ホンドはユンボクの兄が御真のために命を賭けていたことを話す。猛毒に侵されながら御真で使うに至ったあの色作りに励み、命まで落としたことも。それはどういうことだ、とチョンジェはさらに問う。そこでようやく、ホンドは五方色の朱砂が何者かの手で使えなくなってしまったことを話す。何者かの手で銀粉を混ぜられ、黒く変色させられてしまった、と。色の調合に精通していたほどの者たち、それは御真の完成を喜ばない勢力が仕掛けてきたものである、と。
しかし、あの絵は自分にとっても積年の夢だった、それを切り裂いた画工を自分は許すことができない、とチョンジェは突っぱねる。しかし、あの絵には一人の人間(ヨンボク)の魂がこめられたものだったのです、それに免じて許してやってください、とホンドは必死で訴えた。
ユンボクに思いを寄せるキーセンのチョンヒャンは、かわいがっていた鳥を自由にしてやる。ユンボクが御真を切り裂いたかどで斬首刑にかけられると知り、未来に希望を失ったからだ。ジュニョンの思いを受け入れ、救いの望みを彼に託そうとするが、さすがにそれは彼の力の及ぶところではなかった。
チョンヒャンに言われて関心を持ったジュニョンはユンボクの絵を検証してみる。商売になるかどうかの軽い気持ちからだったが、その絵に並々ならぬ才能を発見する。
しかし、当人の命は風前の灯だった。
処刑の前夜、ホンドはユンボクに面会する。ホンドは失意に暮れていた。すべての思いをチョンジェにぶつけたが、いい返事を得られなかった。御真を破棄したユンボクを救う手立てがないからだった。重臣らを納得させる大義名分がないからだった。
二人は牢獄の外と内から抱き合い、今生の別れを悲しみあった。抱き合い、愁嘆する二人の姿には師弟を超えた愛情が通じ合っていた。
翌日、登庁し、チョンジェ(正祖)のもとに向かう重臣らの前にユンボクの手で破かれたあの御真が修繕され、通路を塞いで敷かれている。重臣らは行く手を阻まれ、狼狽する。しかし、大妃の意で動く長老が、これはチョンジェ(正祖)が御真の正当性を試しているのだ、踏まなければ御真だと認めることになる、と言い出し、グイと踏みつけて向こう側へ渡る。重臣らは次々とそれを踏んで渡った。
御前会議の席でチョンジェ(正祖)はそのことをみなに問いただす。
どうして御真を踏んで渡ってきたのか、と。
踏まなければ御真と認めることになるからです、と長老は答える。
「ではあれは御真ではないというのか」
「御真ではありません」
「それでは、これから斬首刑にかけられようとしている画工の罪はどうなる。彼は御真を切り裂いた罪で刑に服そうとしている。刑を与えたのはお前たちだ」
重臣らの間で動揺と狼狽が広がる。チョンジェ(正祖)の鋭い切り返しに長老はグウの根も出ない。
「今から早くいって画工の罪をとけ。無実の罪を散らしたらお前の首もないと思え。放免を早く伝えよ。早く」
刑の執行には儀式のようなものがあった。おかげでユンボクの命は辛うじてつながった。こういった儀式のようなものは実際にあったことだろうか。斬首刑執行の時間へのつなぎとしてあったような気がして関心を覚えた。
ユンボクは放免されたが、図画署からは追放された。
史実によると、シン・ユンボクは民間で活躍した画家のようだ。つまり、彼女にとってはこれからがキーセンのチョンヒョンとセットになり、本分の活躍場面となっていくわけなのであろう。
さて、ドラマはいよいよ佳境に向かうストーリーが用意される。
チョンジェ(正祖)は二人をひそかに呼び寄せた。
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