増田カイロプラクティック【読書三昧】

増田カイロプラクティックセンターのスタッフ全員による読書三昧。
ダントツで院長増田裕DCの読書量が多いです…。

楽園

2008-12-09 18:23:19 | 桐井千恵
楽園〈上〉
宮部 みゆき
文藝春秋

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「模倣犯」で活躍したライター、前畑滋子が主人公の話。
9年前の事件のショックからなかなか立ち直れない滋子のもとに、ある女性から「事故死した私の息子は、もしかしたらサイコメトラーなのではないか。調べてもらえないだろうか」という依頼がある。
両親によって殺され、16年間家の床下に隠されていた少女の死体。
その事件が発覚する前に、12歳の男の子がそのことを絵に描いていたというのである。
その女性のもってきた「息子の絵」の何枚かをめくっていた滋子は愕然とする。
これは9年前の、あの事件の舞台となった絵ではないか…。

てな話。宮部さんのサイコものも大好きな私は、この話にぐいぐいと引き込まれ、上・下ともあっというまに読んでしまった。
この話で扱う事件は「模倣犯事件」とは別のもの。
なぜこの事件は起こったのかを知りたい「殺された少女の妹」からも依頼を受け、次第に事件の全貌が明らかになっていく。

宮部さんの超能力ものを読むときには、いつもその能力者の孤独が描かれている。
人と違うことをひた隠しにしなければならない人、また発火能力という力の故に友達も作れずに孤独に耐える女性、サイコメトラーという能力故に事件を知ってしまうが、誰にも信じてもらえない少年、などなど…。
この話に出てくる少年は学校で先生から「変わり者」「ぼうっとしている」「勉強ができない」などと責められる。
母親は先生にはいつも謝ってばかりではあったが、息子に対しては本当に温かい愛情を注いでいる。そこが微笑ましくて、心のどこかがポッと温かくなる。

しかし、両親によって殺害された少女の事件を解いていくとき、そこには悲しみしかない。えぐられるような悲しみだ。

読み終えて、やはり実際のさまざまな事件を思う。
快楽殺人にはどうしたって怒りを覚えるが、この悲しい殺人というものがどれほど世の中に溢れているか。
でも、やはり人を殺さなくてはならない理由なんかないのだ。
罪を犯した人はどんな理由があろうとも、その事実が足かせとなり、自分を常に責めるものとなるのだろうと思う。やはり…悲しいことなのだ。
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