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ユン・シムドク（チェ・ミョンギル）
モンヒの育ての母である。モンヒの母、ハン・ソナとは無二の親友だった。
ハン・ソナは双子の娘を産んだ後、病死した。子供のいなかったシムドクは親友だったソナの娘を二人とも引き取って育てたかった。だが、貧しい家庭的事情が許さなかった。
夫、ビョンフの理解のもと、シムドクはソナの娘を一人だけ引き取り、モンヒと名づけてわが子のように育てた。
モンヒが大学に入った頃までは、少なくとも実の子供たち（モンギュ、モンヒョン）と変わらないように育ててきたと思われる。
しかし、夫のビョンフがリストラに遭い、チョン家の生活設計は狂ってきた。
一家の収入源は宝石会社に勤めるシムドクの給与だけとなった。大学を出ないと男子はまともな職にありつけない。女子はいいとこへ嫁に行けない。
シムドクは子供3人を育てて来ながら、そういう人生哲学に凝り固まったようである。
少し豊かな大学生活を送ったらしい夫のビョンフは少し異なる考え方を持つようだった。だが、男の甲斐性である仕事を失ってからは妻のシムドクに頭の上がらなくなっていた。
シムドクはもともと夫を尻に敷くタイプの女ではなかったと見える。ただ、一家の収入と家計をまとめて切り盛りするようになってから、彼女目標が一家の目標みたいになってきていた。
大学を出た末娘のモンヒョンが自分の夢や目標を語らず、母親の言うとおり見合いして結婚しようとしているのはそのせいだった。
一人息子のモンギュも大学院を出た後、そのへんの小さな会社に働きに出られないでいる。シムドクがいい大学を出してやった以上、それに見合った就職をしろと強要しているからだった。
モンギュはそんな母親に反抗し、わざと不良っぽい態度を取っている。
シムドクの苦労を身近に見てきたのは長女のモンヒだった。モンヒはシムドクの考えに同調しているだけではなさそうだ。しかし、お金のやりくりで苦労している母親の気持ちは理解できた。
母親が、そうしてくれ、と言ったわけではないが、大学をやめて働きに出たのはそのためだった。モンヒはいろいろやって、比較的実入りがあり、自分の好きなデザインの趣味も活かせるアクセサリーの露天商に行き着いたのだった。
モンヒは実の娘ではない。一家の苦労を支えて働く彼女は婚期も過ぎて行こうとしている。それを冷静な目で距離を置いて見つめているシムドクの姿勢には、モンギュやモンヒョンの将来に対する”熱いまなざし”とはどこか異なるものがあった。
友人の娘であるモンヒの人生設計には自分の考えを押し付けたくない。彼女の将来にはなるべく干渉しない。彼女自身で切り開いていってほしい。結婚も好きな相手を見つけてほしい。そんな保留の態度はモンヒが一家の苦労を受け持ってくれようとした時、甘えとなってすがってしまう結果となった。時々は亡き友人を思い浮かべ、申し訳ない気持ちにさいなまれたこともあっただろう。
しかし、そんなシムドクも近くにモンヒの姉がいると知ったとたん、冷静な観察の目を失い、気持ちを混乱させることになる…。
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