雨の記号(rain symbol)

狙われた白髪頭

 ついにきたというべきか、とうとう自転車を盗まれた。知り合いから安く買った自転車であるし、ひと月に二三度あればいい方の使い方をしていたから、損した気はあまりないのであるが、その人間が庭の奥深くはいってきた事実にはショックを覚えている。
 自転車も時々、鍵をつけっぱなしにしていた。自分で気がついて、はずしたりしていたのだが、とうとう被害に遭ってしまったわけである。
 自転車を使ったのは、花火大会を千葉まで見に行った日であるから、十日ほど前である。翌日、千葉の海岸を友人と見てまわり、昼飯を食べた後、家まで送ってもらったので、自転車はJR駅前に置きっぱなしになった。友人らが引き揚げた後、僕はその自転車を取りにいき、家まで乗って帰ってきたのだが、昨夜の酔いが残っていたせいか、鍵をつけっぱなしで倉庫の前に置いておいたのである。
 その後、庭には通勤で車を出したり入れたりしていたが、倉庫脇にある自転車のことはあまり気にかからなかった。
 ひょっとすると翌日すでに盗難に遭っていたかもしれないが、ずっと気付かないできて、気付いたのは今朝方である。ふと倉庫の方を見やると、あるはずの自転車がないではないか。
 あれ、鍵はつけておいたはずだがな、と思いながら、出勤しなければならないのでともかく出勤した。気が動転して職場の駐車場まで可燃ごみを出すのを忘れて通勤してしまった。家に帰ってきて自転車の鍵をさがすと予備のものしか出てこなかった。しまった、つけ忘れか、と落胆した。
 やはり、というべきか、調べはついているというべきか、日中この家には誰もいないということが相手には分かっていたようだ。町内会は怪しい人を見かけたら、相互に用心しあいましょう、と呼びかけているが、しょせん建前である。みんな自分の生活や事情が優先なのだ。
 時々、玄関の鍵を閉め忘れることがある。急いでいる時や、忘れ物で家に一度もどったりした時は要注意である。注意力が減退し、若い時に比べ、ハプニングへの対応がきわめて悪くなっているのである。三つのことを一度でさばくことが出来ない。せいぜい二つどまりである。
 自転車を盗られたのは単純な不注意で仕方がないとしよう。
 ただ、玄関の鍵を閉め忘れたらとんでもないことになる。相手が細長い庭を玄関まで歩いて近づいていることがはっきりしたからである。
 相手はこの白髪頭を見て、年寄りだとなめてかかっているのかもしれない。
 意識を前頭葉に集中して、防衛線を張らねばならぬ。
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