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本と音楽とねこと

「心いじり」の時代

大森与利子,2013,「心いじり」の時代──危うさとからくりを読み解く,雲母書房.(11.20.2020)

 けっして文章の出来を褒めるわけにはいかない書物だが、わたしも、長年にわたって違和感をもちつづけてきた事象を、筆者は、「心いじり」と呼ぶ。
 ジョック・ヤング(「過剰包摂社会」)やケネス・ガーゲン(社会構築主義)の書物からの引用が多いけれども、問題への焦点はきっちり合っていると思う。
 「世界で一つだけの花」(SMAP)や、「心のノート」(文科省)、「便器磨き」、「人間力」の気持ち悪さ、認知行動療法の欺瞞等、悪意のない「心いじり」ほどたちの悪いものはない。
 筆者の「臨床心理学」批判は手厳しいが、社会学や社会福祉学にも「心理還元主義」の陥穽はある。完成度は低いけれども、問題意識を共有し、深化させるのには、良い書物だと思う。

もう「心理主義」「市場原理」に振り回されない!され放題、いじられ放題から脱する知の探求。本書では、教育、医療、福祉、労働、政治、経済等々…。あらゆる生活領域が、いかに強者・識者・メディア主導の言説で構成されているかを捉える。そして、それらの支配的言説を吟味し直し、生活知再興への活路を見い出していく。

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