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本と音楽とねこと

トランスジェンダー問題

ショーン・フェイ(高井ゆと里訳),2022,トランスジェンダー問題──議論は正義のために,明石書店.(3.17.2023)

 トランスジェンダーの女性であるフェイは、トランスジェンダーへの差別を、階級、人種、エスニシティにおける、あるいは、シスジェンダー(の女性)、ホモセクシャルとバイセクシャル、ノンバイナリー等へのそれと同根の問題としてとらえる。

ミソジニーとホモフォビア、そしてトランスフォビアは、たくさんの同じDNAを共有している。(p.313)

 日本でも、「トランス女性が女性トイレや女風呂を使い、シスジェンダーの女性が性被害を受ける」といったトランスへの恐怖や憎悪を煽る言説が流通しているが、ミソジニー、ホモフォビアとともに、トランスフォビアの根深さがうかがわれる。
 本書では、イギリスにおいて、トランスフォビアがマスメディア上にあふれかえっている現状について、詳細にレポートされている。そして、トランスフォビアの言説は、シスジェンダーの女性を抑圧するそれと同根のものであることが明示される。併せて、一部のフェミニストが、トランスフォビアに加担している皮肉な現実も指摘されている。
 トランス差別についての、現時点でもっとも説得力のある書物といえるだろう。

トランス女性である著者が、トランス嫌悪的な社会で生きるトランスジェンダーの現実を幅広い調査や分析によって明らかにする。これまで自伝や研究書に偏っていたトランスジェンダーを扱った書籍の中で、事実に基づき社会変革に向けて開かれた議論を展開する画期的な一冊である。トランスジェンダーの実態を何ら顧みない、排除のための偏見に満ちた言説が拡大される中、日本における「トランスジェンダー問題」を考える上でも必読の書。
議論は知識を踏まえ、事実に基づき、正義のために行われなければならない。
「女が消される」「性犯罪が増える」「多くの人が性別移行を後悔する」
――「トランスジェンダー問題」にまつわる数々の虚偽(デマ)から解放される時が来た。
これは全身全霊で推薦すべき、正義の書だ。
――李琴峰(芥川賞作家)
トランス女性はどちらのトイレを使うべきかというような、反対派によってでっち上げられた「問題」ではなく、当事者の経験する本当の「問題」を論じている。
20年以上コミュニティに関わるわたしから見て、ひろく一般の読者にお勧めできるはじめてのトランスジェンダーについての本。
――小山エミ(シアトル在住活動家、脱植民地化のための日米フェミニストネットワーク共同創設者、性労働者の権利と安全のための連帯代表)

目次
イントロダクション 見られるが聞かれない
第1章 トランスの生は、いま
第2章 正しい身体、間違った身体
第3章 階級闘争
第4章 セックスワーク
第5章 国家
第6章 遠い親戚―LGBTのT
第7章 醜い姉妹―フェミニズムの中のトランスたち
結論 変容された未来

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