本作は、オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』やジョージ・オーウェルの『1984年』を超えている、と思うのは、本作が、それら古典的作品と異なり、同時代に書かれたからであろう。
架空の企業、「サークル」は、「グーグル」、「フェイスブック」、「インスタグラム」、「ツイッター」といった企業が合併したもの、と考えて、そうまちがってはいないだろう。
言葉への脊髄反射とコミュニケーションへの執着、情報環境のなかでの疑似的共同性への埋没、そして善意でかためられたおそるべき全体主義の社会。
幸い、独占禁止法がある。また、たいていの人は、SNSで虚しい自己演出と強迫的コミュニケーションにのめりこむ前に、立ち止まることだろう。中学生くらいのときまでは、その愚かさ、惨めさ、醜悪さに気づかないとしても。
しかし、この作品もやはり怖ろしい。上記のような楽観に自信がなくなり、本作品で描かれているような悪夢が現実化することもありうるのではないか、とそらおそろしくなるのである。
デイヴ・エガーズ(吉田恭子訳),2017,ザ・サークル (上) ,早川書房.(1.31.2021)
世界一と評されるインターネット企業、サークル。広々とした明るいキャンパス、信じられないほど充実した福利厚生、そして頭脳と熱意と才能をかねそなえた社員たちが次々に生み出す新技術―そこにないものはない。どんなことだって可能なのだ!サークルへの転職に成功した24歳のメイは、新生活への期待で胸をいっぱいにして働きはじめるが…。エマ・ワトソン主演映画化。SNSとウェブの未来を予言するサスペンス。
デイヴ・エガーズ(吉田恭子訳),2017,ザ・サークル (下) ,早川書房.(1.31.2021)
最先端のインターネット企業、サークル。社員には、オンライン上での活発な交流が求められる。努力家のメイは、仕事でもプライベートでもSNSを使いこなし、有能な新人として社内での評価を高めていく。しかし、サークルが推し進める情報の透明化は、しだいにメイの私生活まで侵食し…。エマ・ワトソン×トム・ハンクス主演映画化。ソーシャル・メディアの未来を詳細に描き、世界のSNSユーザーを戦慄させた話題作。
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