集中治療関連論文の個人的メモ

論文をすぐに取り出せるようにメモ

OHCAに対する脳波所見と検査タイミング

2021-11-18 23:25:33 | 日記

Critical Care 韓国のデータベースからの報告
https://pubmend.ncbi.nlm.nih.gov/34789304/

2014年にwestら(PMID:25267568)がROSC後の患者の脳波パターンを
・highly malignant:suppressed with/without discharge, BS
・malignant:それ以外
・benign:正常
の三つに分類した

今回は、韓国のデータベースを分析することにより、上記の脳波の分類と神経予後の関係性を、脳波タイミングごとに予後判定したというもの。highly malignantは高い特異度で神経予後不良を見抜く。malignant patternはdelta波を伴うことでやはり同様に神経予後不良を見抜く。という結果で、上記はEEGのタイミングにかかわらず一定。

ESICM2021やJRC2020によると、BSやSEは神経予後不良の判定に使用できるものの、後の所見はまぁまぁな予測能という程度。今回は背景脳波とデルタを組み合わせた所見でも高い予測能があったというところが新しい。


抜管失敗予測

2021-11-17 20:44:43 | 日記

critical careから

抜管失敗予測のシステマティックレビュー&メタアナリシス

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34782003/

 

67件の研究、26,847人が組み入れられた。

抜管失敗と有意に関連していたのは、年齢、心疾患歴、呼吸器疾患歴、Simplified Acute Physiologic Score IIスコア、肺炎、機械的換気期間、心拍数、Rapid Shallow Breathing Index、負の吸気力、PaO2/FiO2比の低下、ヘモグロビン値の低下、抜管前のグラスゴー・コーマ・スケールの低下の12因子

 

先日、RSBIのRCTがでて「そもそもまだなかったんだ」と驚きましたが、RSBIの有能さがわかります。ただ、一回換気量だけでもいいかもしれませんが。咳嗽のピークフローもodds ratioが相当高い。

 

あとは年齢やsaps2など患者の重症度が当然失敗率は高くなるでしょうが、「だから抜管しない」とはしないでしょうし、「通常の閾値をやや厳しくする」かというと、それも難しい判断です。

b,cは感度分析です。


ECMO+PP

2021-10-23 13:49:14 | 日記

簡潔に言うと、エクモppのメタがネガティブだったけど、色々問題があるよね?ってレターです。まずはもとのメタアナリシスをご確認ください。

エクモ+ppの11研究のメタ
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34384475/

この研究、"PP群の累積生存率は57%である"、と単独の結果だけ記述的にアブストに載せてますが、死亡率は有意差なしだったようです。また、ICU滞在はpp群で長く(+14.5日、95%CI 3.4~25.7、p=0.01)、ECMO期間も長かったようです。(+9.6日、95%CI 5.5~13.7、p<0.0001)その他、酸素化などのサロゲートマーカーは一部で良かったものの、エクモ+ppを肯定する結果とは言い難い結果でした。しかし、ご察しの通りエクモ+ppのRCTはfeasibilityの観点からハードルが高く、このメタは観察研究のものです。

で、次にこの論文に対するレターです。
https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13054-021-03760-w

筆者らの主張は2点にまとめられます。①メタに含まれる11研究のうち、garcia2020の研究だけForestPlotが浮いてることを指摘しています。"感度分析"でそれを除したところ(添付したfig)RR 1.28, 95% CI 1.08-1.52で死亡率が有意に下がることを述べています。実はgarciaの報告は対照群よりpp群のが重症で、selection biasが大きい研究なんです。感度分析、そして観察研究におけるbias評価の重要性がが改めてわかります。②メタアナリシスでは異質性が低いことが重要なのに、この研究では未調整の研究とPSMと多変量解析をごちゃまぜにしてしまっていることを指摘されてます。

次に、このレターに対するauthorの返答も見てみます。①には「一応著者らも感度分析はしてる。確かに提案した感度分析は結果を覆すものだが予定にこの方法は入ってなかった。」②は「たしかにその通り。指摘のとおりに、もう一度表作ったら↓のようになった」、ということでした。個人的にこのやり取り非常に感動しました。私、slackに上げてる論文はアブストに目を通しただけ、というものが多く、本文に目を通したものはその一部です。しかし、その読み方だとアブストのconclusionはあたかもそのとおりに見えてしまい、批判的論文吟味はできません。「アブスト流し読みするくらいならレターに目を通したほうが百倍勉強になる」と感じたので共有でした。


NHFによる嚥下機能のクロスーバー研究

2021-10-23 13:48:29 | 日記

https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13054-021-03786-0今度はHFNCが誤嚥を減らす、という内容です。結果はさておき、この試験のデザインはクロスオーバーRCTといいます。クロスオーバーは①暴露⇒対照②対象⇒暴露、というように両者への介入を前半後半で交代するやり方です。ちゃんとランダムに2群に分けられていれば症例数が半分で済むお得な臨床試験です。
そしてこの試験では効果を"period effect, drug effect, crossover effect"に分解して評価します。聞いてると難しいように思いますが、やってることはそこまで複雑ではなく、一回習えば覚えるはずです。ただし、今回はcrossover effectを考慮したやり方ではなさそうです。(そりゃNHFですもんね)