弁護士・熊川清吉は、裁判前、被告人と面会していた。
剥げていて肥満体の高野だが、警察官だった彼が無闇に殺人を犯すとは信じられず、深い理由があると思っている。それで情状酌量をねらうつもりなのだ。
熊川の熱弁に押され、高野は淡々と語り始める。
クリスマスの日、高野は妹のアパートを訪れていた。
本来なら高野が継ぐはずだった「高野建設」だが、彼が警察学校に入学したので妹に婿をもらい婿養子に会社を任せるつもりでいた。
両親の思わくとは裏原宿に、妹は恋人をつくって駆け落ちしたので様子を見てほしい、と両親に頼まれたのだ。
再会を喜びのも束の間、女性と縁遠かった高野は妹に欲情してしまう。
妹の恋人のお蔭で何も起こらなかったが、妹に欲情した自分を恥じて、
「大好きなつか田こうへいの芝居を観て自殺しよう」
と決意。
それが高野とつか田こうへいの出会いだった