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「助けて」が言えない 子ども編

松本俊彦編著,2023,「助けて」が言えない 子ども編,日本評論社.(2.19.24)

 

 

 いじめ、貧困、虐待とネグレクト、性暴力被害、セクマイ、、、

 あまりに生きるのが辛くて、自傷行為を繰り返したり、自殺してしまう子どもたち、その「存在の金切り声」を、わたしも含めた大人たちは、ちゃんと聞いているか?聞こうとしているか?

 安易な「自己決定×自己責任」の論理が席巻する、過酷なネオリベ社会において、子どもたちは、、、

助けてと言えば「甘えるな」と叱られ、助けてと言えなくて自傷し、あるいは自殺したら「なぜ助けてと言わなかった」と責められる、、、

 いったい、どうすればいいの?

 大人たちのあまりに身勝手で無責任なダブルバインド、、、

 私はね、誰のことも信用しないまま生き抜いてきて大人になったんだけど、結論を言うと、別に信じようとしなくても大丈夫だってことがわかった。信じようなんて無理に思わないほうがずっと楽。信じようと思って期待してみても、裏切られた時のショックがデカすぎて、その傷つきのほうがよっぽど大きかったしね。だったら最初から期待なんてしないほうがいいじゃん。これ以上しんどい思いなんか絶対やだし。
 でもね、信じようなんて少しも思ってなかったのに、いま私の周りには、「気づいたら信じてた」っていう人がたくさんいるんだ。やばくない?信じるどころか全員を疑ってかかってきたのに、気づいたらこころの底から信じちゃってんのよ。
 これってなんなのかなっていっぱい考えたんだけど、結局、「たまたまいい大人に出会った」んだと思うんだ。期待すらしてなかったはずなのに、その人たちが行動とか結果で証明し続けてきたから、信用せざるをえなくなったって感じなんだと思う。
 なんていうか、人生ってゲームみたいな感じなんだよね。使えないハズレキャラしか当たらなくて、「マジでクソゲーだな」って思いながら惰性でプレイしてきたけど、たまたまガチャで神キャラ引いた途端めっちゃ無双できる、みたいな。
(風間暁「誰も信用できないから「助けて」と言えない―孤立無援をどうサバイバルするか」、pp.139-140.)

 つまり何が言いたいかっていうと、生きてさえいれば、そのうち絶対に最高の大人に出会うチャンスが巡ってくるってこと。どんな人間と出会うかって、そういうガチャみたいなものなんだよね。だから、親も含めて、自分を傷つけるクソみたいな大人は捨てて、「信じるしかないほど最高の大人」で出会えるまで、何度だってガチャ回したらいい。
(同上、p.141.)

 SOSを発信しているのは、子どもたちだけではない。

 「助けて」とまでは言えなくとも、「存在のキズ」を一人孤独に抱え込んできた挙げ句に、自傷的行為を繰り返す、そんな人生が辛くて辛くてたまらない人の、「聞いてほしい」声、それにに耳を傾けて、自らこころにダイブされることを受け入れ、自らもその者のこころにダイブし、ケアし、ケアされ、受苦をシェアできる、わたしたちは、そんな大人であることができているだろうか?

『「助けて」が言えない――SOSを出さない人に支援者は何ができるか』待望の続編
ヤングケアラー、貧困、虐待・ネグレクト、性暴力、いじめ、セクシュアルマイノリティ……現代の社会には、さまざまな逆境の中を生きている子どもたちが数多く存在しています。そうした子どもたちにとって、周囲に向かってみずからSOSを発し、助けを求めることは、とても難しいのが現実です。
それは、小さな「助けて」のサインを受け止めてもらえた、「助けて」と言ったら助けてもらえた経験を、子どもたちがもてていないからに他なりません。
大人にとって大切なのは、子どもたちが安心してSOSを出せるような環境を整え、不登校、自傷、オーバードーズ、ゲーム依存などの行為を「厄介な問題行動」と見なすのではなく、子どもなりのSOSのサインとして受け取ることです。
本書は全体を大きく二つのパートに分け、前半に、そうしたかかわりを目指す大人たちへのメッセージ、後半に、子どもたち自身へのメッセージを掲載しました。子どもにかかわるすべての人に、ぜひお読みいただきたい1冊です。

目次
1 「助けて」が言えない子どもたちにどうかかわるか―支援者へのメッセージ
大人は子どもの「助けて」を受け止められているか?―「SOSの出し方教育」の中で見えてきたこと
「助けて」の代わりに自分を傷つけてしまう心理―「自分でなんとかしなくては」から「言葉にならないままつながれる」への転換
「なんで私、こんな苦しいんやろう」と思ったけど―子どものかすかなSOSへのアンテナ
子どもたちは、なぜ教室で「助けて」と言えないのか
「助けて」と言えずに不登校を続ける子どもたち ほか
2 「助けて」が言えないあなたへ―当事者へのメッセージ
誰も信用できないから「助けて」と言えない―孤立無援をどうサバイバルするか
自分を傷つけたい・消えたい・死にたいのに「助けて」と言えない
つらい記憶が頭から離れないのに「助けて」と言えない
「助けて」という気持ちをクスリと一緒に飲み込んでしまう
大人はわかってくれない―大好きなものを理解してもらえないあなたへ ほか
座談会 子どもの自殺を防ぐために、私たちにできること(坪井節子×生越照幸×松本俊彦)


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