大御所のA建築家は「吹き抜けのない家は家ではない!」とまで言っています。
自然素材に薪ストーブの家には大体吹き抜けがセットで写真に載っています。
リビング吹き抜けは寒くないのか?
いや、薪ストーブなので大丈夫!
だって気持ちいいでしょ!この開放的な空間…。
さて、リビング吹き抜けは必要でしょうか?
問題はないでしょうか?
イメージ的には気持ちいい空間がすぐ想像できます。
自然素材系の工務店・設計事務所はよく「木」や「薪ストーブ」を使いたがりますが…。
「自然」の言葉を利用するとなんでもよく聞こえてきますが…。
考え方としては国語的(イメージ)なものだけでみるのではなく、算数的(実験・数値)なことも含め考えなくてみたいと思っています。
【気密はしっかりとる】
吹き抜けを設けるうえで気密はしっかりとらなければなりません。
冬の朝、キッチンでお湯を沸かすと湯気が上昇していくのが想像できると思いますが暖房も暖めた空気は軽くなるので上がっていき、上部に隙間があるとそこから熱が逃げてしまいます。
逃げた分だけ冷気が下から入ってくるので、暖房するほど寒くなる!ということになります。
東大の前先生のサーモ画像では、高気密住宅と低気密住宅で薪ストーブ暖房を行なった比較の画像をみると低気密住宅では暖気が上方からどんどん逃げる一方で、下から冷たい漏気が浸入してくることが画像で分かります。
また、CFDシミュレーションの画像では高気密の場合エアコン暖房の温風が床下にまで届いていますが低気密の場合、床下まで温風がとどかず、床下一面が冷たい画像になっています。
やはり、空気の流れを止めないといくら暖房しても、たくさん断熱材を入れても隙間があると機能しません。
断熱材は繊維や樹脂で空気を絡めて止めているからこそ、熱を通さない「断熱材」になるのです。
自然素材系の工務店・設計事務所は気密が高いとよく「息が詰まる」や「雨合羽を着ているようだ」とよく言います。
気密のとらえ方を間違っているような…。
計画換気をするには気密がしっかりとれていないといけません。
とれないと汚染空気が部屋の中に滞留することになります。
【暖房はどうなのか?】
通常のリビング(天井高さ2.4m)ではエアコン暖房できても吹き抜けは空間が広い分だけ熱負荷が大きくなり、床面に暖気が届かず温度ムラが大きくなってしまいます。
吹き出した空間は高温で軽いので、上方に広い空間が開けていると簡単に舞い上がってしまいます。
エアコンの温風を床まで届かせるためには、温風の温度を控えめにして風量で稼ぐ方が有利ですが風量が大きくなると不快に感じる方は多いと思います。
しかし温度を上げると空気がさらに軽くなって床に届きません…。
それでは床暖房が良いのでは?
温度ムラの少ない環境を創り出すことはできますが…。
床暖房は瞬時の加熱能力が限られるので立ち上がりが遅く、エアコンと比べるとエネルギー効率が低いのです。
床暖房だけで吹き抜けリビングをまるまる暖めることは困難と前先生は言っています。
そもそも「人のいない」上部空間を暖めること自体がムダでしょうか?
無用な熱負荷の増大を招いていることは事実です。必要な場所を必要なだけ暖房する方が省エネにはなりますが…。
【ダイレクトゲイン】
窓から太陽熱を直接取り込むことをダイレクトゲインと言います。
弊社のモデルハウスにも吹き抜けを設けました。
冬の陽射しから無料のエネルギーをもらいたい。
空の青をみたい。
家の中心(芯)で各部屋がつながっている…。
吹き抜けの窓はタタミ2枚分の大きさで約400Wのエネルギーをいただくことができます。
電気ストーブ1台分です。
【エアコン暖房がいい?】
リンゴのような、家の中心(芯)に吹き抜けがあり、各部屋がそれでつながっている家は全館暖房のエアコン暖房をお勧めします。
ブドウのような廊下で個室がつながっているような家は間欠暖房の方が省エネになると思います。
暖房器具は家族構成や間取り、家にいる時間によって変わってきます。
今まで利用してきたものも基準になってくると思いますのでいろいろ検討は必要です。
基本は断熱と気密をしっかりとる。
できればQ1住宅を目指したいところですが…。
UA値0.46、0.42レベルは最低ほしい所です。このぐらいであれば少しの費用UPですみます。
弊社の計画では南側隣地に高い建物があるような場合は必ず吹き抜けを設けています。
吹き抜けから見える青い空はとても気持ちがいいもので今まで陽射しが入ってこなかった場所に陽が入ることは大変気持ちのいいものです。
大御所の建築家が「吹き抜けがない家は家ではない!」と言ったことがよくわかります…。
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