こんにちは、長浜奈津子です🌸
本八幡、というと… お多幸、というおでん屋さんが懐かしい。
先代からの味をつなぐ、若女将。おでんの箱鍋と、小さな賄い場をぐるりと囲むカウンターには、地元の常連さんが心地よく居座る。各々、紅皿に品よくのせられた好みのおでんをつまみながら、酒を呑み静かに話している。もちろん、新しく暖簾をくぐるひとも…。
<本八幡・お多幸>
こちらは、私の好きな、おでん屋さんです。
夏でも涼しくクーラーをきかせた店内で、おでんを頂きます。
昔、あやちゃんという市川のお友達と、よくいきました。
老舗おでん屋さんの「銀座 お多幸」で厳しい修行したご主人が、暖簾分けで本八幡に出したお店です。
そのご主人のことを「マスター」と呼んでいましたが、マスターは若くして…残念ながら、早逝してしまいました。そして今は、娘さんが店主を引き継いで、弟さんと美味しく暖簾を守っています。
ある日、マスターと奥様へお花を持って、お多幸へゆきました。
<みはからい>
これが、「みはからい」です。
店主が、その日に "見計らって" 出してくださる一皿です。
お多幸のおでんは、お箸で食べやすく切ってあり、赤いお皿にきれいに盛り付けしてあります。
ちくわ、はんぺん、糸蒟蒻、つぶ貝、たまご、大根、筍(姫竹!)、椎茸、里芋など、どれも美味しい。
お多幸、独特の濃い味付けで、いわゆる薄い出汁味、とは違います。
<とう飯>
これが「とう飯」です。
茶粥に、お豆腐がのっていて、匙で頂きます。
初めてみたときは、ご飯にお豆腐がのっている見た目と、この色に驚いて、本当に美味しいのかなあ…とおそるおそる食べたのですが、茶粥の香ばしさ、お豆腐の美味しさですっかり好きになりました。
<マスターの想い出>
小柄なマスターは、髪型も姿勢もピシッとしていて、それでいて笑顔がやわらかい。なかなかの二枚目です。
奥様も今はお出になられませんが、きりっと目元の涼しく、とても綺麗な方です。娘さんは、その面影を思わせます。息子さんも優しい方です。
マスターとの思い出はいろいろあるのですが、その中からひとつだけ。
食事を終えてお店を出ると、マスターは必ず、仕事の手を止めて外まで出てきてくれました。
少しのお喋りをして下さり、「ありがとうございました」という言葉で、気持ちよく送り出してくれるのです。
お多幸にゆくと、いつもその日の終わりが、爽やかで良い一日になりました。
この日、店主の娘さんが、あの頃のマスターのように 外に出てきてくれました。嬉しかった。
「みはからい」「とうめし」の懐かしい味は、彼女が引き継ぎ… 心がじんわり、目頭が熱くなりました。
お客様商売なので、いつでも誰にでも必ず、というのは難しいと思います。
焼き物していたら火を離れることはできないでしょうし、
このブログをたまたま読んだ方が、どうか彼女のお見送りを求めないように、心からお願いします。
今日は、思い出話でした。
<第16回 市川荷風忌 (2024) 関連ブログ>
まもなく市川荷風忌です。
<10年の歩みをまとめたサイト>
これまで市川荷風忌を中心に取り組んできた永井荷風作品と、公演チラシを並べた、一枚のページです。(資料が残っていなくて、載せきれていない公演もあります)
市川市のアート事業「ICHIKAWA ART CITY」で公開された、「濹東綺譚」の動画もご覧になれます。ご覧頂けましたら幸いです。
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