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雨の記号(rain symbol)

風の絵師第14話から

 物語もいよいよ佳境に入ってきた。
 ホンドとユンボクを呼び寄せたチョンジェ(正祖)は、二人に辛い目に合わせたことをわびる。
 チョンジェ、ホンド、ユンボクの三人はそれぞれ、十年前のある事件によって心に深い傷を負っていた。しかし、御真騒動によって三人は相手を思う純な気持ちで互いの絆を深めた。立場上、身動きの取れない正祖は、ホンドとユンボクに自分に代わって思悼世子の睿真を探すよう命を出す。思悼世子復権のため、先王が信頼する最高絵師に命じて描かせた絵のことだった。しかし、その絵を描いた絵師は何者かの手で殺され、真相は闇に葬られたままとなっていた。
 10年前にはそのような画事は無かったはずだとホンドは言う。
 あったのだ、とチョンジェ(正祖)は断言した。事の真相を質そうとの強い思いでチョンジェも自分なりに調べ上げてきていたのだ。思悼世子がなくなったのは14年前、世子の復権に向けての作画だったが、これに関わった絵師らは変死を遂げた。絵はそのまま行方知れずになった。チョンジェ(正祖)の命は、その絵は必ずどこかにある、二人で手をつくし、探し出してくれ、というものだった。
 二人は絵の行方を追い始める。ここに何らかの手がかりがあるかもしれないと書画保管室に入って調べだした。そこでユンボクは、十年前、世子の復権に向けての作画に関わった絵師の一人イ・ウォルタンがソ・ジンなる人物であるとホンドから聞いて筆を床に落としてしまう。
 忌まわしい記憶が脳裏をよぎったからだ。ソ・ジンはユンボクの実の父であった。父が母ともども何者かに殺された日のことは恐怖の戦慄となって彼女の脳裏に刻まれていた。
 ユンボクは父の謎めいた言葉を思い起こした。保管室の思い当たる場所からその絵を取り出し、父の指示を思いだしながら並べてみた。鶴の絵と水墨画だった。
 ユンボクのふいの行動をいぶかったホンドだが、そこに広げられた絵は、最高絵師の描く絵とは似つかぬもので睿真の手がかりにつながるものとはとても思えない。一目見て、稚拙な絵だ、と無視したのである。ユンボクの直感も思い当たる節も勘違いで終わったようであった。
 ホンドはユンボクを連れ、あの絵に関わって死んだスファン師匠の家を訪ねる。家には父の位牌に背を向けて生きる息子ユオンがいた。彼は今、右議政チョ・ヨンスンの息のかかった者の世話で文官として生計を立てている身である。
 ホンドは彼に師匠の絵を見せてほしいと願い出るが、彼の態度は横柄だった。それだけでなく、父の絵は全部燃やしてしまったという。親を親とも思わない息子のおろかしさに腹を立て、どなりつけ、ホンドはユンボクをうながしそこを立ち去ろうとする。
 そのやりとりを物陰でうかがっていた使用人が急いで追いかけてくる。
 二人の前に駆けつけた使用人は封筒をホンドに渡して言った。
「師匠は、もしも自分の身に何か起きたら、これをある人に渡すようにと言い残しました。そのある人とは、息子を訪ねてきて息子に腹を立てる人だと師匠は言ったのです」
 それだけ伝えると安堵の表情を浮かべ、使用人は急いで戻っていった。
 さっそく封筒を開いてみたが、そこには竹を描いた紙切れが一枚入っていただけだった。それが何を指し示しているのか、二人には見当がつかなかった。ただ、謎が広がっただけだった。
 
 ホンドに付き合って時間をとられたユンボクは、ホンドへの挨拶もそこそこに大行首ジュニョン主催の画事の宴に駆けつける。ユンボクが墨を磨っている時、宴にはチョンヒャンもやってきてカヤグムを弾いた(シン・ユンボクが実際に残した絵にまつわる場面のようである)。二人は絵と琴の芸術的世界で言葉を取り交わした。この日、ジュニョンの招いた客の中には、戸曹判書キム・ミョンミンがいた。シン・ユンボクの描く絵がどれほどのものかを鑑定させる目論見があったからだった。むろん、収集家である彼に絵を売り込む狙いもあった。
 ユンボクが招かれた人たちの酔狂をモデルに模写絵の筆を取っていた時、酒に酔った若い客が絵を見てやろうと言って立ちあがり、作成途上のその絵を乱暴な調子で取り上げる。難グセをつけだしたその客にジュニョンが丁重に咎めに入るが男の難グセはおさまらない。ユンボクが反論し、男が腕力にもの言わそうとした時、そこに割って入ったのはホンドだった。ホンドはチョンヒャンのカヤグムの音色にほだされて宴の席に迷い込んできていたのだ。
 ここでホンドはユンボクが画商ジュニョンに雇われていることを知り、腹を立てる。ホンドはジュニョンと口論し、ユンボクを強引に連れて行こうとするが、この様子を後ろで見ていた戸曹判書キム・ミョンミンが出てきて、「十年前に自分の肖像画を描いた時の師匠も騒がしかったが、弟子も同じように騒がしい」と叱責する。

 二人は外に出る。
「イルチェに家を追い出されたのか」
 とホンドは問う。
「自分が決めたことです」ユンボクは答える。「亡くした兄の家にいたくないのです」

 二人の睿真探索は続く。師匠の残した竹の絵からは何の糸口もつかめない。
 ホンドはふと戸曹判書キム・ミョンミンの言葉を思い出した。
 十年前に自分の肖像画を描いた時の師匠も騒がしかったが、弟子も同じように騒がしい・・・
 すると師匠は睿真と他人の肖像画を同時に描いていたことになる。こんなことは普通ありえない。そこには何かの理由が潜んでいる。
 ホンドはユンボクが掛け軸を届ける用向きに連れ添いキム大監の家を訪ねる。
 そこの庭先で無愛想な男子に出会う。
 キム大監は在宅だった。ホンドはこの間の話に出た肖像画を見せてほしいと願い出る。キム大監は承諾するが、それには条件があった。それはしきたりに沿いこっちの与えた画題の絵を描くというものだった。ホンドはその条件を受け入れることにした。何の手がかりも得られない今はわらにもすがる思いのホンドだった。
 竹の絵については相変わらず何のヒントも浮かばない。
 二人は画題の場へ出かけていった。
 キム大監は一人の男子を呼び寄せて言った。
「この子を笑わせる絵を描いてみろ」
 二人の前に現れたのは先日の無愛想な男子だった。

 このドラマは息の抜けない展開が続くが、竹の絵をめぐる二人のやりとりは気持ちが休まる。ユンボクはこの謎をホンドと二人楽しんでいる感じがある。ユンボクが虫眼鏡を持ってほとんどムダなやりとりをホンドとやる場面などは何だか微笑ましい。
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