桐野夏生,2020,夜の谷を行く,文藝春秋.(12.30.24)
山岳ベースで行われた連合赤軍の「総括」と称する凄惨なリンチにより、十二人の仲間が次々に死んだ。アジトから逃げ出し、警察に逮捕されたメンバーの西田啓子は五年間の服役を終え、人目を忍んで慎ましく暮らしていた。しかし、ある日突然、元同志の熊谷から連絡が入り、決別したはずの過去に直面させられる。連合赤軍事件をめぐるもう一つの真実に「光」をあてた渾身の長編小説!
1971-72年に連合赤軍が引き起こした「山岳ベース事件」。
当時小学生だったわたしには、TVで中継される「あさま山荘事件」の印象だけが強烈に残ったが、12名の若者が「総括」のもとでリンチの果てに殺害された「山岳ベース事件」を、のちに、書物により知るところとなる。
「山岳ベース」から逃げ出した西田啓子は、過去の記憶に苦しみながら、あのときなにが起こっていたのか、ルポライターの古市の助けを得ながら、亡くなった者の冥福を祈るべく過去を問い直す旅に出る。
解説は、永田洋子さんの弁護人を務めた大谷恭子さん。
その大谷さんも、今年10月に亡くなった。