突然断ち切られるような、衝撃的な終局だった。
なぜか、「フーガの技法」の最後を連想した。
両者2勝2敗で振出しに戻った竜王戦第5局は、
渡辺竜王の先手で横歩取りになった。
これだけは無いと思ったのだが・・・
ここまで羽生さんの後手番はすべて横歩取り。
本シリーズは横歩取り研究に
命運を託したのだろうか?
横歩取りらしからぬ長い序盤から、
今回は、先に踏み込んだ渡辺竜王が
一方的に激しく攻めて、
羽生名人が受ける展開となった。
竜王のシンプルな攻めが好調で優勢になったが、
そこから、羽生名人が強靭な粘りを見せる。
序盤から中盤で優勢になっても、
そこから勝ちきるのが難しいのが
将棋というゲームだ。
局面を単純化して勝ちやすいほうに
もってゆこうとする竜王と、
局面を複雑化して負けにくいほうに
もってゆこうとする名人との間で、
つばぜり合いが続く。
そのまま、どこが悪かったのかよくわからないが
徐々に差が縮まって、ついに逆転したのではないかと
言われ始めたところで、こんどは竜王が秘術を尽くす。
▲7一龍から▲9一龍のフェイント??
力の入ったねじりあいが続く中、
渡辺陣にもついに火の手があがり、
お互いに時間をすり減らしながらの大熱戦。
そして、羽生勝ちか?と言われていたところで
突然の幕切れはやってきた。
名人の角が抜かれる筋に入ってしまい、
155手までで先手渡辺竜王の勝ちとなった。
時間に追われた錯覚か、はたまた?
感想戦での情報などによると、
最終盤には羽生名人に勝ち筋があったようだ。
難しすぎてよくわからないが、たとえば、
148手目に△2四角とする前に、
△5八金からばらして、
王手がかかる形で△2四同角から△5七馬
とするのは有力そうだ。
ソフトに指させてみると、
割と簡単に後手勝ちになる。
しかし、この順は、相手に駒を渡すことになるし、
角も2四に置いておくほうが守りにも働くので、
実戦的にはかなり指し難い。
含みを残したという意味で、
実戦の順はやむをえなかったのかもしれない。
それに、羽生名人は▲5二金と
桂馬を取る手を軽視していたようだ。
▲4一金と寄る手を中心に考えて、
△3三玉で大丈夫と考えていたのかもしれない。
しかし、▲5二金と指されてみると、
△3三玉では、取られた桂馬を使われて、
しかもなんと、置いておいた角が邪魔になって、
つかまってしまう(らしい)!
なんとも作ったような展開で、
竜王戦の渡辺竜王には、
やはり何かが憑いているようだ。
そこでやむなく、時間にも追われて、
相手の読み筋に入るよりはと、
△5二銀としてしまったのではないか?
というわけで、△5二銀は
ポカと言えばポカだが、
他にどうしようもなかったのではないかと思う。
大盤解説では▲5二金には△3三玉でだいじょうぶ、
と解説されていたらしいので、いずれにせよ、
ぎりぎりの難しい局面だったのだろう。
そういうところで、常に相手の読みを
上回るのが羽生将棋だったのだが、
ここ数年、やはり年齢には勝てないという感じだ。
さらに本局では、竜王の力が強くて苦しい時間が長く、
羽生名人がそれだけ消耗してしまっていた
ということもあるだろう。
最後は本当に残念だったが、
名人の中盤からの粘りと追い上げ、
勝負への執念はいつにもましてすさまじかった。
渡辺竜王も肝が冷えたのではないか。
これでいよいよ後の無い戦いになってしまったが、
次局までの間に約2週間あるのが幸いだ。
その間、竜王は対局が続くが、
名人は比較的休みがありそうだ。
きっと立て直して、
最終局まで熱戦を見せてくれると
期待している。
次局の竜王の後手盤は、
久しぶりに穴熊を予想しておく。
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