おじさんが恋愛したら(仮)

一部事実の恋愛小説

君と離れたくないから「仮」

2020-09-21 17:37:56 | 日記

朝から、10歳年下の大峰営業本部長に、今朝もネチネチ怒られていた。

怒られてるのは、曽根裕二。今年49歳になるが、彼の肩書きは、主任補佐。
本当は平社員だが、会社も体裁が、悪いからと、主任補佐なんてつけた。

曽根の職場は、大手通信機器の、島崎電気で、国の機関からの受注や、幅広く、家電まで作り、知らない人はいない大企業。

リーマンショックあたりから、業績悪化により、リストラを繰り返してきた。
かつては、優秀だった曽根も、リストラを拒否したことで、降格からはじまり、
最後には、島崎電気サービスという、関連会社に飛ばされた。

営業二課には、森村課長はじめ、課員は、私含め3人。1番下の担当者だ。

なにしろ、やる気がない。ミスを繰り返す。この1年、ほぼ毎朝部長に怒られていた。

良い時代なのか、部長も下手にやり過ぎて労基にでも、チクられたら堪らないのか、ネチネチと、嫌味を繰り返してきた。
なにか、ブツブツつぶやいていたら、突然立ち上がり、私を押しのけて入口に、走り出した。
他の社員も、立ち上がる。
振り向くと、島崎電気本社の、統括本部長熊崎慎吾だ。ちなみに、同期入社で月イチで飲みに行く間がらだった。この半年は、彼が忙しく、ひさしぶりに、見た。

お付を連れて、こちらに歩いてくる。
部長には、目もくれず私の前に。
「久しぶりだな。曽根やん。なあ、痩せたか?アハハ!」

私のお腹を、ポンポンたたく。

じゃ、またなと、奥にある社長室へ、大名行列は、すすんでいった。
部長は、1番後ろにつき、私を睨みつけた。

席にすわると、森村課長の質問攻めだったが、さあー。なんですかね。まともに答えないので、諦めた様に、席に戻る。

「曽根さん、今日は神奈川県相原土木事務所で打ち合わせですよ。いきましょ」

声を掛けてきたのは、上村愛課長代理。
なんと、29歳だが私の上司。

「はい。わかりました。車玄関に廻します」

荷物をまとめて、総務に車の鍵を借りて、エレベーターで、地下へ。
地下駐車場には、黒くかつての高級車がとまっている。元は、島崎電気の役員車両が、ウチに廻されてきていた。

古いが、きちんと専属車両管理員がいたので中も綺麗なままだ。

うちの会社は、都内ではあるが練馬区にある。
かつては、新宿にあったが、業績悪化により練馬区に移ってきていた。

ビル入口につけていると、課長代理がとなりに乗り込む。
この半年、代理と仕事しているが、余計な話しはしたこともない。
すぐに、タブレットで仕事をしているからだ。

ところが、今日はいきなり話しかけてきた。

「あの、曽根さんは私に興味ないの?
それとも、男性が好きなの?」

意表を突く言葉だし、意味がわからない。

「いや、バツイチだよ。まあ、彼女
いないけど。女性だよ。恋愛対象は」

たしかに、課長代理は、かなりの美人でしいていえば、女優の森七菜に似た、可愛い子だ。
そんな目で、みたこともない。

神奈川に向けて、裏道を、走りながらこの状況にとまどっていた。

「あの、私曽根さん大好きなんです。
付き合ってください。」

信号待ちしていたら、いきなり言われた。
は?好き?なにか、からかわれてるとしか思えない。

「いや、あの私だよ。毎日叱られて中年で。いい所ひとつもないし」

流石に、このまま運転していたら、事故を起こしそうだったので、幹線道路から外れた場所に停めた。

冷静になれ。なにかおかしい。
そうおもいながらも、彼女が

「ねぇ、嫌い?私の事」

「そんな、、、」

私の顔を手で押さえつけて、Kissしてきた。全身の力が抜けてしまい、されるがまま。

うそだろ。なんで?

