僕は2歳半から中学2年生まで水泳をやらされてましてね。
当時、僕が通っていたスイミングクラブは二階に観覧ロビーがありまして、親御さんはそこから我が子の様子を見ているわけです。
いつも僕が上を見上げると、歯をむき出しにして全力で僕を睨みつけてくる母の顔がありました。
いつも、毎回、100パーセントです。
僕は当時まだ幼児ですよ。
今思うと、大嫌いな場所に無理やり連れてこられた上に、目が合う度に睨みつけられるなんて酷い話ですが、僕が当時の自分自身に話せるとしたら、ぜひ言いたい。
上を見上げちゃいけないよ坊や。
キミが何度見上げようと、お母さんの恐ろしい顔以外は見れないのだから。
そしてその恐ろしい顔が、生涯キミの中でもっとも記憶に残る母親の顔になってしまうのだから。
もう決して見上げちゃいけないよ、と。