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上映前、日本国憲法が読み上げられている。ジャン・ユンカーマン監督が「日本国憲法」と言う作品を撮っているからだ(同時上映だが、時間の都合上私は観れない)。
冒頭に各メディアの批評が現れるので、まだ予告編かと思いきや、すでに作品は始まっている。忌野清志郎の歌が挿入され、アメリカ映画にも関わらず日本独自の編集がされているようだ。
ひたすらチョムスキー氏の講演、支援者からの質問、作品独自のインタビュー。ドキュメンタリーと言うより報道映画と言うべきかもしれない。
私がチョムスキーに興味があるのは、必ずしも彼の発言に共感しているからではない(国際社会の預言者的ポジションの学者ではむしろアントニオネグリやエドワードサイードや柄谷行人の支持者だ)。そうではなく、彼の本職が言語学者であること(もちろん私も学生時代に彼の著書を何冊か読んでいる)、他の政治学者に比べて頭抜けて著作数が多く、驚異的な発言力に嫌でも無視できない存在だからである。そんなパワフルな人物ゆえ、数々の悲劇的な歴史的事象についても、冷静で楽観的な発言をする。
先ほど述べた通り、彼は言語学学者である。インタビューでもわずかではあるがそのことに触れており、言語学に人間の能力と言うものが端的に現れていて、そこに興味を惹かれる、と言うのは全くもって首肯する。
映画全体を見ても、楽観的と言うか、希望が持てる内容になっている。確かにアメリカと言う国は第二次世界大戦から現在の北朝鮮問題に至るまで、ずっと国際紛争に絡んでいる戦争好きな国で、そのくせ本土への戦禍は絶対に許さないと言う悪どい国である。しかし、だからこそ民衆の反戦運動の蓄積は他のどの近代国家よりも長くまた深い。そうしたアメリカの良心そのものがこの映画には凝縮されている。アメリカにはトランプの反移民政策を憲法違反として退けることのできる司法があるし、レディガガのようなセレブがメディアの目をはばかることなく政治的アクションを起こす国である。そうした人々とのネットワークが、危機的状況を乗り越えるための唯一にして最大の手段であることが分かる。