何日も雨が続いたあと、いきなり夏の陽射しが地面を照らすと、「もあー」
っとした暑い大気が辺り一面に漂ってくる。そんな日の夕方、森の中から「カラカラカラカラ」という鳴き声が聞こえてくる。オオヒキガエルの喜びの歌だ。
ベランダから森を見ると、一面から、フワフワと煙のように湧いてくるものがある。
生命の爆発、シロアリのニンフ、羽アリの乱交パーティーが始まる。
沖縄、九州が梅雨入り宣言をすると小笠原は、いよいよ本格的な夏のシーズンが始まる。
何度か生命の爆発を体験したあと、7月に入れば蒸し暑さから心地よい乾いた暑さへと変化していく。
7月21日小笠原神社の例大祭の出し物、アウトリガーカヌーレースの日が今年も近付いてきた。小笠原は、日本でただ一箇所ポリネシア文化が伝わった場所、アウトリガーカヌーもハワイから伝わってきたものだ。アウトリガーカヌーとはアマというフロートを自転車の補助輪のように繋げた船のことで、太平洋の多くのエリアで使われていた乗り物だ。この船と伝統航海術の進歩によりポリネシア人は見えない島を見つけることができたのだと私は思っている。だから、ハワイのフラもイースター島のモアイ像もこの船がなければこの地球上に存在しなかったかもしれない。
今年で14回目になるこのレースにアウトリガーカヌー部門を5年前に作ってからウナギ登りに参加者が増え今年は選手だけで300名を超える勢いとなっている。
人口2000人の島では脅威的な数字といえる。
7月に入ってPカンべた凪の日が続く扇浦に朝の5時から、なんと100人近い人たちが集まり21日のレースに向けてアウトリガーカヌーの練習をしている。
いよいよ小笠原発見人力レースの当日がやってきた。
65チームが予選タイムを計測し、男子混合部門上位8チームと女子上位4チームが決勝トーナメントに進む。
4人の漕ぎ手にもそれぞれ役割があり、一番前に乗る人が全体の漕ぐペースを決めて漕ぐ、二番手は、一番手の反対側を漕ぐ、三番手は一番手と同じ側を漕ぎチームの状態を見て左右をチェンジする掛け声をかける、ある意味ムードメーカーという存在。もちろん2番3番手は推進力としてのパワーも必要となってくる。そしてしんがり4番手はステアマンとしてカヌーの舵を取る。ただ四番手が舵とりだけをしていたのでは、レースに勝てない。できるかぎり舵とりの時間を少なくして推進力として漕がなければならない。もちろん4人のリズムをあわせることがカヌーのスピードを上げる一番の要因だろう。
今年は特に小学生のチームが6チームも出場し、大会を盛り上げてくれた。そして決勝トーナメントも接戦が続き熱い戦いを繰り広げてくれた。
島という限られた世界で永続的に生きていくには、心の問題が大きいと思う。閉鎖された島から出ていけないと思うと島の社会が元気をなくす。
自分たちの島のもので自分たちの技術で、船を造り、別の島へ渡れる力を持ち続けること、化石燃料がなくとも外洋に出て魚を捕ってくること、それが島で永続して生きていく上で重要なことだと思う。
このアウトリガーカヌーはこの島の文化のなかでまさに大きな役割を担っている乗り物だ。なぜなら島の社会を別の世界へ繋げ人と人を繋げる道具だから。
この島の木でカヌーを作りたい男より
朝5時ウミガメの足跡が残るビーチで練習開始!!
小学生のチームがなんと6チーム
大会当日、準備万端
1番手はビーチにあるフラッグを取る役目
4人の力を合わせてスタート
勝利の美酒 レディース優勝「ボブマーリーの嫁」