日々の寝言~Daily Nonsense~

人類と AI の未来

人類と AI の未来に関する本を
いくつか読んだ。

一冊目は、
> AI新世 人工知能と人類の行方
> 小林 亮太 (著), 篠本滋 (著), 甘利 俊一 (監修)

「AI新世ー人工知能と人類の行方」というタイトルだが、
内容は AI が実際の業務にどう使われているかの調査報告が中心。
さすがに、著者は優秀な研究者さんたちなので、
かなり網羅的に調査されていて、
参考文献や URL も充実している。

出版が 2022/8 で、執筆されたのは
生成 AI ブームの前なので、
生成 AI については情報が少ないが、
新書でコンパクトにまとまっているし、
今から、AI とは何か、とか、
通常の AI?の使い方を
知りたい人にはお薦めだと思う。

その一方で、「人工知能と人類の行方」については、
最後の章と対談でさらっと扱われているだけで、
それほど深くは書かれてはいないので、
こちらを期待するとちょっと物足りないかもしれない。

二冊目は、
> 人類の歴史とAIの未来
> バイロン・リース (著), 古谷 美央 (翻訳)

バイロン・リースさんは、いくつかのテック企業を
立ち上げられたりしている、フューチャリスト。
人類と AI の関係をちゃんと理解するには、まず
人類とは何かを知らないといけない、ということで、
石器時代からの人類の歴史を振り返りつつ
人類と AI の関係とその未来について考えてゆくというもの。

これまでの人類の歴史を
火の使用の前、火の使用の後、農耕定住の後、
という3段階に分けて説明して、
現在は次の段階(第4段階)に
入るところと位置づける。

フューチャリストらしく、かなり楽観的で、
出典などが怪しいところも無くはないが、
くだけた感じの文章で、しかも具体例が多いので、
とても面白く読める。
翻訳も上手に訳されていると思う。

ちなみに、原題は
"The Forth Age" で、
人類の「第4の時代」
そのものが表現されている。

原書の出版が 2018年頃なので、
AI についての情報は少し古いが、
その後の発展の予測は
それほど間違っていない感じがする。

三冊目は、
> AIは「心」を持てるのか 脳に近いアーキテクチャ
> ジョージ ザルカダキス (著), 長尾 高弘 (翻訳)

この本も人類と AI の関係について詳しく書かれているが、
脳、特に「心」と AI の関係が中心になっている。

こちらも、原書の出版が少し前なので
情報が古い感じはするが、
著者がサイエンスライターということで、
よく調べて冷静、中立的に
書かれているという印象。

個人的には、AI に「心」が宿るかどうかに
あまり興味がなく、また、認知科学や
脳科学については知っていることも多くて、
他の本と較べると、あまり楽しめなかった。

原題は "In Our Own Image,
Will Artificial Intelligence Save or Destory Us"

"In Our Own Image" というタイトルは、
自分を理解するために自分の似姿を追い求める
人類の姿を意味しているのではないかと思うが
(第1部はこのテーマについての人類史的なお話になっている)、
そういう意味では、押井守さんの「イノセンス」
などとも関係するのかもしれない。

四冊目は、
AI 2041 人工知能が変える20年後の未来
カイフー・リー(李開復) (著), チェン・チウファン(陳楸帆) (著), 中原 尚哉 (翻訳)

カイフー・リーさんは著名な AI 研究者で、かつ起業家。
この本では、リーさんの技術的知識と予測に基づいて、
SF 小説家のチェン・チウファンさんが
2041年の世界の様子を 10編の短編小説にしている。

扱われているテーマ、分野は、
保険、VR、教育、医療、自動運転、テロ、仮想通貨、
雇用・失業、幸福・ユートピア、豊穣な世界
と多岐にわたり、小説として見ると
物足りない面もあるが、技術も含めた
読み物としては、どれも大変面白く読めた。

こちらも、著者が、あえて
「そうあってほしい未来」を描いている、
と書いているとおり、
テロを扱った章も含めて、
基本的には超楽観的。

特に、最後の「豊穣の夢」は、
人類がほとんどの生産労働から解放された
未来がストレートに描かれている。

ひとつひとつのお話が
完結しているので読みやすいが、
その分、全体としての連関は薄く、
それぞれで描かれている世界が
つながっている感じがしなかったのが、
ちょっと残念だった。

2041年という特定の時点の世界を
描いているので、
ある短編の中の登場人物が
別の短編で主人公になる、
みたいな技法が使われていると
もっと楽しめたかもしれない
(その分、地理的な多様性などが
減るかもしれないが)。

個人的なお薦め順は、
「人類の歴史と AI の未来」と「AI 2041」が同じくらいで、
「AI 新世」、「AI は心を持てるのか」という感じだろうか。
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