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ルポ 定形外家族──わたしの家は「ふつう」じゃない

大塚玲子,2020,ルポ 定形外家族──わたしの家は「ふつう」じゃない,SBクリエイティブ.(9.16.24)

東洋経済オンラインの人気連載
「おとなたちには、わからない。」書籍化企画!!

離婚家庭、同性カップル、非配偶者間人工授精(AID)など生殖医療で生まれた子……。
現代の家族の形は「多様化」しています。
父親と母親と子どもの組み合わせが「ふつう」だった時代は終わり。
では、それで生まれ育った子どもの気持ちはどうでしょうか?
本企画は両親の離婚、LGBT、虐待などなかなか他人に話せないけれど、意外と当事者の多い問題について
かつての子どもだった当事者に取材をし、具体的な事例を紹介する一冊。

多様化する家族の形「ふつう」とはなにか。家族の形はますます多様化している。では、そこで生まれ育った子どもたちはどのように感じて、日々を生きているのか。本書は、離婚・再婚家庭、シェアハウス育ち、両親が夫婦別姓、親がLGBT、養子、虐待、親が病気など、いわゆる「ふつう」とは少し違う家族や環境で育った当事者を取材、15のケースをまとめた一冊。

 「夫婦と子ども」という、いわゆる「単位としての核家族」が「定形家族」としてとらえられている向きはあろうが、実際に生活の共同がみられる「実態としての家族」は実に多様である。

 本書では、そうした多様性に充ちた、さまざまな「非定形家族」のありようが、とくにそこで育った子どもの視点から描かれている。

 要は、いまこの社会では「ふつうの家族」ばかりが正しいものと思われていて、それ以外の人がみんなちょっと居心地悪く感じがちなので、それをなくしたいと思ったのです。ですから、定形外「家族」だけでなく、家族がいないおひとりさまや、児童養護施設で育つ人、子どもがいないふうふも、なんでもいいじゃない、ということです(だから本当は、「家族」をとって「定形外」だけでもいいくらいなのですが)。
 だからといって「ふつうの家族」を否定するつもりも、まったくありません。人はよく、現状で劣勢にあるものを肯定しようとするときに、勢いあまってか、優勢のほうを殴りがちですが、不要なことです。殴られたほうは嫌な気分になり、他方を否定し返して大体泥沼の戦いになりますし、そもそも劣勢のものを肯定するのに、優勢のほうを否定するいわれはありません。
 「定形外もいいし、定形(ふつうの家族)もいいよね」と、どっちも肯定すればいいだけでしょう。血縁じゃなくてもいいし、血縁でもいい。もっといえば、家族じゃなくてもいいし、家族でもいい。そう考えれば、みんながハッピーになれます。
(pp.194-195)

 「ふつう」、「標準」、「定形」といった枠組みへの思い込みが強いほど、そこから逸脱した場合のスティグマ(マイナスの烙印)が重くのしかかる。

 人間の生活の共同のあり方は、「ふつう」、「標準」、「定形」といった枠組みからはずれた、多様性に充ちたものであって当然であるし、「幸せのかたち」も人それぞれのものであることが理解されれば、とくにそこで育つ、育った子どもはどんなに気持ちがラクになるだろう。

目次
第1章 「ふつうと違う」は不幸じゃない
ゲイの父親とパートナー―「おじいちゃんズ」が教えてくれた
夫婦別姓のためペーパー離婚―苗字が異なる両親に思うこと ほか
第2章 親を背負う子ども
憧れだった父のアルコール依存―母は少しずつあきらめていった
統合失調症の母とふたり暮らし―母を捨てるという選択
第3章 親と血縁がない
AID(提供精子を用いた人工授精)―親が隠すことの意味
46歳で「産院取り違え」発覚―実親を探し続ける ほか
第4章 虐待、その後の人生
親からの「虐待の記憶」―複数の人格を統合するまで
性的虐待をしのぐための人格交代―トラウマ治療で得たもの ほか
第5章 世間は関係ない
「共同保育」のシェアハウス―「沈没家族」で育った子ども
結婚撤回で初めて親を恨んだ―憎めなかった父、自由に生きる母へ ほか


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