検閲の関係上、体制を真正面から批判した作品はほぼないし、だからと言って、知らない資本主義社会への憧れだけで書かれることもない。むしろ、厳しい時代ならではの深い人間考察は、商業主義に染まった西側社会の作品よりも興味深いものが少なくない。
最近ネタにしている生命倫理の話も、実はこれらのソ連文学にインスパイアされている。
先ず取り上げるのは「復活思想」と言うもの、つまり、共産主義体制下で禁じられていた東方正教会の思想である。
西側世界でほぼ忘れ去られている善の概念。競争の少ない共産主義社会ですらも宗教が禁止され、失われつつある自己犠牲(寛容)の心を究極まで煮詰めたような、廡宗教の時代に生きる我々にとっては心がヒリヒリするような強い信仰心で生きる道を選ぶ姿。
次に「生命の平等性」。人間や愛玩動物だけに限らず、全ての生命に喜怒哀楽の感情がある、と言う考え方。子ども向けのおとぎ話としてではなく、大人向けの物語として動物、植物の感情を、行動などの描写で地道に積み上げていく作品であり、過剰な出来事よりも日常の中での感情表現が重視される。
そこにはシーシェパードのような過激な動物愛護とは大きく異なる、ひたすら動物や植物に寄り添って感情を記述していく、奥の深い慈悲の気持ちが物語の中心にある。
寒い国ロシアに住む人々は、決して自然や神にあがなうようなことはしない。努めて穏やかに、厳しい自然と共存することをよしとする。文明国の、自然をコントロールできることが当たり前になっている西側の人間が、世界とはそんなものでは決してないことを愚直なまでに魂に刻み込んでいる。思想の自由の中で進歩的たらんとする裕福な人間の思想ではなく、貧しくつましい生活の中に動物の声、植物のささやきを聞き取る、まさに自然思想が揺るぎない説得力をもって語られるのである。
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