その朝、宮中におかしな急報が駆け巡った。
「莒姫(キョキ)が先王にお伺いを立てに行った!」
莒姫宮には威后(イゴウ)を始め懐(カイ)王、忠臣たちが集まっていた。
すでにこと切れた莒姫の横では侍女・葵姑(キコ)が悲しみに暮れている。
すると侍女・玳瑁(タイマイ)が莒姫が首を吊った白絹に文字があることに気づいた。
「私めが先王に問う ミーユエ 王朝を照らす月 DVD
芈月(ビゲツ)と芈戎(ビジュウ)に会いたいか?否か?」
その時、まるで問いに答えるようにピキピキッと音が鳴る。
それは火炉の中で焼かれている大きな殻だった。
懐王や忠臣たちがのぞいてみると、殻に「否」という文字が浮かび上がって来る。
屈原(クツゲン)は莒姫の意図に気づき、先王の返事だと言ってひざまずいた。
懐王や忠臣たちも一斉に拝跪すると、さすがの威后も卜辞(ボクジ)※の結果では受け入れざりを得なくなってしまう。
莒姫は芈月と芈戎に遺書を残していた。
「月兒、戎兒
私は先王に会いに逝きます
どうか悲しまないで ダイヤモンドの恋人 DVD
威后の言う通り、あなたたち2人を失えば私は希望を失くし
拷問のような日々を生きて行くことになったでしょう
ひとつだけどうしても伝えておきたいことがあります
初めはあなたたち姐弟が敵対する威后への切り札になると考えたけれど
結局、私はあなたたち2人を自分の子供として受け入れていました」
芈月と芈戎は九死に一生を得た。
しかし威后は2人に先王の墓守りを命じ、葵姑と共に陵墓へ追いやってしまう。
葵姑は王宮を去る前、芈月を連れて莒姫の唯一の親族が住む民家を訪ねた。
実は数日前、莒姫が魏冉(ギゼン)を預けに来たという。
芈月は鄭(テイ)伯父さんに抱かれた赤子の顔を見ると、必ず自分が守ってみせると約束した。
そんな中、いつも芈月を目の敵にしていた公主・芈茵(ビイン)の母が亡くなっていた。
斉妃は楚に大敗した斉の公主だったため、面目を守って川に身を投げたという。
後ろ盾を失くした芈茵だったが威后は華やかな公主を気に入り、自分の側に置いて娘・芈姝(ビシュ)の学友にすると決めた。ミーユエ王朝を照らす月 DVD
陵墓は人里離れた小高い山の上にあり、住まいも小さな荒ら屋だけだった。
それでも芈月は芈戎と葵姑と3人、初めて穏やかな時間を過ごす。
自ら家事をこなし、葵姑から蕭を習ったり、度々、訪ねてくる医女・挚(シ)から医術も学んだ。
また屈原は芈月と芈戎が学問を続けられるよう、定期的に黄歇(コウアツ)に書物を届けさせてくれる。
やがてお転婆な芈月も初潮を迎える年頃になった。
月「私は何かの病気なの?」
姑「いいえ、女人になったよ(ふふ」
月「嫌よ!私は男になりたいの!」
姑「女人のどこがいけないの?」 那年花開月正圓 DVD
月「女人は後宮にたくさんいたけれど
母や嬪妃たちは父が来るのをただじっと待っているだけだった」
姑「でもこれは少司命(ショウシメイ/人間の寿命をつかさどる天神)が決めたことなのよ」
涙に暗れる芈月、しかしこればかりは現実を受け入れるしかなかった。