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【古典】明日の田園都市【再読】

【古典】明日の田園都市【再読】

エベネザー・ハワード(長素連訳),1968,明日の田園都市,鹿島出版会.(新訳新装版有)(2.3.2022)

 クラレンス・ペリーの「近隣住区論」とこの、エベネザー・ハワードの「田園都市論」は、世界各国の都市計画に大きな影響を与えたが、「近隣住区論」同様、「田園都市論」もおおいに曲解されて、スプロール化したニュータウン(郊外住宅地)が延々と拡張される事態に陥ってしまった。
 ハワードが構想した「田園都市」は、鉄道の駅を起点として、食料自給を担う農地、工場、住宅、学校、図書館、社会福祉施設等が展開する、一種のコンパクト・シティであった。
 もちろん、本書が19世紀の終わりに執筆された、その時代による制約はある。工場の排出物や騒音・振動等による公害問題、移動手段としての自家用車の主流化等は、当然、ハワードの構想には考慮されていなかった。
 このことが、旧農村地帯への無秩序に拡大する市街地、住宅地(ニュータウン)が、「自然と調和した田園都市」として錯覚される事態につながったのであろう。
 ハワードは、本書の相当部分を、「田園都市」づくりにおける事業収支の試算に割いているが、「田園都市」の資産は、自治体により管理され、住民に共有されるものであることが前提とされている。ハワードの構想が、社会主義者やアナキストに注目されたのも、故なしとしない。
 食料を自給できるサステイナブルな都市は、大都市の過密と、環境破壊、資源収奪の問題を緩和する。
 わたしたちは、そろそろ、コロナ禍がノーマルとなった世界に生きるのを覚悟すべきであるが、「都市を滅ぼせ」という現代版農本主義の主張もふまえ、大都市から逃げ出し、電子ネットワークによって取り結ばれた「田園都市」生活への移行を真剣に考えなければいけないのではないだろうか。

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