武器貿易条約:規制交渉の甘さ 武器見本市で露呈
多様な通常兵器や軍需物資が並ぶ武器見本市 (C) KARIM SAHIB/AFP/Getty Images
アブダビで国際武器見本市が開かれた。中国、米国、EU諸国など武器輸出国は、こうした武器取引においても深刻な人権侵害を助長する恐れのある国へ武器を流出させてはならない。
武器見本市では世界最大級という国際防衛展示会(IDEX)は、2年に一度アラブ首長国連邦(UAE)の首都で開催されている。
今年は、IDEX閉幕から約1カ月後の3月18日、歴史的な意義を持つ武器貿易条約(ATT)を採択する最終会議が、ニューヨークの国連本部で開かれる。参加国の中で、米国、中国など一部の国々は、同条約の規制が弱いものになることを期待している。
アムネスティは、国際的な武器貿易の規制が不十分なために、世界中で戦争犯罪や他の深刻な人権侵害が横行していることを再三、警告してきた。1990年代以降は、特に規制のない武器取引が生む問題を訴えてきた。
会場で展示されている通常兵器の多様な種類は、ATT草案で米国、中国などが出している消極的な案での規制対象品目と好対照をなしている。
これらの国々が提案するように、条約の人権ルールや取引規制が甘いままで成立すると、企業は今後も悪辣な買い手を相手に、何億ドルにもおよぶ武器の取引を重ねることになる。
IDEXのような国際的な武器の見本市や展覧会は、各国の政府や防衛産業業界にとって、武器や弾薬など軍用・治安維持用の装備品やサービスの国際取引を促進・仲介する重要な商機である。
今回のIDEXには、世界60カ国近くから1100社以上の企業が出展している。過去に深刻な人権侵害が犯された地域へ武器を提供していた武器輸出主要国の企業も参加しており、アムネスティは、そのいくつかを特定することができた。
深刻な人権侵害に使われた武器を提供してきた企業たち
例えば、中国国営の兵器製造会社は、火砲システムのような重火器を展示している。パキスタンの企業は、小火器弾薬、追撃砲、砲弾、爆弾など各種の軍需物資を宣伝している。
両国は、30年にわたる激しい武力紛争が2009年に終結したスリランカに、多種多様な武器を供給していた。中国が、紛争後期(2000年~09年)に、 スリランカ武装勢力へ大規模な軍事援助を行っていたことを、アムネスティは確認している。スリランカ政府および分離独立派の武装グループ「タミル・イーラ ム解放のトラ(LTTE)」は、重大な人権侵害を犯し、何万人という市民を殺害し、多くの負傷者や虐待被害者を出した。
IDEXに出展している中国企業は、さまざまな小型武器や弾薬も製造している。それには、コンゴ民主共和国(DRC)東部の武装グループが使用した弾薬筒 も含まれる。同国ゴマ州で国連平和維持軍が回収した弾薬筒には、中国の刻印が入っていた。これらは、2007年に製造された後、DRCの武装グループに使 われていた。アムネスティは、この刻印から特定の製造会社を割り出した。
さらに、アムネスティは、これらの中国製の弾薬筒は、コンゴ民主共和国のブシャニ村で発見されたものと同一であると結論づけた。この村では、軍の兵士たちが、強かん、拷問などの性的暴行を加えていた。
IDEXには、さまざまな「殺傷能力の低い」武器も展示されている。たとえば、催涙ガスのような化学性刺激物、ゴム弾・放水砲といったデモを鎮圧するための装備などである。
2011年初頭以降、中東や北アフリカの各地で起きた大規模な民衆蜂起を鎮圧するため、警察や治安部隊は、「殺傷能力の低い」武器を配備した。このような 武器は、合法的に使用されたとしても、死を招く可能性がある。アムネスティは、治安部隊が抗議参加者を追い払うために過剰で不必要な武力を行使し、人権侵 害に至るたびに、非難を繰り返してきた。
「殺傷能力の低い」武器を展示している企業の中に、米国とフランスの2社があり、いずれもバーレーンで使用された催涙ガスの製造元である。別の米国企業 は、エジプトへも輸出していた。バーレーンとエジプトでは2011年と2012年に、治安部隊が抗議参加者に向けて催涙ガスを乱用したとされ、死者や重傷 者を出す結果となった。
各国政府は、法治の確立や人権の尊重よりも、執拗な商業的圧力をかける武器製造企業と独善的な国益を優先させている。
依然として、非人道的な兵器が取引されている
こうした状況を見ると、なぜ世界が厳格な武器貿易条約を切望しているのかが分かる。厳しい規制を盛り込んだ条約が成立すれば、重大な人権侵害に使われる危険が高いと予測される場合、その武器の販売が中止されるからだ。
ある韓国企業は、IDEXでクラスター爆弾を売り込んでいたが、これは、そもそも非人道的な兵器である。現在、111カ国がクラスター爆弾を禁じる独自の国際条約に、署名、批准あるいは同意している。
クラスター爆弾は、近年の紛争で使われてきた。2011年には、ロシア製やスペイン製のクラスター弾がリビアで目撃されている。アムネスティの調査では、カダフィ大佐派の武装勢力がリビアの住宅街で、また2012年にシリア政府軍が同国内で使用していた。
クラスター弾のような国際的に禁止されている武器が、依然として主要な国際見本市で売られているのは、容認できない。紛争が終わっても、クラスター爆弾の不発弾で子どもたちが足を失うなど犠牲になっている。
アムネスティは、このような無差別攻撃兵器を製造・販売している企業に対し、直ちにその製造を中止し市場から回収するよう求める。さらに、クラスター爆弾の使用・製造・取引・保有を禁じる「クラスター爆弾禁止条約」に署名するよう、各国に訴えている。
アムネスティ国際ニュース
2013年2月20日
Earthlings Japanese Subtitle
http://youtu.be/thFyxG5_V4c
2013/3/23