2072年まで露への入国を禁ずる措置-2
ウクライナの有名人の多くは露でも芸能活動をし、稼いでいる。露がウクライナに侵攻を開始して以降、膨大な数のウクライナの有名人が戦争に反対し、中には非常に厳しい態度で非難した有名人もいた。
これを受け露政府は、今後50年間つまり2072年までウクライナの芸術家ら31人に対し露の領土に入ることを禁止するとし、そのリストがイズベスチャ紙に4月20日に公開された。その31人とは。
アンドレイ・ベドニャコフ(Андрей Бедняков)
ドネツク州ジュダノフ市(現在のマリウポリ市)出身。特に露TV局「ピャトニツッア」の番組に登場し、陽気で爽快なキャラで俳優や司会者に携わることが多かった。特に有名なのは人気旅番組「Орёл и решка(オリョール・イ・レシュカ)」の司会、それからトリップアドバイサーサイト「Trivago.ru」のイメージキャラクターだ。勿論祖国ウクライナでの出演も好評で、オーディションバラエティ番組「Х-Фактор」でもその実力を発揮した。
しかし軍事侵攻後の3月12日にYOUTUBEで、露がウクライナに侵攻した2014年以来ずっとロシア人のことを憎んでいること、それから故郷(マリウポリ市)にいる実母と10日以上も連絡が途絶えていること等を告白した。
▼Где я был 8 лет назад и почему я ненавижу русских(8年前僕はどこに居たか、そしてなぜ僕がロシア人を憎んでいるか)
※YOUTUBEチャンネル「ZYUNDEX」より
▼Россия напала на Украину(ロシアがウクライナを襲撃) ※YOUTUBEチャンネル「Орёл и решка」より
オレグ・ボンダルチュク(Олег Бондарчук)
フメルニツカヤ州ガラドック市出身。テレビやコンサートの舞台監督で、これまでにキルコーロフやローラク。プガチョワ、ロボダといった有名アーティストのコンサート、また有名オーディションバラエティ番組「Фабрика звёзд」「Фактор А」「Голос」なども手がけた。一方、アレクセーエフのプロデューサーとしても活動していた。
ところがウクライナ侵攻後、SNSでプーチンをヒトラーと比較し、ネオフューラー(ネオナチの総統)と呼んだ。露寄りの意見を持ち報復を渇望する人々に、第二次世界大戦の歴史を精読するように忠告し、ウクライナは独自の伝統、言語、文化を持つ主権国家であることを強調した。
スヴャトスラフ・ヴァカルチュク(Святослав Вакарчук)
ザカルパッチャ州ムカチェヴォ市出身。有名ロックバンド「オケアン・エリズィ(又はオケアンエルジー)」の創設者でありヴォーカル。日本でも紹介ページが存在し、コアなFANがいる。中でも「Суперсиметрія」「Модель」「Dolce Vita」はコアFANの中でも特に人気があり、1999年ぐらいから政治にも興味を持ち始め、元大統領クチマ氏やユシェンコ氏を活発に支援した。2007年には上院議会の早期選挙に当選、政治活動に積極的に関わった。2017年の大統領選では、立候補するのではないかと噂された。ウクライナ芸術功労賞、キーフ市名誉市民にも選ばれた。
しかし軍事侵攻開始してから頻繁に露SBSやYOUTUBEなどで反戦を唱え、署名活動も促した。そしてマリウポリを想う歌「Місто Марії」を4月中旬に公開。ほぼ同時期にハルキウ市にある爆撃で破壊された労働宮殿の中で「Обійми」を披露し、尚も反戦活動を続けている。
公式YOUTUBE https://www.youtube.com/c/okeanelzyofficial/featured
▼Місто Марії (マリーの場所) ※マリーとはマリウポリのこと。
▼Обійми (抱きしめて) ※ハルキウ市の爆撃された労働宮殿の中で
ヤン・ゴルディエンコ(Ян Гордиенко)
ドネツク州クラマトルスク市出身。2014年のウクライナ内戦でキーフへの移住を余儀なくされた。同年からユーチューブに自分の氏名をもじったYanGoというページを開設し、2年後に金の盾受領。現在は460万人の登録者数、視聴回数2億8790万回を越える。露で最も人気が有るユーチューバーのトップ5にランクインする程のインフルエンサーだ。
しかし軍事侵攻開始後、他のウクライナ有名人と共に反戦を唱えるビデオ「В моей стране война. Помогите нам!」に参加し、ロシア人視聴者に向けて「歴史を思い出してください。そして、全世界は君達を助けに来ないと思ってください。つまりそれは死を余儀なくされる、ということです。そんなことさせないでください。すぐに話してください。真実を話してください。人々に耐えなくていいとアピールしてください。君達の自由、それは君達の選択の中にある。」とアピールした。でも視聴者の多くから「まるで私が非難されているようで、憂鬱な雰囲気を感じた。」「私達に起こって物乞いをして非難してるの?」「ドンバスで14000人以上が爆撃で死んだのに、貴方は沈黙してた。でも特別軍事作戦で爆撃を開始したら、すぐにパニックになった。」など、反応は冷ややかだった。
公式YOUTUBE https://www.youtube.com/c/YanGo
▼В моей стране война. Помогите нам!(僕の国が戦争なんだ。僕達を助けて!)
マリーナ・グランキナ(Марина Гранкина)
キーフ市出身で、人気旅番組「Орёл и решка(オリョール・イ・レシュカ)」の番組制作を担当しているティーンスプリット社のプロデューサー。
しかしウクライナ侵攻後、彼女の特別軍事作戦に否定的な意見がtwitterで話題になった。これを受け露TV局THTとピャートニッツアはそれぞれ、「当局は政治から外れており、急進的な政治的見解の拡散を許さない」と表明。彼女を解雇した。
(敬称略)
2072年まで露への入国を禁ずる措置-3 に続く