流石にここまでされて、私の中のオスが、出てしまう。彼女の胸に、手を伸ばそうとしたら、スマホに、はばまれた。

彼女は、何も無かったように、話はじめ、私も車を、走らせた。
結局そのあとは、普通に打ち合わせを、こなし次の打ち合わせがあるからと、代理を小田急の相模大野駅でおろすことに。
駅近くに停めると、彼女は名刺の裏になにかmemoをしている。

「ねぇ、LINEIDと携帯番号書いたから。
今日、私の家にきて。LINE出来る?」
早口で話す彼女に、ウンウンとうなづくと、またキスをしてきて、

「気をつけね。連絡するんだぞ!大好きだよ」

もう、全身の力が消えた。
ニヤニヤしながら練馬にかえると、夕方になってた。LINEIDを入れると、彼女住所と、地図が送られてきた。
会社にもどると、また部長がよびつけて、ブツブツ言ってきた。

うるせえんだよ。思わず呟いた。私が。

「は?なんだ?」

この後は、私が関西弁を混ぜながら
罵倒しはじめ、部長の血の気が引いていく。Kissで私本来の部分が吹き出した。気づいた時には、課長に身体をかかえられて、
「こら!クソガキ!いてまうぞ!」
怒鳴り散らす自分と、平謝りをする部長。

「はなせや!もう、やめや!かえる!」

カバンを抱えて、会社を飛び出した。。
終わった。完全に。もうクビだろう。

ビルから出て、すぐの角を曲がりコンビニに入る。
缶ビールを一気に流し込んだ。

店の脇で煙草をくぐらせ、なんでこんなことに。
まあ、後悔はしてない。遅かれ早かれクビになるはすだから。

ただ呆然と、煙草、ビールを繰り返してると、スマホがなった。

「どこにいるの?」彼女だ。

会社をでた近くのコンビニと告げると、待っていてと電話が切れた。



10分位で、彼女が来た。

「お待たせ。さっ、うちにいくよ」

待っているあいだに、コンビニでウィスキーの瓶を半分飲んでた。

「つよいんだね。お酒。ほらいこ。」
彼女は、私の手をひいて、タクシーに乗り込んだ。

そのあとは、ただだまって、手を握り、
優しく摩ってくれた。

流石に、ボトル半分はやり過ぎた。
そのまま眠ると、いつの間にか彼女の家についた。

情けないことに、腕をささえられながら歩いていくと、タワーマンション。

「すげー。まじか、、」

エントランスに入り、エレベーターで
17階に。
部屋に入ると、ソファーに座らされた。
ふっと彼女の手を引き、抱きしめた。

「ごめんね。」

彼女は、ぎゅっと抱きしめてきて、

「ううん。私がいるから大丈夫だよ。
ずっと。私がいるから」














こんなに悲しい恋愛あるの?(仮)『』

2020-09-17 18:06:23 | 日記
なんにもない。
かれこれ1時間、東京から、名古屋で乗り換えた、高山本線、特急列車の車窓をながめてた。

車内アナウンスが、私の降りる駅をつげた。
そこは、とても特急列車が泊まるような駅ではなく、ホームから、100メートル離れたコンビニのあかり以外、少ない街灯。
家はあるものの、夜8時で、人気すら感じない。
特急列車が走り去ると、駅に向かい車がやってきた。
無人駅の改札をでると、(島屋通信メンテナンス)とかかれたカローラバンが留まった。

『遅くなりました。吉村正弘所長さんですよね。
私、玉城優たましろゆうです。』

目の前には、150センタくらいの可愛い女の子が、うちの作業着をきて、ニコニコしてる。

『えっ、たましろまさる、さんじゃ』
あわてて、先程まで見ていたiPadの電源をいれようとすると、

『あ、ここ通信エリア外なんで、見れませんよ。笑、荷物つみますね』

私のキャリーバックを、彼女がトランクにつむ間、呆然と立ち尽くした。

私は、2週間前まで、東京、八重洲にある、島屋通信メンテナンスの、本社営業5課で、主任だった。
歳は48才。ちなみに、課長は38才。

20年前、主任昇格と同時期に母親が脳梗塞で倒れた。父親も25年前に事故でなくなり、子供は私一人。病院と自宅で介護してきたが、一月前に亡くなった。 
うちの会社は、北海道から、沖縄まで、
島屋電気が販売している特殊な装置を、
メンテナンスする関連会社で、高速道路や一般国道が取引先。
介護を理由に転勤しなかったため、48で主任のまま。ついでに、独身。

