荻野美穂,2014,女のからだ──フェミニズム以後,岩波書店.(8.22.24)
一九六○~七○年代の女性解放運動のなか、「女のからだ」をめぐる諸問題――性・生理・生殖・妊娠や中絶を、恥や非難を恐れず語り、知識を獲得し、女たちは自らの意識変革を経験した。市場商品と生殖技術の溢れる選択肢という新たな難問に立ちすくむ今こそ、「からだをとりもどした」あの時代を振り返ってみよう。
女性解放運動/フェミニズムの諸潮流の中でも、1970年代に全米から展開した「女の健康運動」は、男性医師の管理下にあった性や生殖を女の手に取り戻す、生身の実践だった。日本ではウーマン・リブの優生保護法改定反対運動、さらには生殖技術をめぐる議論へつながっていく。意識変革の時代を振り返り、女のからだの現在と未来を考える。
男の目線と欲望により客体化、道具化、商品化されてきた女のからだを、女たち自身が自らの知と経験を生かして取り戻す。
日米両国において、女たちがリプロダクティブ・ライツを獲得していく闘争の歴史が、目配り良くとりまとめられている。
自分の身体は、自身の意思で維持、管理していく、そんな当たり前のことが許されてこなかった歴史と、それに抗った女たちの闘争史は、凡百の社会運動史を凌駕する内実を有している。
目次
はじめに―フェミニズムと女のからだ
第1章 女の健康運動―一九七〇年代のアメリカ
第2章 地球を旅する本―『私たちのからだ・私たち自身』の軌跡
第3章 日本のウーマン・リブと女のからだ
第4章 一九八〇年代の攻防と、その後
第5章 生殖技術という難問
おわりに―女のからだは誰のもの