落ちこぼれのつぶやき

思いのままに

時間のある方は以前の記事も読んでみてください。

イラク戦争から3年

2006-03-20 11:11:58 | 雑記帳
イラク開戦から3年の時間が過ぎましたね。当時言われていたことが本当のことではないことがあったり、いろいろな問題も出てきて、依然として場合によっては内戦になるのではないかと心配されるほど、イラク国内は混乱しているようですね。こうなってしまった原因はどこにあるのでしょうね。
 しばらく前に香田さんを拘束し殺害した犯人が逮捕されたようですね。
以下の文章を思い出したのでのせてみます。


田口ランディさんのブログに転載されていた、宮内勝典さんの文章に共感したので、転載します。

以下、転送・転載歓迎します

                       November 14.2004


   若者の死を悼む

      香田証生君の死について思うこと


                宮内勝典 【転送・転載歓迎】
                http://pws.prserv.net/umigame/


 日本人青年がアルカイダ系の武装集団に拘束されたと聞いたとき、なんという軽率さだろうとあきれながらも、複雑な思いがあった。常々、ひとり旅に出ることを若い人たちにすすめているからだ。外部と触れあうことによって、生まれ育った日本や自分を初めて相対化できる。それが精神的な成人式となるはずだ、と私は語りつづけてきた。

 私自身も二十二歳のとき旅に出てから、六十カ国ぐらいを遍歴してきた。四十代になってから、中米先住民たちの独立闘争に関わり、密林の戦場に潜入したこともあった。まだ幼かった息子を妻に託し、熱帯雨林の奥で人知れず腐乱死体となるかもしれないと覚悟しながら。

 香田証生君も、自己責任であるということは自覚していたと思う。「小泉さん、すみませんでした」とつぶやくかれの表情には、首を切断されるかもしれないと覚悟している、悲しいほどの静けさがあった。武装集団の要求に応じて、日本政府が自衛隊を撤退させることはありえないと、かれ自身も知りぬいていたと思う。

 香田君とほとんど同じ歳である私の息子も、昨年、バックパッカーとして旅をつづけていたが「これからフンザ渓谷へ向かう」というメールを送ってきたきり、ぷっつり消息を絶った。フンザ渓谷はいくつもの国境が入りくむパキスタン最北部の山岳地帯である。息子が陸路でアフガニスタンへ入国するつもりでいることを私は直感した。

 幸い息子は無事であったけれど、香田君はついに生きて帰ることができなかった。二人とも、たしかに軽率であった。無謀であった。だが、かれらの動機に切実さがあることを私は疑っていない。

 世界中で一千万を超える人たちが、路上に出て反戦の声をあげたけれど、戦争を止めることはできなかった。日本国民の過半数が反対したにもかかわらず、自衛隊はイラクへ派遣された。かつて客員教授をしていたころの教え子たちも「自分たちが、なに一つ関与できないまま、世界は圧倒的に動いていく」と無力感を洩らしている。

 世界貿易センタービルが燃えあがり、アフガンやイラクに火の雨が降りそそぐ光景を、私たちは情報として受けとめるしかない。世界の中にいながら、リアルな世界から疎外されて、架空の情報空間に封じ込まれている。世界はすりガラスに映る影のように空虚で、若い人たちは自分が生きているという実感をもつことができないまま、離人症的な感覚に陥っている。うつ病もひろがっている。

 少年犯罪やリストカットには、生の実感を取りもどしたいという衝動がひそんでいると思われる。日本の自殺率は世界一だ。自殺者の数は、年間三万人を超えている。これはアフガン空爆やイラク戦争の死者たちよりも遙かに多い。

 香田君や私の息子が危険であることを知っていながらアフガンやイラクへ赴いたのは、リストカットの裏返しのようなもので、自分たちを疎外している世界の実体を見きわめ、ざらりとした現実に触れてみたかったからだろう。状況を突き破って真に生きようという願望でもあったはずだ。
「星条旗に包まれた首は、友人の首、自分の首であったかもしれない」
 と私の教え子たちは口々に語っている。そして、交渉によって救出するということが念頭になかったのか、まっさきに自衛隊の撤退はありえないと宣言した母国の政府に、自分たちは救ってもらえないのだと感じたとも洩らしている。この事件によって若い人たちは二重の意味で世界から締めだされてしまったのだ。そのことだけは理解すべきだと思う。それが、せめてもの鎮魂ではないのか。

                 (共同通信 2004年11月3日記)


【追記】

 イラク戦争の死者数は、これまでNGOの「イラク・ボディカウント」によると、1万人から2万人の間とされてきました。それに基づいて、イラク戦争の死者数を3万人以下とみなして、上記の原稿(若者の死を悼む)を書きました。ところが、その死者数が少なすぎるのではないかという指摘が「非戦」のチームメイトからありました。

 イギリスの医学誌「ランセット」(2004年10月30日)に発表された、新しい調査報告によると、イラク民間人犠牲者数は、最低でも10万人を超えているのではないかと推定されているそうです。

 これは米国ジョンズ・ホプキンス大学、コロンビア大学と、イラクのムスタンシリヤ大学による「米・イラク合同調査団」による学術調査ですから、客観的で、信頼がおけるものであると思われます。この「村落抽出調査」の時点では、まだファルージャなどが含まれていませんから、死者の実数はもっと多いのではないかと思われます。

 くわしく知りたい方は、下記の「イラク戦争被害記録」をご覧ください。

  http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Iraq/lancet04oct.htm


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