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雨の記号(rain symbol)

風の絵師第17話から

 顔のない絵の手がかりをつかみかけたホンドとユンボクの二人は、その絵を持って紙工房を訪ねていく。そこはユンボクにとって、遠い記憶の中にある父との思い出の場所だった。
 ホンドらに顔のない絵を見せられた工房の主は、絵の顔の部分に厚みがあることを指摘する。
 ここに何か工夫がほどこされているのはわかった。しかしこれをどうしたものかと三人は思案に落ちる。単に紙の重ね合わせなら水で何とかなるが、墨で画かれた絵がそこに収まっているなら水を利用できない。墨が流れ出し、絵が消えてしまうからだ。
 ユンボクはふと父がここに連れてきてくれた時、絵を圧搾機で加工処理していたことを思い出す。ユンボクはいきなり絵を水に浸す。ホンドはそれを詰るが、絵がどうやって画かれているかを解いていたのだ。ユンボクはむかし父がやっていたことを説明した。油分の多い顔料を用いて描かれ、隠された絵。圧搾機を使えばはがすことができる。工房の主はそれを聞いて膠の煮汁液を使えばできると提案する。
 三人はそれを実行する。
 液にはがされ、浮かび出てきた絵にユンボクは驚く。最後の目が表れた時、ユンボクは正視できずに気を失う。
 町医者のもとに運びこまれ、ユンボクは意識を取り戻す。意識を取り戻すなり、外へ駆け出していく。ユンボクが向かった先は、幼い頃、両親と過ごしていた粗末な家だった。そこにユンボクはたたずみ、歩き回りながら、両親との思い出に浸った。
 ホンドは町医者とともに、あっけにとられながら、駆け出していくユンボクを見守った。
「おたくの愛人だろう」町医者はホンドに向けていう。「やぶ医者でも、あの子が女であるくらいすぐわかる。――しかし、あの子はどうして男のなりをしているのだ?」
「男のなり?」
 そう言われて、ホンドは疑問の念にかられだす。
「なぜ?」「なぜ?」
 ホンドの脳裏にいろんな場面が戻ってき始める。ここでようやく自分の大きな過ちに気付く。
 町医者は一目でユンボクを女だと見抜いた。身近にいながらこれに気付かなかった自分の節穴ぶりを彼は悔いた(しかし、ホンドは町医者に言われたからユンボクが女であるのに気付いたわけではない。とうに気付き始めていたが、ユンボクが親友の娘ユンに思い至らなかった自分に悔いたのだ)。
 ユンボクのたどってきた運命の不憫さに親のように泣き暮れるホンド。シン・ハンピョンに向けた彼の怒りの半分は、早く見つけ出せなかった自責の怒りでもあったかもしれない。これからのユアの人生はユアのものだ、と吐き捨てるように言ってホンドはそこの屋敷を出る。
 チョンヒャンはユンボクに女であることを告白され、そのショックで寝込んでしまう。ある種の絶望で水も喉を通らなくなる。チョンヒャンのユンボクへの恋は何なのであろう。絵は男が画くものだという古い考え方からきたものであったろうか。そしてユンボクを男と思った。しかもその絵の数々は女心の奥底や真実をとらえているように見える。彼女は自身の不幸な半生をユンボクに身近にいてもらって描き続けてほしかったのかもしれない。それならユンボクが男であろうとなかろうと関係ないはずだが、そこはそこで摩訶不思議(同性愛的?)な女心が働き続けていたという気もする。
 ユンボクを探し出し、お前がユンか、と訊ね、ユンボクを抱きしめるホンド。
「師匠が探していたのは私だったのですか?」と問い返すユンボク。
 二人は抱き合って親子のように涙を流しあう。
 ジョニョンはチョンヒャンの寝込んでいる理由の一因をつかむ。
 二人の心は二人だけが知る、と書かれた謎の絵をユンボクの部屋で見つけたからだ。ユンボクにかすかな疑いを持ち始めたところに、チョンヒャン付きの娘がジョニョンに助けを求めてくる。
 娘の言葉でチョンヒョンの病の原因がユンボクであることに気付く。
「一番近づけてはいけない人物を側に置いたと言うのか」
 ホンドたちもユンボクの父親が残したという「遺言の絵」から証拠にたどり着こうとしていた。
 そしてそこから導き出された言葉は「殺」と「ジョニョン」。ジョニョンとは私画署の経営者である大行首であるが、この二つの言葉は何を指しているのか?
 
 このドラマはほんとに情感たっぷりで毎回ほろりとさせられる。ホンドとユンボクは師弟として、愛情とも恋情ともつかぬ愛がますます深まりを見せているようで、事件の足取りとともにこっちの成り行きも目が離せなくなった。悲恋の予感がしてきたが、さてどうなっていくものやら・・・。
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