たぬきの子供が殺されました

この手にまだ感触が残ってる。
熱いアスファルトの上に居たせいか少し温かくて、硬直してるけどなんとなく柔らかい子だぬきの感触が。



原付バイクで舗装された緩やかな山道を走っていると、カーブの手前、道の真ん中に何か黒い物が落ちていました。

横を通り過ぎるとそれが動物だって分かりました。

足が上に伸びたまま、口から血を流してそこにいました。


車に乗った人間に殺されたんだと分かりました。

轢き逃げされたんです。



反対車線を走っていると、車の通りが多いその道で運良く後ろに車が見えませんでした。

カーブを抜けてすぐ、道路の真ん中にバイクを止めてその子を前カゴに乗せました。

側道のスペースもないその道路で、心無いドライバーがクラクションを鳴らして走り去ります。


自然に返してやろうと１０分ぐらい走って、うるさい車のほとんど通らない、お寺の裏の静かな歩道脇の木の根本に落ち葉をかけて寝かせてやりました。


時々様子を見に来よう。


気が付くとバイクの前が血まみれでした。

これが、人間の犯した罪の深さ、毎日繰り返し続けているその証です。

洗い流す気にもなれません。

洗っても洗っても、落ちる事はないんです。



この子の命日は２０１０年８月４日。
だから名前は八千代(やちよ)。



もし

この子の毛皮をはいでかわいいとか、
解剖実験をして人の役に立つとか、
肉を削いで美味しいだとか、
そんな事を嬉しそうに言ってやっていたらどう思うだろう。


だからやめて下さい。