パク・シニャンとムン・グニョンの「風の絵師」

　フィギュアスケートがシーズンオフとなったので、韓国ドラマをまた少しずつ見ていこうと考えたのはいいが、さてどうやって見ようかとなって迷った。
　韓国ドラマの人気は安定したようで、テレビ、レンタル、ネットと見る環境や条件はすっかりよくなってきている。
　しかし、ヒマを持て余しているわけじゃないから問題なのは自分の都合である。仕事があるし、それ以外でもやりたいことはそれなりにある。どれもこれもかたっぱし見ていくのでは時間がいくつあっても足りなくなる。
　韓国ドラマ「アイリス」は２１日（水曜）夜９時からＴＢＳで始まる。それは見るたび、ここで感想を記していこうと決めているが、週に一作では物足りない。ほかにもいいのがないか。せめて三つ四つは見ていくようにしたい。感想を記したい。
　そう思って見たいドラマはないかと探し始めた。しかし悲しいかな僕の気持ちに合わせて始まるドラマなどはどこにもない。放送途中のものばかりだ。すでに放送が終了して再放送を待たねばならないものもある。
　レンタルや有料放送はこの際はぶこう。
　フジテレビでチソンとキム・ミンジョンの「ニューハート」をやっている。しかし午後の二時からでは仕事中で見ることはできない。飛び飛びでしか見ていないが、キム・ミンジョンの目パチと蠱惑の唇は化粧っ気なしの世界ですごく生きていたと思った。次の機会に最初からだな。
　ソン・ユリの出ている快刀 洪吉童(ホン・ギルドン)をＢＳ朝日がやっているようだが、これもだいぶ話が進んでいるようだ。彼女のヒョンビンと共演した「雪の女王」は僕の好きなドラマだった。１３話を無性に見たいと思うことが今でもある。これも次の機会に最初から見るとしよう。
　善徳女王(ソンドクヨワン)はいつも土曜日に見ているが、本線は土曜日の夕方でなくＢＳフジ・木曜日の夜７時だったのか。
　「アイリス」に善徳女王(ソンドクヨワン)を入れて二つ。「イ・サン」も見たり見なかったりで来てしまっているが、日曜・２１時、これから続けて見ていくことにした。
　さて、あと一つと思って、ＧＹＡＯを訪ねてみると、パク・シニャンとムン・グニョンの「風の絵師」をやっている。毎週火曜の二話更新で、今やっているのは９話と１０話だ。「秋の童話」で登場して、さわやかな笑顔とかわいらしさで一躍売れっ子となって「国民の妹」と呼ばれるようになった女優である。
　フィギュアスケートのキムヨナも浅田真央と世界の頂点を競い始めて「国民の妹」と呼ばれるようになったが、先輩はこのムン・グニョンの方である。
　キムヨナは栄光の軌跡とともに「国民の妹」を駆けすぎるように卒業していったが、ムン・グニョンは「風の絵師」の好演でしばらく続いた頭打ちのイメージから脱し、大人の女への変貌を遂げたとの評判がもっぱらである。
　このドラマも最初からと一瞬考えたが、彼女の演技に興味を惹かれ、ついつい９話から見始めてしまった。正祖の肖像画を描く画人を決める御真画師の競合がこの回の話だった。キム・ホンドとシン・ユンボクのまっすぐな師弟愛が、ムン・グニョンの巧みな演技によって男女の微妙な空気が作り出されているのに感心した。いや、まいった。おかげで、たちまち話の虜となってしまった。
　御真画師の競合場面のくだりだが、よくある流れで進行しないところがさらに憎い。通常のパターンでいけば、王をイメージさせる肖像モデルが登場して作者の画法や技法、緻密さや人間的スケールを直接的に争うところだが、画題として仕掛けられていたのは、文章にして解析された人物を肖像画として仕上げる作業だった。ここで試されたのは画人にそなわるべき重層の観察眼（現実認識に加えた心の眼）だったのだ。
　それだけではない。話の更なる盛り上がりとして、キム・ホンドにハンディが用意された。画人への道を争ったかつてのライバル、イ・ミョンギに眼鏡を壊させることで、彼の正常な視力を奪ったのだ。裸眼で筆をとったホンドだが、緻密さの要求される顔に手を入れることができない。やむなくホンドは弟子であるシン・ユンボクの手にこれを託した。そうして、この危機を乗りこえることで師弟としての二人の絆はいよいよ強く結ばれたのである。二重三重に仕掛けられた演出・・・ほとほと感心させられる話のつくりであった。
　イ・ミュンギ役のイム・ホはチャングムの王様役でおなじみの俳優である。キム・ホンドへの異常な闘争心とライバル心で登場し、野心ばかりの強い画人を演じたが、さすがに格のある役者、最後はいいところを見せて去っていた。チョンヒャン役のムン・チェウォンがこのドラマ全体に花を添えている。
　四つ目は「風の絵師」に決めた。