2072年まで露への入国を禁ずる措置-1
ウクライナの有名人の多くは露でも芸能活動をし、稼いでいる。露がウクライナに侵攻を開始して以降、膨大な数のウクライナの有名人が戦争に反対し、中には非常に厳しい態度で非難した有名人もいた。
これを受け露政府は、今後50年間つまり2072年までウクライナの芸術家ら31人に対し露の領土に入ることを禁止するとし、そのリストがイズベスチャ紙に4月20日に公開された。その31人とは。
スヴェトラーナ・ロボダ(Светлана Лобода)
キエフ州出身。セクシートリオ「ヴィアグラ」の元ソリストで、ソロ転向後、そのパワフルなセクシーさを持ち味とした楽曲「Не Ма4о!」がスーパーヒット。その後EUROVISION2009にウクライナ代表で出場、12位を獲得。慈善活動に精力的で様々な慈善基金を立ち上げたが、あまりにも妖艶で極端なため問題視されもした。2014年のロシア侵攻時は、露で活発にコンサート活動を続け、露のテレビ局に出演した。さらに、露内外で開催された露の富裕層のためのプライベートパーティーに参加したため、ウクライナ政府より「好ましからぬアーティスト」と指名された。
しかし軍事侵攻5日目に、紛争終結を求めるビデオを公開。3月6日に露メディアグループの代表は、「露とウクライナの関係の悪化を背景に、舞台でロシアとロシア人の同僚に厳しい発言をした。」と発表し、契約終了に追い込まれた。彼女の歌とMVは、露の音楽テレビ局「RU.TV」とラジオ局「Русское радио」から削除され、更に露での公演が禁止される芸術家リストに追加された。彼女はマルタの国籍も有するが、現在はラトビアに避難し、ウクライナ難民を支援している。
公式YOUTUBE https://www.youtube.com/channel/UCiU8w7NabK3xFgjxmHovjCg
▼Не ма4о! (マッチョじゃない!)
▼Be My Valentine! (EUROVISION2009のウクライナ代表曲)
ニコライ・ボルトニク(Николай Бортник)
へルソン市出身で、マックス・バルスキフ(Макс Барских)という芸名で活動。露では2016年にリリースした「Туманы」が大ヒット。その後もヒットに恵まれ、2021年にリリースしたズィヴェルトとのデュエット「BESTSELLER」は長い間TOP10内をキープしていたことは、本機関紙でも紹介した。
しかし軍事侵攻により露での公演全てを取り止め。販売済みのチケットの払い戻しを拒否し、その資金は「慈善目的」に向けられると説明。更に露国内での自分の音楽の使用を禁止。彼は「Во что претворилась Россия?(ロシアは何をしでかしたか?)」と題したビデオの中で、次のように皮肉なメッセージを残している。「僕は、世界中にいるロシア国民を見たくない。君達はいつも欧米に車で行くけど、君達自身はヨーロッパとアメリカの会社を犠牲にして快適に暮らしている。だから、君達が世界からどれほどゆっくりと切り離されていくか、見ていなよ。君達は君達自身の小さな真空の中で生きるだろう。誰もロシアなんて必要としない。」4月初めに「Буде весна」公開し、ウクライナ軍への入隊を発表。4月29日に露の侵略に抗うウクライナを讃える曲「Don’t F@ck With Ukraine」をYOUTUBE上に公開した。
公式YOUTUBE https://www.youtube.com/channel/UCSZP_I8E-_pRFVm90S0Zy6Q
▼Bestseller (ベストセラー)
▼Буде весна (春であれ)
▼Don't F@ck With Ukraine(ウクライナとフ@ックするな)
エヴゲニー・ミルコフスキィ(Евгений Мильковский)
ドネツク州ポクロフスク市出身。2010年に結成されたロックグループ「ネルヴィ(Нервы)」の創設者兼Vo。「Батареи」「Нервы」「Кофе – мой друг」など数々のヒット曲がある。
しかし軍事侵攻後3月9日に露での活動を無期限停止、全てのコンサートを取り止め、コーヒーショップ「Кофе – мой друг」も閉店した。戦争反対の立場をとっていたが彼のtwitterに、FAN数名が攻撃的で卑猥なコメントを寄せたため、これに反応。3月末にポーランドのワルシャワでT-FESTやFACEらとチャリティー合同ライブを敢行した。
公式YOUTUBE https://www.youtube.com/channel/UC1bb2kw4IZwbUNHC1LeG4Zg
▼Кофе мой друг (コーヒーは僕の友達)
▼Благотворительный концерт в Польше в поддержку Украины (27.03.2022) (ウクライナチャリティコンサートinポーランド)
ニキータ・アレクセーエフ(Никита Алексеев)
キーフ市出身。優しく透明感のある声で歌った「Пьяное солнце(泥酔の太陽)」が2015年にリリースされスーパーヒットした。また2018年にはEUROVISION-2018にベラルーシ代表とし出場し準決勝戦で「Forever」を歌ったが、他の出場者からアレクセーフの歌はEUROVISIO規約違反であるとの訴えがあり、大会側は違反無しと認めたが、アレクセーエフ側は決勝戦に出場しなかった。
しかし軍事侵攻後、露のSNSやYOUTUBEなどに現地の状況などを紹介し侵攻を非難したり、反戦を唱えるビデオを公開した。
公式YOUTUBE https://www.youtube.com/channel/UC9pTzGcdh_na7FTXE2bRLHg
▼Пьяное солнце(泥酔の太陽)
▼СВІДОМО ЗАЛЕЖНИЙ - STOP WAR(良心に依存-戦争をやめて)
アラン・バドエフ(Алан Бадоев)
北オセチア共和国生まれ、ドネツク州ゴルロフスク市育ち。映画MV監督で、映画では「Оранжевая любовь」、テレビでは「Орёл и решка」「Хочу V ВИА Гру」などの監督で知られる。またMVではヴィアグラ、ローラク、ヴァレリア、そして同じく措置を受けたロボダやバルスキフ、アレクセーフらなど実に多くのアーティストらを手がけてきた。バルスキフのMVが最高額で総計300万米ドルの興行収入、またアレクセーエフのMVは無報酬で引き受けるなど話題性も多い。時に繊細で叙情的、またある時は躍動的で先駆的。いずれも細部に至るまで美しく作品の芸術性も非常に高いため、「現代音楽産業界の天才」と評価された。
しかし軍事侵攻後、プーチンの戦争の真実を伝えるYOUTUBEチャンネルに積極的に意見したり、政府側におもねるアーティストを非難した。
▼«Эта война уничтожит Россию»(この戦争はロシアを殲滅する) ※YOUTUBEチャンネル「人気の政治」より
▼ЗАКРОЙТЕ НЕБО НАД УКРАИНОЙ / Close the sky over(ウクライナ上空を塞いで)» ※YOUTUBEチャンネル「Орёл и решка」より
(敬称略)
2072年まで露への入国を禁ずる措置-2 に続く