ある日 森の中 クマさんに、は出会わなかったけど。
ジジジジ
ジジジジ
と、下の方から聞こえてきた。
こんな所からおかしいな、と思い自転車置き場の自転車のタイヤの脇を見てみると、セミが歩いていた。
暑い昼間だ、タイヤの日陰に入ろうと歩いている。
日陰に入ってももぞもぞと動いている。
そこが土の上ならそんなに気にしなかったかもしれない。
けど、大丈夫かな、と思ってしばらく見てると、、
ジジジジ バタバタバタ
飛びたそうにしてるけど飛べないセミ。
よく見ると羽が少しちぎれていた。
このままアスファルトの上で苦しんで弱って死ぬより、他のセミと同じように木に止まっていたいに違いないと思ったので、ちょっと手を貸してあげた。
木につかまると、少し上って満足そうにしていた。
良かった良かった。
しばらく歩いていると、また聞こえてきた。
ジジジジ
バタバタ
ジジジジ
バタバタ
道端のアスファルトの上で、セミが転げ回っていた。
またか。
手を差し出すと、しがみついてきた。
暑くて渇いていたんだろう、手にストローを刺して何かを吸おうとしていた。
少し痛かった。
持っていた水を手に取ってみたけど、飲む様子はなかった。
おとなしくて、かわいいやつだ。
木に近づけてやると、こっちを見て、ありがとうと言いながら上っていった。
良かった良かった。
しばらく歩いていると、次に目に飛び込んできたのは、また同じセミの、哀れな姿だった。
ここが土の上なら、そんなにおかしなことでもない。
さっきの二匹もそのまま放っておいたら、苦しんだあげくこうなっていたかも知れない。
ある日、スーパーにクワガタが並べられていた。
小さい小さい透明の容器に一匹ずつ入れられて、いくつも並んでいた。
鳥、豚、牛、魚を殺して並べている店だ、生きたクワガタを並べることを残酷だなどとは思わないんだろう。
その中の一匹が、上へ上へ、なんとかふたを開けて出よう出ようとしていた。
たかが数百円の金のために、この動物はもう二度と自然の中の木に登ることもない。
その時、突然ふたが開いた。
いいぞ、そのまま出ていけ。
でもスーパーの中は危険がいっぱいだ、偶然表に出られたらな。
そう思って近づいて見ていると、手につかまってきた。
ここから逃げたい。
自然の森へ帰りたい。
そう訴えてきた。
それは、虐待されている檻の中の犬が、檻の鍵を開けて欲しいと言っているのと同じだった。
動物解放だ。
Animal Liberation!
逃げ出してから数時間は、羽根を開いても飛ぶことができなかったクワガタ。
服の上を上ったりして元気が出てくると、飛べるようになった。
森の中へ行くために一晩一緒にすごし、翌朝早くに森へ出かけた。
部屋の中を飛んで事故があってはいけないと思い、夜の間は残念だけど箱から出られないようにしていたから、ガサガサ音がするし気になるしで、ほとんど寝られず朝日と共に目が覚めた。
ネットでクワガタのよくいる木を調べてたけど、よく分からない。
人が来ない森の奥へ。
この木で正解かな。
自分の好きな所に飛んでいけるから大丈夫か。
ほんとに、ほんとに、この木に登っていいのかい。
ありがとう。さよなら。
そう言って登って行った。
例えば不幸な犬や猫を助けることと、同じ価値があると思っている。
別にセミやクワガタが好きな訳ではないし、前にいつ触ったのかも分からないほどだ。
それぞれが感じる苦痛は同じで、それぞれが生きたい場所で生きたいのだ。
2014/7/31
この物語はフィクションである
ジジジジ
ジジジジ
と、下の方から聞こえてきた。
こんな所からおかしいな、と思い自転車置き場の自転車のタイヤの脇を見てみると、セミが歩いていた。
暑い昼間だ、タイヤの日陰に入ろうと歩いている。
日陰に入ってももぞもぞと動いている。
そこが土の上ならそんなに気にしなかったかもしれない。
けど、大丈夫かな、と思ってしばらく見てると、、
ジジジジ バタバタバタ
飛びたそうにしてるけど飛べないセミ。
よく見ると羽が少しちぎれていた。
このままアスファルトの上で苦しんで弱って死ぬより、他のセミと同じように木に止まっていたいに違いないと思ったので、ちょっと手を貸してあげた。
木につかまると、少し上って満足そうにしていた。
良かった良かった。
しばらく歩いていると、また聞こえてきた。
ジジジジ
バタバタ
ジジジジ
バタバタ
道端のアスファルトの上で、セミが転げ回っていた。
またか。
手を差し出すと、しがみついてきた。
暑くて渇いていたんだろう、手にストローを刺して何かを吸おうとしていた。
少し痛かった。
持っていた水を手に取ってみたけど、飲む様子はなかった。
おとなしくて、かわいいやつだ。
木に近づけてやると、こっちを見て、ありがとうと言いながら上っていった。
良かった良かった。
しばらく歩いていると、次に目に飛び込んできたのは、また同じセミの、哀れな姿だった。
ここが土の上なら、そんなにおかしなことでもない。
さっきの二匹もそのまま放っておいたら、苦しんだあげくこうなっていたかも知れない。
ある日、スーパーにクワガタが並べられていた。
小さい小さい透明の容器に一匹ずつ入れられて、いくつも並んでいた。
鳥、豚、牛、魚を殺して並べている店だ、生きたクワガタを並べることを残酷だなどとは思わないんだろう。
その中の一匹が、上へ上へ、なんとかふたを開けて出よう出ようとしていた。
たかが数百円の金のために、この動物はもう二度と自然の中の木に登ることもない。
その時、突然ふたが開いた。
いいぞ、そのまま出ていけ。
でもスーパーの中は危険がいっぱいだ、偶然表に出られたらな。
そう思って近づいて見ていると、手につかまってきた。
ここから逃げたい。
自然の森へ帰りたい。
そう訴えてきた。
それは、虐待されている檻の中の犬が、檻の鍵を開けて欲しいと言っているのと同じだった。
動物解放だ。
Animal Liberation!
逃げ出してから数時間は、羽根を開いても飛ぶことができなかったクワガタ。
服の上を上ったりして元気が出てくると、飛べるようになった。
森の中へ行くために一晩一緒にすごし、翌朝早くに森へ出かけた。
部屋の中を飛んで事故があってはいけないと思い、夜の間は残念だけど箱から出られないようにしていたから、ガサガサ音がするし気になるしで、ほとんど寝られず朝日と共に目が覚めた。
ネットでクワガタのよくいる木を調べてたけど、よく分からない。
人が来ない森の奥へ。
この木で正解かな。
自分の好きな所に飛んでいけるから大丈夫か。
ほんとに、ほんとに、この木に登っていいのかい。
ありがとう。さよなら。
そう言って登って行った。
例えば不幸な犬や猫を助けることと、同じ価値があると思っている。
別にセミやクワガタが好きな訳ではないし、前にいつ触ったのかも分からないほどだ。
それぞれが感じる苦痛は同じで、それぞれが生きたい場所で生きたいのだ。
2014/7/31
この物語はフィクションである