『おい、吉村、ちょっといいか』

昔から、世話になっている、大山人事部長に、かたをたたかれた。

すごすご人事部長室にはいると、

『大変だったな。お母さん。
  あのな、これお前行けよ。なっ』

目の前には、島屋通信メンテナンス岐阜飛騨営業所準備室について

『お前、ここの所長にきまったからな。 ラストチャンスだ。でな、
なんにもなくて、、、部下はひとり、、、たましろまさる、、、』

何一つあたまにはいらないまま、急遽自宅マンションを片付けて、荷物はそのまま、とりあえずいまにいたる。

『所長、お店ここしかないですからね。ちなみに、ここから、一時間走りますから、買い物しましょ』

言われるまま、コンビニについてゆき、タバコカートンと、好きなエナジードリンクを20本くらい買った。

コンビニを出て、すぐの交差点をまがると、いきなりさらなる山道に。曲がる前に、飛騨インターナショナルスキー場の看板があった。ここから50分。

『あの、玉城さん、スキー』
『あ、もうスキー場は潰れてます。
そのスキー場の入り口が、飛騨横断道路のインターチェンジで、、、』

ひとしきり、私も調べてきてるので知っていることだが、丁寧に説明してくれるので、黙っていた。すでに、富山側からは開通していて、岐阜県の終点になる。

『よくわかったよ。でね、たましろまさるさんは、、、』

彼女は、ケラケラと笑った。なんでも、同期に、たましろまさる君がいると言う。ようは、人事部長が勘違いをしていただけ。

人事部長も、いい加減なもんだ。

暫くはしると、突然インターチェンジがあらわれた。まだ、無料開放区間なので、料金所の建物すらない。   
その、近くには、プレハブのゼネコンなどの事務所が並ぶ。
ならびにある、洋風のペンションに車は止まった。

『ここが、うちの事務所ですよ』

たしかに、入り口に、うちの社名が書いてある。

荷物を車からだし、中にはいると、食堂が、会社らしく事務机などがある。

『あれ、ペンションのかたは?』

先程、鍵を玉城さんが開けてたので聞いてみると、

『なにも、所長きいてないの?2階に、住み込みですよ。だから、私と所長で、まあ、合宿ですね。私は同棲になっても、かまわないけどなあ。ね、ひろくん。
おぼえてないか。』

は?ひろくん?ひろくんなんて、小さい頃言われたことない。。。

「わかんないか。20年以上まえに、、、、」

彼女が話している間に、思い出した。

私が新入社員時代、実家は父親が勤める会社の社宅に入っていて、向かいに幼稚園に通う女の子が引越してきた。

両親がお互いに勤めていたこともあり、世話好きの母親が良く女の子を預かっていて、私にも懐いてくれていた。
たしか、眞島優ちゃん。

全くわかるわけもないし、名字が、、

「所長が、転勤で実家でたあとね、
しばらくして両親離婚してね。
私は母親の名字に。」

まさか、あの優ちゃんが、

「でも、なんでまた、うちの会社に」

「それはさ、ひろくん、、あ、所長にあいたかったからさ。おばさんなくなるまで、私年賀状とか。メールしてね。たまにさ。だから、新東京工業大学いってさ、この、会社入れば逢えるかなって。
ね。」

そう話ささながら、珈琲をいれてくれた。
どういう意味か、自分はまだきづいてない。

すると、私のとなりにすわり、

「ね、昔はお風呂はいったじゃん。
今日から、また入ろ!」

私は、呑んだ珈琲を危うく、ふきだしかけた。
たしかに、小さい頃、お風呂に入った。

恥ずかしいからいやだったが、毎回彼女が入ってきた。
中で歌を、一緒に歌ったのを、思い出した。

ガタガタと、揺れだすと、ドン!としたから突き上げると、同時に電気がきれた。

「キャーキャー」

彼女が抱きついてきたと同時に電気が
切れた。
激しい揺れに、何か倒れる音。
時間にして、1分くらい、
全くなにもできない。

収まりはじめて、スマホの照明を照らすと、部屋の中は色々ひっくりかえり、
あしのふみばもない。

震える彼女に、重要なものを、もって、外にでようと。彼女を抱きかかえながら、
外にでると、周りの事務所などから人がでてきていた。
そのとき、誰かがさけんだ。

山が、、

明らかに、やみの中で土の匂いがしはじめてる。激しい地響きに、ただ彼女を抱きしめた。暫くして、ゆれもおさまり、車の中に。

時計は、23時。
とにかく、ここにいても危険なのは間違いない。

「ねぇ、大事なもの。もういちど自分のものを、1度部屋の中から、取ってこよ。避難するから。」

彼女の手を握り、2階に上がってバックに詰め込ませて、車に戻る。
廻りも、騒然とした中、とにかく高速の入口まで行き、富山方面に走り出した。
無料解放区間なので、誰もいない。
当然停電の中、トンネルに入る。
事故や火災も考えたが、あの場所よりはましなはず。

次のインターチェンジまで、8キロ近くはトンネル。非常電源で最低限の照明はついていた。

「怖い。死にたくないよ」

抱きつき、震えている。

「大丈夫なんでしょ?トンネルの方が安全なんじゃないの?」

正直不安だった。このトンネルは難工事で昔から落盤などがたえないことで、社内でも有名だった。