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なかなかよく書けていて、おもしろかった。
労災保険における自殺の取り扱いについて詳述されているが、本書で指摘されているとおり、それは、畢竟、「過重労働→精神障がい→自殺」という因果連関に落とし込まれるものであった。
ここには、刑法39条で定められた、心神耗弱、心神喪失者の減刑措置と同様の論理が差し込まれている。つまり、「人格崇拝」(デュルケム)の社会にあって、絶対に起こってはいけない自殺は、心神耗弱ないし心神喪失に起因するはずだというわけだ。
となると、あらゆる殺人は、心神耗弱ないし心神喪失に起因するとみなさざるをえなくなるはずだが、被害者や遺族等の応報を代理するという意図を忍ばせた近代法は、往々にして被疑者を極刑に処す。ご都合主義もいいところである。
とかなんとか、いろいろと再考する素材がちりばめられた良作である。
職場のパワハラ、メンタルケアと産業保健、過労自殺とうつ病、ライフハックの現場、ワーママのため息。感情が管理され、生が査定される時代。私たちは、グッとこらえたこの心の揺らぎと、どう向き合えばいいのか。毎日の仕事は、社会問題とどうつながっているのか。現代に疲弊する、働く人びとのための社会学。
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