリするとかじゃない。

どういうストーリーなのか、も
別に考えなくて良い。
感じたら、いい。

映像は美しく、目が毒々しい彩りに
やられてしまう感じ。

一回、本気で死のうとした人、
死にたくなった人、
それでも生きたい人、
生と死を想っている人は
観るべき。

映画も縁だな…
と、つくづく思う。




ニキータ

2020-06-10 18:25:50 | 日記
レオンに並ぶ、リュック・ベッソンの名作。

警官を殺害した非行少女が、国の隠密
(暗殺者)に教育されて、暗躍する話。

内容は血なまぐさいのだけど、
ある意味でジブリの『魔女の宅急便』
のように、女性が一人立ちする様子が
描かれていたりもする。

恋愛要素もあるけれど。

ニキータは、最初から不安定な性質。
薬物中毒のせいではなくて。
癇癪持ち。

ニキータが、序盤のシーンで
薬を打たれる時に、お母さんを呼ぶのが
とても、悲しい。

すぐ泣いたり怒ったりで、
暗殺者に向かない気もするけど、
動物的な勘は優れていて、身体能力が
高かったり。

こういう職務の人って、表に出ないだけで
実際にいるのだろうけれど、
普通の感覚ではやってけないと思う。

普通の社会で生きられないような、
絶妙なアンバランスさを持ち合わせた人が、導かれて仕事に就いているように
思う。

ニキータの訓練風景が、楽しかったりする。
同じ境遇を越えて来た、おばあさんも
指南役で出てくる。


ニキータの上司(教官)のボブに対しての
ニキータの気持ちって、恋愛というより
親愛な気がする。
ニキータは、その辺りの区別を
つけていない。

ボブにとっては、恋愛。
でも、仕事上、ニキータを
どうこうすべきじゃないから
抑制している。

卒業する時に、ボブに心を籠めたキスをするニキータ。
狼狽するボブ…。

この組織、恋愛には寛容らしく
外に出た途端、ニキータは恋人を作る。

うーむ。
私が長官(司令官?)なら、AKBばりに恋愛禁止にしておくが。
風紀が乱れますからね。

つっても、人は恋愛する生き物なので
禁じても無駄、という最初から合理的
な考えなのかもな。

人権もクソもない組織のはずが、
恋愛は可。
あのハゲチャビンの長官は、実は
恋愛体質だったりして。

恋人のマルコに仕事を隠しながら、
つらい生きかたを強いられるニキータ。

彼女は、純真だから
マルコに嘘をつきながら生きていく未來が
見えなくなっていったように思う。

マルコが彼女の仕事に気付いてしまい、
マルコを守る為に
逃亡をする

のだけど、それだけではなく、
ちょうど、仕事の嫌な面
(人を殺すことの残虐さ)
に対峙することになったので、

ニキータはちょうど、
仕事を出来なくなる時、
限界だったのだと思う。


最後に、マルコとボブが
語り合うシーンで終わる。

二人の男性の心の中に、ニキータは
ずっと留まるけれど

孤独な生涯を
送ったのだろうと感じる。

ボブも孤独だし、
マルコも孤独。

フランスの映画の終わりかたは、
日本の映画に似て
フワッとしていて、好き。

叙情やりっぱなし、放置
みたいな感じが好き。







リップヴァンウィンクルの花嫁

2020-06-08 18:18:00 | 日記
ひとことで表すと、
『虚構の中の真実』
のお話。

主人公の七海の、最初の結婚のエピソードは観ていて退屈なのだけど、
それが中盤から生きてくる。

胡散くさい仕事の安室が
七海を随所で助けるのだけど、
この人は本来、純粋に生きたい想いが
強い気がする。

嘘で塗り固めた仕事で、成功している。
けれど、真ん中は虚無。

七海を花嫁にした真白は、
純粋そのもの。
この真白に、恋愛というよりは憧憬、尊敬
の念を抱いているのが安室。

彼が、真白を弔うシーンで泣き崩れる。
何とも言えない、感情の爆発の仕方。
彼の生きかた、そのものに対しての
哀愁にも見える。

でも、彼はこの生きかたしか出来ない。
真白とは対照的。
真白の近くにいたかったのだろうな、
と。
話をするだけで、
心が洗われていたりしたんだろうな。

真白のお母さん役の女優さんが、
あまりにも自然で
自然な、自然な悲しみを表す。
このシーンは、この女優さんがいないと
成立しなかったはず。

主人公の七海も、純心なのだけど
意志、意思がない。
それを獲得するまでの、話。

人が本当の意味で、自立と自活を
していくまでの話。

真白が、コンビニで買い物をしたら
店員さんが袋詰めしてくれることの、
有り難みを
七海に話すシーンがある。

これは、真白役のCoccoさんの
感じていることだな…
と思った。

Coccoさん、映画内で唯一、
『演技をしてない人』。
演技が出来ない人でもある。
それが、このかたの持ち味で、特性で、
神様に演技をしてはならない
と言われてる人だとも思う。