パートが部長と直接話すのはあまり無い。
間に原さんを入れたり、係長を挟むからだ。
だから佐野さんの希望は原さんにブロックされていたのだが。
私は直接いこうと思った。
佐野さんの仕事を引き継ぎたいですと切り出した。
すると部長は前のめりになり、どうぞどうぞって感じで、あれ?と思った。
私が恐る恐る「もしかして正社員の方向もあるんですかね?」と聞いてみた。
「え?正社員なれるの?じゃあ是非ともなって!
今から、給料計算するよ」
「あ~、でもダンナに確認しないと」
しかし、聞く耳持たず部屋から出ていった。
私は思い出した。
原さんから、随分前に「あなたは子供が小さいから正社員は無理よね?」と、聞かれたことがあった。
あれが、確認だったんだ。
そう聞かれれば、当時佐野さんがなりたがっていたから、「ああ、そうですね。」と答えていた。
部長が戻り、「この位だけど」と給料を提示してきた。
私にしたら充分だ。
長男中二、次男小5。
まあ、なんとかなるし。
原さんから聞かれた時はまだ二人共小学生だった頃。
さあ、正社員になる事になり社長と常務の二次面接もすることに決まってしまった。
佐野さんは、もう気にもせず頑張ってと言ってくれた。
原さんは顔面蒼白。
そして瀬川さんもだ。
実は一年前、瀬川さんは何故か自分からの申し出でパートになっていたのだ。
息子の事で悩んでいるとき、何度も原さんから、「パートになって息子としっかり向き合わなきゃ駄目だと」何度か彼女に言っていた。
パートになる必要あるか?と思った。
「いつでも正社員に戻ればいいじゃない。」とも言っていた。
時期も中3で、高校受験がある一年だけパートになろうと思ったのかもしれない。
それを真に受けて、パートになったような私は思えた。
何故なら、おか〜さんと甘えていた瀬川さんが、最近原さんと話をしてないなと、思っていた。
そして、瀬川さんはまた正社員に戻してほしいとこの時期言っていたのらしいのだ。
当然、会社からは簡単に戻すわけもなく、退職金も払ってるらしいし。
私はそんな話は知らなかった。
私が正社員になる事は、彼女にとって奈落に落とされる程のショックを受けたみたいだ。
逆に、私に噛みつくことは無く、あのイケイケ感や毒気がなくなっていた。
そして私に話しかけてきた。
「社員になるの?」
「うん、なんか急に話が進んで」
「部長に正社員に戻してくれなきゃ辞めるって言ったら、いつ辞めるの?早く辞表出してって。まだ次も決まって無いのに、本当に嫌な人だよ!」
「、、、そうなんだ」
「再婚したけど、財布は別だし中古で家も買ったばかりなの」
「えーそうなんだ、おめでとう」
しかし、この再婚も原さんは知らなった。