女形・女方(おやま・おんながた)とは歌舞伎において女性を演じる役者・職掌または其の演技様式。
歌舞伎における女形は、次のような種類の役を専門的に演じる役者を指す。
娘・姫・女房など、中年以前の女性の役を演じる。
幼女は子役の職掌であるから、女形は演じない。
老女・尼などは、江戸時代には花車方(かしゃがた)の役者が専門的に演じたものであり、現在でも老女形(ふけおやま)などとして、通常の女形とは区別される。
女の敵役(『伽羅先代萩』の八汐、『加賀見山再岩藤』の岩藤など)は、女形ではなく、敵役の役者の職掌である。現在では「敵役」という区分は消滅し、立役のうちに吸収されているが、江戸時代以来の伝統を重んじてこういった役は立役が演じる。美貌を売り物にする女形役者がこうした役をつとめると、ふてぶてしい極悪人であることを観客に納得させることが容易ではなく、舞台演出が困難になってしまうことが配慮されていることもそのひとつの理由である。
端役のなかにまれ見られる女の道化役(『仮名手本忠臣蔵』の下女りん、『妹背山婦女庭訓』の豆腐買など)は、女形ではなく、道外方(およびそれを吸収した現在の立役)の職掌である。
女形が演じるのは「三姫」(八重垣姫、雪姫、時姫)に代表される姫君や花魁や若い娘や人妻、奥女中などである。ただし『三人吉三』のお嬢吉三や『青砥稿花紅彩画』(白浪五人男)の弁天小僧のような女装の美少年を演じるのも女形である。
女形が芯を張る主役の歌舞伎・狂言は少なく、その場合は立女形が必ず演じる。先代萩の政岡、妹背山のお三輪、十種香の八重垣姫など。
歌舞伎の女形の衣裳は華やかなものであるほど重量があり、花魁(助六の揚巻)では20kg超、かつらや下駄をつけると40kgに及ぶという。演目や役により、身に着けてじっとしていなくてはならない場合、長時間に渡って踊り続ける場合、和楽器演奏をしなくてはならない場合もある。観客から見て美しいかたちに見えるのは役者が苦しい体勢であるという。重い衣装を着用して動く、発声すること自体も難しく、このため女形は大変な技術と体力を要求される。
5代目坂東玉三郎は体力的な限界を理由に2019年を最後に地方公演を引退し、近年は自らのつとめてきた大役を若手に継承している。
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老女・尼などは、江戸時代には花車方(かしゃがた)の役者が専門的に演じたものであり、現在でも老女形(ふけおやま)などとして、通常の女形とは区別される。
女の敵役(『伽羅先代萩』の八汐、『加賀見山再岩藤』の岩藤など)は、女形ではなく、敵役の役者の職掌である。現在では「敵役」という区分は消滅し、立役のうちに吸収されているが、江戸時代以来の伝統を重んじてこういった役は立役が演じる。美貌を売り物にする女形役者がこうした役をつとめると、ふてぶてしい極悪人であることを観客に納得させることが容易ではなく、舞台演出が困難になってしまうことが配慮されていることもそのひとつの理由である。
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女形が芯を張る主役の歌舞伎・狂言は少なく、その場合は立女形が必ず演じる。先代萩の政岡、妹背山のお三輪、十種香の八重垣姫など。
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