雨の記号(rain symbol)

「建築学概論（韓国映画）」を見終えて

2015-07-07 14:59:49

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★韓国　上映時間117分
監督：イ・ヨンジュ
出演：オム・テウン、ハン・ガイン、スジ、イ・ジェフン、チョ・ジョンソク

　二日間、右手首の痛みでパソコンのキーボードが打てなかった。ブログを書けないため、連続ドラマや映画など見て時間を潰したが、Ｋ－ＰＯＰガールズMiss Aのスジの出演した映画「建築学概論」に青春（初恋）の甘酸っぱさとほろにがさをくすぐられて共感を覚えた。
　
　この映画は韓国で４１０万人を動員し、ヒロインの学生時代を演じたスジは一気に脚光を浴び、「国民の初恋」と呼ばれるようになった。

　
　映画を撮った監督も音楽を担当した人もかつて大学で建築学を学んだとか…。
　その二人が手馴れた世界を題材としたからか、対象を理解し、観察すること…建築学と恋愛学がうまく対比され、ストーリーは進行するほどに映画としての質感を高め、感動とカタルシスを呼ぶ作品となった。

　家のリフォーム（依頼）を通じて再会した時、二人は共に１５年前の苦い記憶を引きずっていた。
　それは講座を終了しきれなかった、あるいは塗りつぶせなかった地図のように二人の未消化で複雑な恋愛感情だった。
　あの頃、二人は互いに心惹かれあっていた。しかし、それをきちんと理解しあえていたわけではなかった。
　ある日突然、尻切れトンボのような結末が待っていただけだった。

　スンミンはソヨンに心惹かれていたが、浮気性の先輩に憧れてソヨンが建築学の講座を受けに来たと知り、先輩から彼女を奪う行動も起こせず恋心を必死に抑制する自分に苛立ちを覚えていた。
　ソヨンはスンミンに親しみを覚え、ギブ＆テイクで積極的にスンミンと触れ合っていくが、スンミンは自分の気持ちをソヨンになかなか伝えることができない。
　するうち、泥酔し、先輩に車で部屋まで送ってもらって帰宅した彼女を目撃してしまう。二人はそのままソヨンの部屋に消えてしまった。
　衝撃の場面を目撃したスンミンは先輩のキスを嫌がるソヨンの姿は見逃したのであろうか？　見逃しはしなかったがソヨンを助ける勇気も奮い起こせなかったのだろうか？
　そのへんは重要だと思えるが、いずれにしろ先輩は強引にソヨンを抱えて部屋に押し入ってしまった。
　この場面に絶望した（自分の不甲斐なさに）スンミンはソヨンに建ててあげようと用意した家の模型をそこのゴミ捨て場に捨てる。
　そして家に引き揚げようとして彼はタクシーの乗車拒否に遭う。タクシーの運ちゃんは行く先を聞いて乗車拒否したが、この乗車拒否にスンミンは怒り心頭となり運ちゃんにしつこく絡みだす。行き先が高級住宅地でなかったからか、遠すぎたからか、近すぎたからか、金を払ってもらえそうにないからか、理解しづらい乗車拒否だが、絶望して落ち込んでるスンミンの感情を逆撫でする何かがこの乗車拒否にはあったようだ。

　過去のこのような流れと家のリフォーム過程がオーバーラップしながらストーリーは展開し、二人の思いはまっすぐぶつかり合わず、すれ違っていただけなのが明らかになる。
　しかし、過ぎた時間を呼び戻すことはできない。
　時間を呼び戻すことはできないが、その思いはくすぶりから目覚め、生き生きと蘇って真っ赤な燃焼を始める。
　新しい芽を出すためには新しく踏み出すためには燃やし尽くさねばならないものがある。
　ソヨンがＣＤプレーヤーでその当時の音楽に聴き入るラストシーンは印象的だ。

　なお、この映画を見ている最中、スジの演じたヒロイン（女子大生像）がなぜかフジテレビで放送された当時の人気ドラマシリーズ「白線流し」のヒロイン七倉園子の東京編とかぶるものを感じた。
　ここでの園子は先生になるのを目指して長野の松本から早稲田の教育学部に入学するが、しばらくは東京で楽しい部活など浮かれた気分の生活を送る。いろいろあってボーイフレンドの大河内渡と離れ離れになったというのもあっただろう。
　そんな浮かれた気分の女子大生はチェジュ島からソウルに出てきたソヨンにも通じているように思ったのだ。
　園子は恋人の渡がいたから早く自分を取り戻したが、ここでのソヨンはピアノには打ち込めず、テレビのアナウンサーという華やかな職につく夢を抱き続けて挫折し、惰性の結婚へと突き進む結果になる。
　もし、スンミンとの恋愛が成就していれば別の穏やかな人生が待っていたろうとの世界も垣間見せる。
　
　いろいろと考えさせてもらった映画だった。
　